ドラゴンラージャ〈1〉宿怨
イ・ヨンド(著)
,ホン・カズミ(著)
,金田榮路(画)
/岩崎書店
作品情報
主人公フチ・ネドバルは17歳。ロウソク職人の家に生まれた早熟でキレ者の少年だ。フチは、ふとしたことから首都への旅に随行することになる。旅の目的は、ブラックドラゴンに捕らえられた人々の身代金をえること。旅のとちゅう、エルフ、ドワーフ、女盗賊、スパイ、放浪する王子など、さまざまな人種、種族に出会う。一行をおそう危機、そして、待ちうける壮大な抗争劇。
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この作品のレビュー
平均 4.3 (27件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
哲学とハイファンタジーを併せた偉大なる傑作。小学生の頃に刊行され、その頃はまだ理解力に乏しく分からなかったが今読み直すと本当に面白い。
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まず、ヘルタント領の人柄が良い。基本的には中世ファンタジーの田舎の人ということから、予測できるような、素朴で血の気のある人間ばかりで、主人公フチも何回も村人の鉄拳制裁を食らっている。しかし、ヘルタント領はブラックドラゴンのアムルタットが近くに住むせいで、モンスターの襲撃がとても多い。襲撃後は酒の宴などが開かれ、村人の心優しさを感じるようにできている。
主人公のフチの頭がキレるため、難しい概念を誰にでも優しく解釈してくれるのも良い。世界が違えば神様が違い、挨拶が違い、考え方が違い、文化が細かいところで違うが、それをフチという田舎の世間知らずが地の文で説明してくれる為、世界の違いが認識されとても印象深い。エルフやフェアリー、ドラゴン、バンパイアの価値観の差異は、「価値観の違い」という名前のレンガで頭を叩かれるような気分だった。
情景描写も丁寧だ。ロウソクの作り方や乗馬の仕方などがイチから詳しく載っている。世界観を醸し出すのに一役買っている。ヒュダイン河を越えるときの〈十二人の橋〉の情景描写は最高。滝と言えそうな荒々しい水流を魔法の筏で越えながら、銀杏と紅葉の群舞の中を飛ぶなんて、およそ想像できるものの中で最も美しい。一枚だけ残っている紅葉を見ているのも、〈魔法の秋〉を印象づけている。100点です。
エルフが完全に人間と異なる価値観を持っており、人間であるフチも、人間と同じ価値観をイルリルに強要しないのが良い。構造主義的。人間という種を他の生物の考えを通して再確認できる。
ペレールの洞窟の岩を壊す方法賢すぎる。岩にバスタードソードを刺して、水を垂らしフロストハンドで凍らせ、岩を壊す。不足なら塩水を垂らしたところにライトニングボルトとチェーンライトニングで共振爆発を起こす。
ルーペルマン海岸とオセニウス海流とな!? 作者は地政学まで心得ている。ロウソクの作り方から国の取り方まで! 天才である。
〈靴職人ミック・ザ・ビッグ〉、こういう詩が名作を傑作に昇華せしめている。吟遊詩人と言えばファンタジーの代物だが、それをフチがやるんだからなあ。屋台ラーメンで『そばかす』を歌ったのを思い出した。
この世界独特の諺が美しい。『逃げていく貴重品を追わせるならばレンジャーに、逃げない貴重品を追わせるならば盗賊に』逃げていく貴重品とは足のついた人間。
アシャスを信仰するキルシオンがレッティのプリーストに立ちはだかる中、鷲が見下ろすシーンは今作の最高シーンの一部だ。バイサスという歴史を読者に説明したことでようやく理解できる。この物語はファンタジーだが歴史なのだ。故に魅力的である。
ドワーフはある程度独善的で、それ故に人間らしい(ドワーフに言ったら怒られそうだが、人間が理解しやすいという意味)。オークも知能が低いが、復讐と戦闘を好む意味では人間らしいだろう。しかし、ドラゴン、フェアリー、エルフは明らかに人間とは異なる思想価値観を持っている。作者は人間とは全く異なる存在として、これらの種族を用意し、これらの種族の価値観を示すことで対照的に人間という種族を描こうとしている。
ごく個人的には、ファンタジー特有の人間至上主義(ハーフエルフという言葉を聞いたことがあるか?)が気に食わず、例えば物語で登場人物にエルフが出た場合、その人物が人間ではなくエルフである十分な理由が必要である。そういう部分をこの作品は満たしていて、故に傑作である。
バイサス歴315年、明らかにこの時代にそぐわない300年前の英雄ハンドレイクが、昔話から現代史まで口を出す。フチの物語であり、大魔術師ハンドレイクを通じた歴史物語でもある。
古代ギリシアから、人間は万物の根源がなにかという哲学を考えていたが、この物語ではユピネルとヘルカネス、つまり調和と混沌で物事を説明しようとする。調和と混沌が同時に存在するために、ユピネルとヘルカネスは時間を作り出した。説得とはユピネルが人間に与えた調和を生み出すための手法であり、ヘルカネスの仕切った会議は踊るばかり。これがまた秀逸な神話なのである。
最後、ドラゴンとドラゴンの戦い。人間など割って入ることも不可能な凄まじいスケール感が恐ろしい。手に汗握る。
そして最終巻。過去の思い出を振り返りながら、フチは帰途につく。懐かしさと、物語が終わっていくうら寂しさを感じながら、〈魔法の秋〉は終わった。フチの物語は終わり。ここからはカールとサンソンがバイサスという国家が使い果たした300年前の栄光という遺産を、新たな作り直す時代である。
人間を描くために、人間以外の種族を出し、それと人間を比較するというアイデアがあまりにも白眉。また、村を救うための旅から始まって、街の大量殺人兵器、国家転覆の陰謀、大陸の危機と風呂敷が大きくなっていき、その風呂敷を、暴力に依らない方法で(英雄が苦闘の末ドラゴンを殺すというような単純な解決策なら物語展開はどれほど楽だったろう? 著者がその誘惑に負けなかったのが賞賛すべき)包んだ上で、経験から成長した主人公が最後の難問、人類の未来を哲学的に救う。
アルケーを秩序と混沌として作られた神話が完璧で魅力的。投稿日:2021.09.02
韓国の作者のファンタジー
翻訳者の腕のおかげか、原作のおかげか、
かなり面白い。
平凡なロウソク職人の少年が、
魔術師を助けて、パワー手袋をもらい、
遠くへ旅することになって…
ワクワク…がいっぱいw
中高校生くらいが読んだら
めっちゃ楽しめそう続きを読む投稿日:2023.11.03
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