土 地球最後のナゾ~100億人を養う土壌を求めて~
藤井一至(著)
/光文社新書
作品情報
「土」を掘るのを仕事にしている。こう言うと、何を好き好んで土なんて掘っているのかと思われるかもしれない。家や道をつくるためでもなければ、徳川埋蔵金を捜すためでも・・・・・・ない。100億人を養ってくれる、肥沃な土を探すためだ。(「まえがき」を一部改変) 世界の土はたったの12種類。しかし「肥沃な土」はどこにある? そもそも土とは一体何なのか? 泥にまみれて地球を巡った研究者の、汗と涙がにじむ一綴りの宝の地図。
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商品情報
- 著者
- 藤井一至
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 環境・エネルギー
- 出版社
- 光文社
- 掲載誌・レーベル
- 光文社新書
- 書籍発売日
- 2018.08.30
- Reader Store発売日
- 2018.08.24
- ファイルサイズ
- 35.2MB
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この作品のレビュー
平均 4.4 (35件のレビュー)
-
「土」って何?
ホームセンターなんかで、いろんな土が売られているけど違いがわからない。
と言って、学術書を読んでまで知りたいわけでもない。
というわけで手にしたのがこの本。
12種類に分類されている…土すべてを実際に地球上を駆け巡り、掘り起こしてきた著者のバイタリティには敬服する。
その土の写真がカラーで見られるので印象に残る。
第3章の、人口密度と降水量のマップに世界の肥沃な畑の土マップを重ね合わせて見るとなんかいろいろと考えてしまう。
世界の歴史には土壌の性質が少なからずかかわっている。
土地(肥えた土壌)を奪い合う(戦争、買収)のではなく、土壌を改善する方法を競い合う世の中になって欲しいですね。
金儲け目的で(土壌として使うのではなく)土地を売買し、土壌がどんどん破壊されてしてしまうことがないようにと改めて思いました。続きを読む投稿日:2019.02.09
痛快な本だ。学問するのは、楽しいと思わせる。世界中をスコップを持って飛び回り、蚊に刺されながらも土を掘る。そこで、土の何かを発見する。まさに、学問は現場にあるのだ。
人口爆発、食糧危機、環境破壊、…砂漠化、土壌汚染。土は、地球最後の謎と言われている。
藤井一至は100億人を養う土壌を求めるのである。土だけで、これだけ楽しく語るのは素晴らしい。世界の土壌には大まかに分けて12種類ある。大まかに分けると黒い土が三つ。赤い土が一つ。黄色い土が一つ。白い土が二つ。茶色い土が一つで、残りは、凍った土、水浸しの土、そして何の特徴もないのっぺらぼうの土。まさに、多様な土が存在する。
とにかく、12種類の土を、スコップで掘って確かめるのだ。地球上で、最も肥沃な土地が、チェルノーゼムだと言われていた。それは、私もそう思い込んでいた。チェルノーゼムは、①黒海からウクライナのチェルノブイリ辺りで、ウクライナが世界の30%が集中している。ロシアの侵攻は、豊かな土を欲しがった。 ②北アメリカの五大湖近辺から南北に貫くプレーリー、③南アメリカのアルゼンチンにあるパンパである。チェルノーゼムは、黒い土なのだ。 日本の黒い土や泥炭土に比べて、ずしりと重い。粘土や砂の粒子を覆うように腐食がくっついている。土は中性である。プレリードッグ、ジリス、ミミズが土を掘り返している。それでもチェルノーゼムは毎年1センチメートルづつ減少している。
ところがである、農作物が一番とれ、そして人口密度が高いのは、黒ぼくの土だった。甲子園の高校球児の白いユニフォームを黒く染める土。松尾芭蕉も「足袋 ふみよごす 黒ぼこ土」と詠んだ。黒ぼこ土は、北海道から東北、関東、九州に至るまで全国に分布している。その分布は、火山や温泉の分布と一致する。土が黒いことは、腐食の多い肥沃な土の証しだ。実は、チェルノーゼムより腐食が多い。(知らなかった)結局、CO2が一番蓄えられているのが黒ぼく土だった。
チェルノーゼムの腐食と比べて、黒ぼく土は10倍の埋蔵量だった。素晴らしい。
日本は、国土の70%が森林で、黒ぼく土は30%ある。ある意味ではCO2を一番蓄えている国でもある。黒ぼく土の発達が異常に速い。平均すると1万年の間に1メートル、100年に1センチメートルの厚さができる。これは南米やアフリカのできるの10倍速なのだ。縄文時代の人々が暮らしていた1メートル下の地面から盛り上がってきた。年中湿潤で温暖な日本生まれ、日本育ちなのだ。食べ物が腐りやすい気候は、土壌の微生物が旺盛なのだ。レタスがたくさんとれる野辺山高原サラダ街道は、縄文時代からの土の作り上げた土だったのだ。黒ぼく土は落ち葉が一年もすれば跡形なくなる。チェルノーゼムでは、五年経過しても落ち葉の半分が残存する。水が足りなく、微生物が働かないのだ。
人口増加の時代に、人口減少する日本の土が、一番人間を養うことができるのだ。
結局、腐食の多い黒い土と雨が多く降る地域が人を養うことができ、また水田が連作障害が起こらない農法だった。
この土を巡る物語と人口100億人を養う土が日本の土だったという結論は、大きな希望を持たせる。この土を大切にしていないなぁと痛感して、地球規模で土を巡る研究が旺盛になされていることに、藤井一至の大きな活躍の意味があった。いい本を読んだ。そして、いい気づきがたくさんあった。もう一度土をしっかり見つめて、土の期待に応えよう。続きを読む投稿日:2024.03.23
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