日本一の「デパ地下」を作った男 三枝輝行 ナニワの逆転戦略
巽尚之(著)
/集英社インターナショナル
作品情報
「弱い」阪神百貨店を「強く」した、サラリーマン社長の大改革とは? 「弱小集団からどこにも負けない店になるには食品しかない」。どの百貨店も利益率の低い食品に見向きもしなかった頃、デパ地下に目を付けた経営者がいた。阪急、大丸、近鉄など錚々たる百貨店が揃う関西にあって、それらの後塵を拝していた阪神の三枝輝行である。一介のサラリーマンとして入社し、さまざまな改革に取り組みトップにのぼりつめ、ついには実業家としてその名を轟かせた三枝の痛快な会社人生と、それを支えた発想力、仕事哲学とは?
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商品情報
- 著者
- 巽尚之
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 集英社
- 掲載誌・レーベル
- 集英社インターナショナル
- 書籍発売日
- 2018.06.30
- Reader Store発売日
- 2018.09.21
- ファイルサイズ
- 1MB
- ページ数
- 256ページ
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この作品のレビュー
平均 3.0 (3件のレビュー)
-
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日本一の「デパ地下」を作った男
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三枝輝行 ナニワの逆転戦略
著者:巽尚之
発行:2018年6月30日
集英社
20年ぐらい前までだろうか、関西以外の人には阪神百貨店は一流デパートのイメージがあった。同じ梅田にある阪急や大丸よりも、阪神で買い物をする旅行者は多かった。やはり阪神タイガースの力だろうか。30年ほど前、名古屋の親戚姉妹2人が大阪に来たので梅田で待ち合わせをしたところ、待ち時間に服を買っていたという。行ったのは阪神百貨店。いいもの、おしゃれなものが欲しかったらしいが、衣料において当時は一番それに遠い阪神に行くとは。
関西の人間にとって、阪神百貨店は弱小デパート、ところが、他のどのデパートが頑張ってもかなわないことがある、それが「デパ地下」、すなわち食品売り場。阪神より一足先に阪急が建て替えられ、そして大丸が増床して、それぞれムキになってデパ地下を充実させたが、それでもやはり阪神に足が向く。やっぱりかなわない。
売上高に占める食料品の比率に関する2018年の調査では、高島屋約28%、大丸心斎橋約20%、そごう・西武約21%、近鉄百貨店約35%。全国平均で3割弱のなか、阪神は約45%だという。断トツ1位。
他に借りる本があり、それのすぐ近くにあったので借りて読んでみたのがこの本。一介のサラリーマンから阪神百貨店の社長(後に会長)にまで上り詰めた三枝輝行氏の半生記というか仕事記。40代で何人もの役員を飛ばして社長になっている。著者は産経新聞出身で大阪の大学でも教鞭を取っているノンフィクションライター。どうやってこのデパ地下王国を築いていったか、その歴史や戦略が書かれている本かと思いきや、それは第1章だけで、あとは三枝氏が阪神に入ってからの仕事ぶり、実績などが書かれていた。〝よいしょ本〟の傾向があるけれど、それでも読み始めると面白くて一気読みしてしまう。勉強になる部分は、ほぼ、ない(^o^)。
三枝氏は1995年6月に社長になったが、その頃、食品に注目する者はほとんどおらず、阪神の地下も通路が約3メートルで昔ながらの「パパママ・ストア」(夫婦でやっているような零細ストア)が中心だったと書いてある。
えーっ、そうだったかなあ?もう阪神の地下といえば絶対的な強さがあったような気がするが・・・
彼はそうした零細ストアを追い出し、通路幅を7メートルに拡げる大改革を行った。当時、衣料品の粗利は売上1万円に対して3000~4000円、食料品は700~1500円程度だったという。だから、この改革を業界関係者は冷ややかに見ていたし、マスコミの論調も批判一色だったらしい。
だが見事に成功、とくにバブルが弾けて衣料品の売上高がみるみるうちに落ちる中、「阪神を見習おう」と全国の関係者が視察に訪れるようになった。
学習院大学を卒業し、半ばコネで阪神百貨店に入った。東京オリンピックを前にした好景気の時期。入社半年後、彼はいきなり紳士用品売り場の主任になった。今ならパワハラと言われる強引さで年上を含む売り場店員を動かす一方、当時はほっといても売れたアーノルドパーマーやゴールデンベアのワンポイント衣料に飽き足らず、自分でブランドをつくって成功。しかし、やっかみからか怪文書が出回って理不尽な靴売り場への異動。激怒した彼は出社拒否し、最後は担当役員に来させて詫びさせ、元に戻させる。
3,4年目ごろ、当時もっとも強かったレナウンの傲慢さに切れてしまい、お宅の要求は聞き入れられないから商品を全部持って帰ってくれ、と言い放ち、一晩で代替ブランドに入れ替えた。そのブランドは売れて、十分にレナウン分をカバーできた。レナウンの担当者にすれば、若造の主任風情がなにをと舐めていたのかもしれない。しかし、結果に驚き。レナウン側は顛末を聞いた役員がやってきて謝罪し、取引を続けさせてくれと言ってきた。
軽めの衣類ならレナウン、一方でスーツなど重めの衣料の雄はオンワード樫山だったが、彼はこことも一戦を交えた。阪急にも商品を入れていたオンワード樫山は、一級品の売れ筋は阪急だけに入れ、阪急が要らないという二級品を阪神に納めた。三枝氏は頑張ってその二級品を売った。よく売れた。すると、オンワード樫山がその商品を引き上げたいと言い出した。どうやら、阪急からの要求で、阪神から引き上げてうちへ回せと言われたようだ。激怒した彼は、オンワード樫山の商品すべてを引き上げさせた。あせったオンワード側は、阪神社長を交えて三者会談。その場で三枝氏は元に扱っていた商品を元に戻すことと、歩率を下げてメーカー側の取り分を減らすことに成功させた。
それまでケースに入れて販売していたハンカチ売り場のハンカチを、客が手に取って選べるようにケースから出させた。売上はその日から数倍になり、全国の百貨店が「三枝方式」に。
社長時代、虚礼廃止を実践し、中元・歳暮の習慣を止めさせた。しかし、取引業者からすると疑心暗鬼で、そう言われて素直に贈らなくしていいものかどうか悩んだ。「お宅どうします?」と業者同士で対応を協議するケースもあったようだ。
いろいろな改革を行い、かなりの実績を上げた。その一つに、阪神タイガース優勝記念セールがあった。実例として、「セ・リーグ優勝記念」とデザインされた記念商品券の販売をあげる。2億5000万円の売上になったという。彼のアイデアだが、そうした記念物はきっと使わないでとっておくだろうと最初から読んでいた。阪神は印刷代だけ負担すれば売上がまるまる儲けになるだろうと。果たして、その思惑は的中した。しかし、これは自慢げに語ることだろうか?商売の基本にもとるのではないだろうか。こんなオチがあるのだから、やっぱり尊敬できる経営者とは言えない。
なお、彼は村上ファンドとの対峙も経験したが、その時は既に百貨店の会長職であり、阪神電鉄の専務だった。直接、彼の担当ではなく、対決した勝ったというような役柄ではなかった。
******
阪神名物のいか焼きは、1日に1万2千~3千枚も売り上げた。投稿日:2022.09.18
『#日本一の「デパ地下」を作った男』
ほぼ日書評 Day624
阪神といえば「ベンチ(経営)がアホ」な会社かと思いきや、あにはからんや、同時代を生きていた(歴史上の立志伝中の…ではない)人物として…は、物凄いエピソードばかりだ。
タイトルにあるように、日本で最初にデパ地下の食品売り場に本格フォーカス。その他にも、ブランドファッションの売り方等、ほとんどのアイデアが実績に直結しているのだが、これが何と、阪急百貨店というワンランク上の百貨店に対して持たざる経営を貫いた結果というから驚き。
一例として、販売のアイデアで「質流れ品バザール」という企画を打ち、シャネル等の高級ブランド(ただし新地のお姉さん達が質入れするものなので、開封すらされていないケースも多いという: そのビジネスモデルをご存知ない方は本書にて)を売るという、通常の百貨店なら二の足を踏みそうな企画も、阪神にはそうしたブランドが品物を卸してくれないから、何の遠慮も必要なかったという。
その他にも常識にとらわれない経営判断を矢継ぎ早に打ち出す。
銀行からの借入金を一気に全額返却。付き合いがなくなるどころか、借り手・貸し手の力関係が無くなった分、ビジネスの相談相手としての距離が縮まった。
取引先が阪神百貨店重役に送ってくる中元・歳暮の類を虚礼として一切辞めさせた。当然、それらの品々は阪神で購入されるから売上にはマイナスだ。
中元・歳暮については、さらに新聞広告も止めると言い出す。周囲は顔に色をなすが、結果、阪神百貨店としての中元・歳暮の売上が落ちることはなく、広告コストだけが浮くこととなった。
本の構成的に、多少、後付け感が無いでもないが、これだけの実績を上げた方というのは、本当に僅かであるはずで、主人公の価値を減ずるものではないと思う。
https://amzn.to/3OyCtlV続きを読む投稿日:2022.07.26
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