フットボール風土記
宇都宮徹壱(著)
/KANZEN
作品情報
2017年サッカー本大賞受賞作『サッカーおくのほそ道 Jリーグを目指すクラブ目指さないクラブ』から早3年・・・・・・
今やJリーグクラブは全56クラブにまで膨れ上がった。
Jクラブがない「土地」のほうが希少価値が高い時代になるとは、いわゆるオリジナル10の時代に誰が予想できただろうか。
一方で、Jクラブのある「土地」からあえてJを目指すクラブも、それこそ雨後の筍のように出現し続けている。
Jクラブが「ある土地」、もしくは「ない土地」から薫るフットボールの物語を、アンダーカテゴリーに魅入られた著者が「郷土のクラブ」を照射した。
【目次】
なぜ、フットボール「風土記」なのか
第1章 かくも厳しき全国リーグへの道
全国地域サッカーチャンピオンズリーグ 2016年・霜月
第2章 親会社の都合に翻弄されて
三菱水島FC 2017年・睦月
第3章 県1部からJリーグに「否」を叫ぶ
いわきFC 2017年・長月
第4章 女川町にJFLクラブがある理由
コバルトーレ女川 2018年・睦月
第5章 ワールドカップとJFLをつなぐもの
FC今治 2018年・文月~霜月
第6章 世界で最も過酷なトーナメント
全国社会人サッカー選手権大会 2018年・神無月
第7章 サッカーを変える、人を変える、奈良を変える
奈良クラブ 2018年・師走
第8章 アマチュア最高峰であり続けるために
FCマルヤス岡崎 2019年・卯月
第9章 最大の「Jリーグ空白県」でのダービーマッチ
ホンダロックSC&テゲバジャーロ宮崎 2019年・皐月
第10章 なぜ「71番目のクラブ」は注目されるのか?
鈴鹿アンリミテッドFC 2019年・水無月
第11章 北信越の「Fの悲劇」はなぜ回避されたのか?
福井ユナイテッドFC 2019年・文月
第12章 クラブ経営の「属人化」をめぐる物語
北海道十勝スカイアース 2019年・葉月
第13章 令和最初のJFL昇格を懸けた戦い
全国地域サッカーチャンピオンズリーグ 2019年・霜月
第14章 蝙蝠と薔薇の街で胎動する「令和的戦略」
福山シティフットボールクラブ 2020年・文月
第15章 多様性の街から「世界一のクラブ」を目指す理由
クリアソン新宿 2020年・文月~葉月
ピラミッドの中腹での15年
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商品情報
- シリーズ
- フットボール風土記
- 著者
- 宇都宮徹壱
- ジャンル
- スポーツ・アウトドア - スポーツ
- 出版社
- KANZEN
- 書籍発売日
- 2020.12.01
- Reader Store発売日
- 2020.11.19
- ファイルサイズ
- 22.8MB
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この作品のレビュー
平均 4.4 (10件のレビュー)
-
私はサラリーマンであるが、若い頃に、所属している会社のサッカー同好会に籍を置いていたことがある。私自身は上手い選手とは言えない。というか、私ばかりではなく、籍を置いているほとんどの者が、学生時代にサッ…カーをやっていて、会社に入っても好きなサッカーをやりたいという気持ちで同好会に入ってきている。本気でやっている企業のサッカー部とは異なる。練習はない。その地域のサッカーリーグに加入したり、天皇杯の予選に参加したり、要するに時々試合を楽しみ、更には試合の後の飲み会を楽しむという同好会であった。我々自身は、平日は仕事と飲み会で不摂生を続けているわけで、学生時代、それなりに体育会等で頑張ってやってきた連中でも、会社に入って1年もすれば、学生時代の身体の切れはなくなる。
日本のサッカーはJ1を頂点にしているが、実は、それは、最底辺の、我々が所属していたリーグまで繋がっている(私がやっていた頃は、今と少し構成が違うだろうが)。J1,J2,J3のプロリーグの下に、JFLという全国リーグがある。ここには、企業サッカー部がまだ存在したりしている。JFLの下は地域リーグ。九州とか四国とかの地方ごとに存在するリーグ、これがたいていの場合、2部構成になっている。JFLがJ4、地域リーグ1部がJ5、2部がJ6。その下に都道府県リーグがあり、これも2部構成のところが多い。県リーグの下には、県の地域、例えば県北とか県南とかのリーグがあり、その下に市のリーグがあり、これも大きな市だと2部とか3部構成になっている。例えば市リーグの2部にいるチームは、都道府県によって異なるが、J12とかぐらいになるのだ。我々が試合をしていたのは、そのレベルのリーグであった。
そのレベルのリーグであったが、一応、J12であり(そんな呼び方はしないが)、11年連続で所属リーグで優勝したりすれば(もちろん、スタジアム保有等の別の条件も出てくるが)、J1入りが理屈上は可能なのである。更にはJ1で優勝し、ACLで優勝すれば、世界クラブ選手権に出場し、バルサと試合をすることも可能なのである。そういった繋がっている感は、サッカー競技の良さであったと思う(「あったと思う」と書いたのは、さすがにプレーは随分以前にやめているから)。
本書は、JFLよりも更に下のリーグのチームに焦点を当てて書かれたものであるが、そういった、繋がっている感が、というか、実際に理屈上、Jリーグと繋がっていることが、地域のクラブチームのモチベーションになっているケースが多いことが分かる。
本書を読んで、もう1つ考えたのは、企業スポーツがどうなっていくのかな、ということである。
Jリーグが出来た時、多くのチームは前身の日本リーグから乗り移ったものである。フロンターレは富士通、横浜マリノスは日産、名古屋はトヨタ、ガンバはパナソニック、セレッソはヤンマー、アントラーズは住友金属、等々である。
Jリーグは企業チームは参加できない。企業チームは、最高でもJFL、すなわち、J4までしか参加できない。JFLのHPを調べてみると、JFLのうち、企業名を名乗っているのは、HONDA, ソニー仙台、マルヤス、ホンダロックくらいである(判断できないチーム名もあった)。その他は、基本的にクラブチームである。HONDAにせよ、ソニーにせよ、そのチームでJリーグを目指す訳ではないというだけであり、プロ契約の選手はいるだろうし、Jリーグ出身の選手や、今後、Jリーグでプレーすることを目指している選手も多いはずである。要するに、サッカーという競技においては、トップクラスのチームはすべてプロのクラブチームであり、昔ながらの企業チームは、既にないということである。
サッカー以外を見てみると、野球は12球団のプロ野球を頂点に、その下には、独立リーグがあり、また、サッカーとは異なり、社会人チーム(企業チーム)も、まだまだ多いが、最近はクラブチーム化の流れがある。バレーボールは、プロリーグがあるが、企業チームが参加している。バスケットボールはJリーグ方式のBリーグが発足。ラグビーはプロ契約選手も多いのだろうが、企業名でのリーグが行われている。
全般的には、競技によってその程度は異なるが、プロ化の流れが基本的にどの競技でもあるのではないかと思う。ただ、プロが存在し得るかどうかは、競技によって異なるだろう。ただ、サッカーや野球等のように、プロリーグが存在し得る競技では、企業がチームを持つ意味は、ほとんどなくなりつつあるのではないかと思う。
本書を読んで、上記のようなことを考えた。
そういったこととは関係なく、本書は単純に読み物として面白いので、サッカー好きの方にはお薦め。続きを読む投稿日:2021.10.24
主にJFLや地域リーグにフォーカスを当てている。新進気鋭のクラブから廃部寸前の企業クラブまで、様々なカラーを持つクラブがあり、興味が増した。FC今治での岡田武史の挑戦はいつ読んでも面白いし、コバルトー…レ女川の復興と共に歩んだストーリーも興味深かった。筆者の言う通りマネタイズが難しいジャンルではあるもののそのドラマはJ1よりも深みがあると思う。是非このような力作を残し続けてほしい。続きを読む
投稿日:2023.05.07
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