- 最新巻
きつねの橋 巻の二 うたう鬼
久保田香里(著)
,佐竹美保(画)
/偕成社
作品情報
ときは平安時代、京の都。主人公・平貞道は、仲間の季武とともに、源頼光に仕えている。ある日、季武は新入りの渡辺綱に得意の弓で負け、ふさぎこんでしまう。季武のため、貞道と友人の公友は、紅葉を見に山へ連れだすが、そこで彼らは鬼の歌声を耳にする。それ以来、季武は人の力とは思えぬような活躍をするようになるが、次第にやつれていく。鬼は、自分が宿れる古木を探しており、そのために季武に宿って、京へきたのだ。一方、貞道は季節外れに花びらを舞わせる桜の古木と、その木を愛でる桜の姫と出会うのだが・・・・・・。貞道は、ふとしたことから助けあうようになった白きつね・葉月とともに、季武に宿る鬼を取りのぞこうと奔走する。「鬼の腕」の伝説を下敷きに描かれる、のちに頼光四天王とよばれる若武者たちの物語。平安朝ファンタジー第2弾。
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この作品のレビュー
平均 4.5 (2件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
『きつねの橋』の続編が読めるなんて嬉しい。
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平貞道を中心に、平季武、公友、白きつね・葉月のオリジナルメンバーに渡辺綱が加わり、物語にますます深みが出てきて前回以上に面白かった。
弱みにつけこまれ鬼に取り憑かれてしまった季武。
季武を助けようと力を合わせて鬼に挑むみんなのチームワークが良かった。
実際の伝説『鬼の腕』をモチーフにしているため、ファンタジー要素にも説得力があり、読んでいてハラハラ。読み応えがある。
古木の桜の花びらや紅葉の葉が優雅に舞う様子も映像が浮かぶ位素敵で、児童向けにしておくのは勿体ない。ぜひ大人用の小説にしてほしい。
巻のニ、ということはこの後三、四と続くのかな。
更なる続編にも期待したい。投稿日:2022.06.17
渡辺綱が出てきて、これで頼光四天王の三人が揃った。坂田金時が出てくる三作目があるかな?
綱が郎等となり、貞道と季武はライバル心を煽られる。弓に自信のあった季武は綱に的当てで負けて以来、嫉妬にかられる。…そんな心につけ入られ、行き場を失くした鬼を宿してしまう。
綱は鬼を退治しようと、貞道は追い出そうと躍起になる。
そこに前作同様、妖狐葉月、盗賊袴垂、五の君(幼い頃の藤原道長)が絡む。
鬼が悪の存在ではなく、よりしろを失くした悲しい存在として描いたところが良い。歌舞伎などで有名な「鬼の腕」とはずいぶんと雰囲気が違う。
五の君が好きになった、胆の据わった姫の名前が最後に明かされ、やっぱりな、ふふふ、と嬉しかった。
字も大きいし、平仮名も多いし、出版社としては小学校中学年以上を対象としたいみたいだけど、内容や言葉のレベルを考えると、一般的には小学校高学年以上、中学生でも良いと思う。
残念だったのは、葉月があまり活躍しなかったこと。葉月の悲願である尊子姫との再会も果たせず、葉月が穴倉に暮らしながら姫のことを案じていると思うと、もう、切ない。会わせてあげてよ!
袴垂も捕まらないし、やっぱりこれは次の作品があるってことよね!
よろしく、久保田さん。頼むよ!偕成社。
鬼が最後に歌った歌は拾遺和歌集に詠み人知らずで載っている「あさみどり 野辺の霞はつつめども こぼれてにほふ 花桜かな」で、実はこれは今昔物語の藤原彰子と弟頼通のエピソードにも載っている。(そこに、この『うたう鬼』に関係する重要な言葉が関白頼通の言葉として出てくる。)拾遺和歌集も成立は一条天皇の頃で彰子も頼通も道長の子。ということはこの物語から見たら未来。
だけど、それは矛盾ではなく、母の口癖を頼通が真似たのだ、ということなんじゃないかな?
詠み人知らずということは、もしかして拾遺和歌集成立よりずっと前から人々が愛唱していた歌かもしれないよね。
こういうことを考えると、この物語がますます奥行きを持つなあ。
古典をきちんと勉強したわけじゃないから、違ってたらごめんだけど。続きを読む投稿日:2021.11.07
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