貨幣進化論―「成長なき時代」の通貨システム―(新潮選書)
岩村充(著)
/新潮選書
この作品のレビュー
平均 4.2 (25件のレビュー)
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貨幣は、価値の乗り物。
貨幣の進化
パンの実、美しい貝殻、貴金属、兌換紙幣、不換紙幣。
自然利子率=お金の利子ではなく、モノの利子=モノを貸し借りした時に一年後にどのくらい増えたら文句がないか。
…シニョレッジ=鑑定料=貨幣発行権=シニョールとは領主のこと。
旧約聖書では利子を禁じている。利子は神の時間が産んだモノ。ただし異教徒への貸付はとっても構わない。=ユダヤ教徒に金貸しが多いのは、異教徒が多いから。ただしリスク・プレミアムの部分はよい=インテレッセ=インタレストの語源。
初穂料は、種籾のお礼としての利子と同じ。
江戸時代はゼロ成長だったため、時々徳政令でリセットしないと、偏った社会が収まらない。
ゲゼルのスタンプ付き貨幣=現金にマイナス金利をつけることができる。
自然利子率は資本の限界効率で決まる。
レンテンマルクの奇跡=5日間でインフレが収まり、その後はワイマールの黄金の日々、とよばれる繁栄があった。
フランスではポワンカレの奇跡=為替相場を操作しておいてフラン安のときに新平価で金兌換に復帰した。ポワンカレ予測のポワンカレは従兄弟同士。
日本とイギリスは、対戦前の平価で金兌換に復帰。しかし高金利にせざるをえなかった。
アメリカはロアリングトゥエンティーズ=雄叫びの20年代=1920年だいのアメリカは世界の経済大国になった。
高速道路、映画、ラジオ、電話、水道、T型フォードなど。
暗黒の木曜日で、イギリスと日本に通貨売り圧力。
金兌換離脱。最後にフランスも離脱してブロック経済化。ブロックの拡大競争が第2次大戦に。
プレトンウッズ体制では、金と交換できるのは通貨当局だけ。
トリフィンジレンマ=基軸通貨であるためには信任が必要。しかし国際決済に使うためには十分な通貨が供給されなければならず、国際収支は赤字になるはず。プレトンウッズ体制は矛盾がある。
BISは第一次世界大戦後のドイツの賠償金の受払機関として発足、BIS規制とは、実質的にBISが会議室を用意した会議、といった程度のもの。
パンコールとSDRの違い=パンコールは決済のために貸与されたもの。SDRは与えられたもの。
ドイツのハイパーインフレは、インフレというより貨幣崩壊のようなもの。
日本の戦後インフレは、凍結されていた預貯金が一斉に不足する生活物質に向かったため。通貨の信任が失われたわけではないから、貨幣崩壊ではない。
ドッジ・ライン=IMFの政策と似ている。
朝鮮戦争の特需。
スターリン暴落。
高度成長。
民生財生産設備は破壊されたが、資本財生産設備は優先的に疎開していたため、温存されていた。
1ドル360円は最初はきつかったが、だんだん楽になってきた。最初は国際収支の天井に成長を抑えられた。
現代の貨幣は、政府への信頼が貨幣価値をつなぎとめている。
穴をほって埋める公共事業でも景気対策になるか。=ヘリコプターマネーが有効か、と本質は同じ。お金をばらまいたあと、それを人々がどう判断するか。貨幣錯覚がどう働くか。
貨幣のネットワーク効果。一般受容性。=統合のベクトル
離散のベクトル=マイレージ、ポイントカードなど。
ハイエクの貨幣発行自由化論。貨幣発行にも信用創造の競争をさせる。続きを読む投稿日:2016.08.30
貨幣や通貨が素人の人にもわかりやすく解説されている良書だと思いました。ただ一つ文句を言うとしたら、第1章の架空の島の物語は質が低い。私は個人的に、このくだりは不必要かつ本の水準を落としていると思いまし…た。そして第2章から金本位制への道が示され、第3章ではついに貨幣の価値が金から離れて、変動相場制の通貨システムへといたる歴史が説明されていました。貨幣の価値が金という実態から離れても問題なく流通した背景には、その貨幣を発行している政府に対する信頼があるからです。そして第4章では、我々の経済の前提が変化しつつあること、成長ではなく横ばいあるいは収縮が当たり前になる世界においては、これまでのような「インフレとプラス成長を前提にした貨幣制度」は修正すべきという主張がなされます。
素人的に納得感があったのは、インフレターゲットはインフレ時にこそ有効な策であって、デフレ時にはいわゆるシルビオ・ゲゼルが提唱した「減価する貨幣」つまりマイナス金利が付く貨幣制度を導入することでデフレを制御できるのだ、という主張でした。ゲゼル型貨幣は管理が極めて複雑になりますが、デジタル化が進んでいる社会においては実現可能であること、またさらにいえば減価させるだけでなく、いざとなれば増価させることもできるような「全天候型貨幣」を生み出すべきという主張は興味深く感じました。思考実験という意味でも頭の体操になりますし、正しい/正しくないという軸からではなく、社会の前提が変わりつつある時代の貨幣はどうあるべきか、という問いを考える意味で多くの気づきがありました。続きを読む投稿日:2023.05.06
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