山の霊異記 幻惑の尾根
安曇潤平(著者)
/角川文庫
作品情報
閉ざされた無人の山小屋で起きる怪異、使われていないリフトに乗っていたモノ、山道に落ちていた小さな赤い靴の不思議。登山者や山に関わる人々から訊き集めた、美しき自然とその影にある怪異を活写した恐怖譚。※本書は、二〇一三年五月に小社より刊行された単行本『山の霊異記 ヒュッテは夜嗤う』を改題し、文庫化したものが底本です。
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商品情報
- シリーズ
- 山の霊異記
- 著者
- 安曇潤平
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2016.07.23
- Reader Store発売日
- 2016.07.23
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- シリーズ情報
- 既刊5巻
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この作品のレビュー
平均 3.7 (6件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
面白いことは面白いし、山ならではの怪談として楽しめるのだが、前半の山行の描写がちと多過ぎて冗長になっていた気がしないでもない。純粋に「怖い話」の続く中に、「不思議だけれどいい話(泣かせる話)」が織り交ぜられて、いい塩梅になっている。
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前者は、理由も何も不明なままだが怖い「五号室」や「異臭」、「豹変の山」、ダメ押しがズルい「古の道」など。
後者なら、山に消えた者の遺された家族への思いを描いた「呼ぶ声」「息子」、亡き先達への畏敬が起こした不思議な邂逅「終焉の山」などか。
正直、実話怪談として読むならややフィクション色が強いようにも思えるが(例えば、幽霊がどれも実体感あり過ぎ!)、山という異界なら、あるいはそういうこともあるのかもしれないとも思えてくる……ってこともないか。著者自身「実話という骨子に、山の情景描写や登場人物の会話などを肉付けしており、書かれている内容の全てが実話ではない」と語っているわけだし。投稿日:2020.03.07
このレビューはネタバレを含みます
なかなか良いホラー短編集。
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市街地や田舎とは雰囲気の異なる、山・登山独特の異界感や孤独が合わさってじわじわ怖い話が多いが、優しい気持ちになるものもある。ホラーというより山の伝説という方があっているかも…。
話の最後にはある程度の種明かしのようなものが付いているので、理不尽すぎる(=意味が分からなさすぎる)話はない印象。はっきり言って作者の後書きが一番怖い。
風景の描写が上手く、話の所々に出てくる実在の山小屋や目印、天候・気候、登山の際の心理も相まって山を登っている感じが味わえる。
特に導入部では怪談の本体には影響しない細かな記述がなされていることが多いが、怪談に現実感や具体性を与えるフレーバーとしてや登山の爽やかさ・楽しさと気味の悪い怪異との対比として上手く機能しているように思う。
膝が痛いから登るのが億劫や「最初の1時間半が一番辛い」は実感できることで、作者の登山経験が生きているなと感じる。
序文からもこれが処女作なようで、作品をあらかじめ書き溜めていたようでもあるので、本当の評価は次回作を読んでからになるだろう。
作品の途中から山岳の名前や所在地をイニシャルで記すようになったのは、本作(あるいは雑誌 幽)のための書き下ろしを始めたためなのだろうか。
実名を出さなくなっても、実際にある山、県名をイニシャルに変えているだけなので、多少の知識があればすぐに具体的に思いつき、現実とリンクする描写の上手さは損なわれていない。続きを読む投稿日:2024.04.06
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