おもしろ吹奏楽事典
渡部謙一(著)
,佐伯茂樹(著)
,松本たか子(著)
,生乃久法(著)
/ヤマハミュージックメディア
作品情報
「吹奏楽ってなに?」「移調と実音の違いは?」「コンクール課題曲は毎年変わるの?」実践に役立つ基礎知識から課題曲、楽器の編成、マーチングバンド情報まで、今や巨大文化として確立した吹奏楽の世界と魅力に迫る。楽器を持ったばかりの入門者からコンクールを目指す上級者、指導者まで、吹奏楽ユーザー必携の1冊!※本書は2006年4月に小社より刊行された『知ってるようで知らない 吹奏楽おもしろ雑学事典』を改訂したものです。
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この作品のレビュー
平均 3.0 (1件のレビュー)
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吹奏楽、マーチングバンドの指導者や音楽評論家の先生たち4人による、吹奏楽の歴史や演奏される作品、楽器についてのあれこれと、マーチングバンドの練習方法など。どんな大会、コンクールがあるのか、有名な団体…はどこか、などの紹介もある。
最近音楽の勉強をしているのもあって、あとは大阪桐蔭の演奏をyoutubeで見たらすごいなあ、青春だよなあと思って、全く分からない吹奏楽について知ってみようと思って読んだ。「おおよその数で、日本全人口の一〇分の一は吹奏楽経験者」(p.51)という話もあるそう。えー、おれ中高の時周りに吹奏楽なんかやってる人いたっけ?そもそも吹奏楽部なんてあったの?(調べたら、あった。まあ、交友関係が狭かったからしょうがないか。)というくらい、縁がなかったことを悔やまずにはいられない。
やっぱり吹奏楽経験者の人が読むと、とても面白い本なんだろうなあと思う。特に楽器の話とか、課題曲の歴史とか、そうそうそれそれっていう感じで、楽しめるんじゃないだろうか。おれは楽器の話は全く分からず、読むのが大変だったけど。
まずは吹奏楽の歴史の部分、トロンボーンみたいな楽器はベートーヴェンの時代には「騒音扱い」されて、「中世の音楽家は、一番偉いのがハーブ、次に鍵盤楽器、そして弦楽器となっており、金管奏者は最下層」(p.20)って、楽器の奏者に序列なんかあるのか、と思った。そして日本の吹奏楽のルーツは明治の始め、イギリス陸軍のフェントンという人が指導したのが始まりらしい。そして「フェントンは、現在の国家《君が代》の前身である初代《君が代》まで作曲しているのです!今の《君が代》は実質的に三代目」(p.31)なんて、全く知らなかった。国歌のことなんだから、もっと日本人の常識としてこういうの知っておいてもいいんじゃないかと思うのだけど。いやみんな知ってるのかな?そして、その後、軍楽隊の退役軍人を中心に、独自に奏者を養成する楽団が出始めて、「代表的なのが、老舗大手デパートなどが宣伝のために設立した『少年音楽隊』で、最も魁となったのが、一九〇九(明治四二)年に設立された三越少年音楽隊」(p.33)だそうだ。へえ。デパートが吹奏楽?っていう感じだった。そして、日本の「吹奏楽コンクール熱」について、「実際のところ、人間教育的にいえば、特に若い世代の人たちの脳の発達のためには、つらくなるぐらいの『締めつけ』や『詰め込み』は絶対必要なものなのです。(略)自分探しの『基本』は鍛える以外ないのです。」(p.86)だそうだ。こういうの、リベラルなうちの学校だと雰囲気に合わないのだけど、適切なレベルでつらくなる「締め付け」、「詰め込み」ってもっと積極的に受け入れる風潮があっていいのになあと思う。今の40代くらいの親はそう思っている人も多いみたいだが、いざ我が子のこととなると甘い人も多いし、ネット世界に飲み込まれた生徒本人たちには理解できないらしい。思春期特有の反抗心とかは差し引いたとしても、論破してクレーム言ってやろうという想いが強い生徒はそれなりにいる。みんな吹奏楽やればいいのになあ。おれやんなかったけど。「日本人自身がこういった『鍛錬』や『修行』的なことを好む人種である」(同)という分析も面白いけれども。
楽器のことは素人にはよく分からなかったけど(「吹奏楽のチューニングの音はB♭。それに対して、オーケストラはそれよりも半音低いAの音でチューニングしますよね?)(p.171)とあるが、Aじゃないんだ、と思った。どれほど吹奏楽の生演奏を聞いたことがないかという。)、吹奏楽でも端っこにいる打楽器の人ってかっこいいよなあ。ラッパじゃなくて太鼓を選ぶ、という人も多いのだろうか。全然練習の方法とか違うように思うのだけれど。それで「ティンパニ」は「十字軍遠征当時のトルコの軍楽隊が(略)馬の両側にぶら下げて叩きながら攻めてきたのがきっかけ」(p.154)で、ティンパニは複数形、単数形はティンパノ、らしい。(ジーニアスによればtimpaniは、「集合的に」「単数・複数扱い」らしい。結局どっち扱い?)あと「スーザフォーン」という楽器の初期の写真がp.177にあって、「この上向きスーザフォーンは、奏者の間では『レインキャッチャー』というあだ名をつけられ不評だった」(p.178)そうで、確かに、これ雨降ってきたら吹いている人どうなるんだろう、とか思った。
最後にマーチングバンドはまさかおれがこれからやる訳でもないので、いくら練習方法を解説されてもどうしようもないけれど、「金管楽器奏者の唇はバテないの?」(p.202)というところが面白かった。金管楽器ってカッコイイけど、どうもあの口の形をするのはイヤだなあ、とかはずっと思っている気がする。「唇に圧力がかかりすぎるために血流が悪くなった状態」(同)とか、やっぱり痛いのはやだなあ。そして、とても納得したのは「行進中の打楽器アンサンブル」の話。確かに曲がなくてドラムだけ鳴っている部分というのがあるけれど、あれには合理性があって、「管楽器が演奏し続けるとバテてしまうので、この間に休みをとることができます。また、ドラムマーチの回数を増やしたり減らしたりすることで、観覧席の近辺などに演奏の見せ場が来るよう、タイミングを調整することもできます。」(p.207)なるほど。
吹奏楽をやっている人にはこういう本は絶対いいと思うんだけれどなあ。まずは楽器の音と名前を聞き分けられるようになろう、と思った。(21/12)続きを読む投稿日:2021.12.12
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