1Q84―BOOK2〈7月-9月〉前編―(新潮文庫)
村上春樹(著)
/新潮文庫
作品情報
心から一歩も外に出ないものごとなんて、この世界には存在しない──君たち二人の運命が、ただの成り行きによってここで邂逅したわけではない。君たちは入るべくしてこの世界に足を踏み入れたのだ。この1Q84年に。・・・・・・雷鳴とどろく夜、青豆はさきがけのリーダーから「秘密」を明かされる。天吾と父親の宿命的な再会、そして猫の町。二人が迷いこんだ世界の謎はまだ消えない。
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この作品のレビュー
平均 3.9 (231件のレビュー)
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〈7-8〉前編 3
1Q84年に不穏な空気が流れ始める。
ふかえりの失踪。牛河という天吾の監視者の登場。
「さきがけ」リーダーという男の幼児虐待的行為を知る老婦人。
「一九八四」との接点として天吾とふ…かえりの「空気さなぎ」をパンドラの箱を開ける思考的犯罪と表現される。この小説半ばまで空気さなぎを抽象的にしかわからなので、納得するのは難しいところ。確か次の巻に全容が出てきたと思うけれど。
天吾は認知症の父を施設に見舞う。そこで自分の出自を確認する。ここで「猫の町」という作中作が出てくるのだけれど、その町に紛れ込むといった趣向。
青豆は、老婦人に依頼されさきがけのリーダーと対面となる。彼との会話から、彼がリーダーとしてのカリスマ性、スピリチュアル性を持っている事が示唆される。と、この辺りが受け入れ難いんですよね。小説として読むのには良いのですが、作者が近過去というのであれば、「アンダーグラウンド」等でサリン事件の被害者達に寄り添った長きに渡る取材やその思いは、どうするんだろうって。
なかなか長編、まだ半分。続きを読む投稿日:2022.11.26
このレビューはネタバレを含みます
2009年に『BOOK1』と『2』が出た時、読者に『BOOK3』が出ることは知らされていたんだっけ?
レビューの続きを読む
当時、1年後に続きが出るみたいなことを聞いたような気もするんだけど、定かではない。
ということで…、『BOOK2』の前半であるこの『前編』は、『BOOK1』と『2』という物語のクライマックスとも言える展開になっている。
言ってみれば、「スターウォーズ/エピソード6」での皇帝と対決するために敵地に乗り込むルーク・スカイウォーカーという展開(?)だw
……のはずなのだけど、「さきがけ」のリーダーときたら、青豆に「殺して」、「殺して」、「楽にして」と言うばかりだし。
青豆は青豆で、こんなに苦しんでいるのなら殺す必要はないと考えるようになるという、ミョーに間の抜けた展開になる(爆)
そのくせ、読んでいて変に緊迫感があるのは、青豆とリーダーの間で交わされる会話が「1Q84」世界の根幹に関わることだからだろう。
と言っても、「さきがけ」のリーダーはどこぞのミステリー小説の変人探偵のように、「空気さなぎ」とはなんぞや?、「リトル・ピープル」とはどういう者たちか?、と掌を指すように正解を教えてくれるわけではない。
青豆と二人して、わかったような、わかんないようなことを言うばかりだw
というのも、これを書いているのは村上春樹なのだ。
『みみずくは黄昏に飛びたつ』で、“物語というのは、解釈できないから物語になるんであって、これはこういう意味があると思うって、作者がいちいちパッケージをほどいていたら、そんなもの面白くもなんともない。”とのたまわっちゃう人なわけだ(^^ゞ
つまり、読んでいて変な緊迫感を感じるというのは、自分がこの小説を読みながら、なんとなく考えていた「空気さなぎ」や「リトル・ピープル」を、リーダーと青豆の会話から、そして同時並行でなされる天吾とふかえりの会話から、さらにイメージを膨らまし、自分なりのそれに形づけていくのがエキサイティングだからだろう。
P299~300でリーダーが言う、
「世間のたいがいの人々は、実証可能な真実など求めていない。真実というのは大方の場合(中略)強い痛みを伴うものだ。(中略)人々が必要としているのは、(中略)美しく心地良いお話なんだ。だからこそ宗教が成立する」
「Aという説が、彼らなり彼女なりの存在を意味深く見せてくれるなら、それは彼らにとって真実だし。Bという説が、彼らなり彼女なりの存在を矮小化して見せるものであれば、それは偽物ということになる。(中略)もしBという説が真実だと主張するものがいたら、人々はおそらくその人物を憎み、黙殺し、ある場合には攻撃することだろう。」
「論理が通っているとか実証可能だとか、そんなことは彼らにとって何の意味も持たない。多くの人々は、自分たちが非力で矮小な存在であるというイメージを否定し、排除することでかろうじて正気を保っている」
……なんかは、宗教をめぐるあれこれについて正鵠を射ているのみならず、新型コロナについての言説や行政の方針に対する人々の反応、さらには、ネットの誹謗中傷等々、まさに現在に当てはまる。
とはいえ、ま、大衆がBの説は嫌だからAの説を信じて、それに応じた行動をしていくっていうのは、ある場合においては、それが適応というものであるかもしれないし。
適応というのは、進化でもあるわけだから、それはもうどうしようもないことなのかもしれない。
また、2000年代半ばくらいに書かれた(?)それが新型コロナにみまわれた時の状況、あるいは現在の世の中に当てはまるというのは、たんに世の中がどんなに変わろうと人の本質は変わらないということなのかもしれない。
つまり、人というのは誰しも、人の成すそれが愚かだとわかっていながら、気づいたらその愚かなことをしているだけの、“矮小な存在”ということなんだろう(^^ゞ
実は、誰もがそのことに気づいているからこそ、いつの世も、人は「自分が信じられるナニカ」を激しく求めるのを止められない。
それは、著者の小説を「自分が信じられるナニカ」として激しく求めることと、おそらくは同じで。
これって、もしかしたら、著者は無了見に自分の小説を信奉する人たちに向けて書いたんじゃない?
なぁ〜んて、書いたら怒られるのか?(^^ゞ
「空気さなぎ」とは?、あるいは、「リトル・ピープル」とは?といった1Q84世界の謎に関することは、おそらく村上春樹の頭の中にも確固たるものはないんじゃないのかな?
というのは、著者自身、それらの解釈をその場その場で(都合のいいように?)ビミョーにズラしているような気がするのだ。
それは、やはり『みみずくは黄昏に飛び立つ』で言っていたように、“作者にもよくわかってないからこそ、読者一人ひとりの中で意味が自由に膨らんでいくんだと僕はいつも思っている。”ということなんだろう。
つまり、この小説を読んでそれらが何を意味しているのかわからないからといって、そのことを解説しているサイトを見てしまうことで、それを自分の正解にして。
そんな風に正解を確定させてしまったことで、考えるのを止めてしまうことは一番つまらないことだと、村上春樹は言っているんだと思う。
それは、「猫の町」で天吾の父親が言う、“説明しなくてはそれがわからんというのは、つまり、どれだけ説明してもわからんということだ”に通じているように思う。
ただ。
実は、『BOOK6』の牛河のパートのラストがどうしても納得のいく答えが見つからなくて、それについては自分もネットで検索してみた(^^ゞ
結局、そのことに触れているサイトは見つからなかったんだけど。
何人かの解釈を読んでいたら、ふと、「あ、もしかして、そういうこと?」と思いついたこともあって。
ネタバレサイトを見てしまうのも、(そこから自分なりにいろいろ考えたり、想像したりするのであれば)あながちワルいことだとは言えないのかもしれないなーと思った(爆)
とはいうものの。
ネタバレサイトって、多分にコピペがあるのか、どれも内容が已己巳己でw
あれをいくつも読むのは、むしろ面倒くさかった(ーー;)
個人的には、天吾が千倉に行くくだりがすごくよかった。
千倉は、この小説の設定では「猫の町(=1Q84世界)」となっているわけだけど、それは、どこか懐かしさのある天吾に優しい町として描かれている。
1Q84世界で浮かんでくる風景が、いかにも現代という感じのカッチリして輪郭をしているのに対して、千倉での風景は夢の中のそれのように輪郭が朧気なのだ。
そこが個人的にいいんだとは思うんだけど、その反面、それは自分の中に漠然とある死への憧れだったりもするのかな?という気もして。
その、ちょっとゾッとするところが、またよかったり(^_^;)
それと、ストーリーとは直接関係ないのだけれど。
著者はこの小説で折に触れて、本の出版をめぐる今の状況についての皮肉をストーリーに織り込んでいるような気がするのは自分だけ?(^^ゞ続きを読む投稿日:2024.05.02
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