ウィザーズ・ブレインVIII 落日の都<下>
三枝零一(著)
,純珪一(イラスト)
/電撃文庫
作品情報
シティ・シンガポールと賢人会議の同盟締結に反対する者たちにより、入院先の病院から拉致された参謀の天樹真昼。一方、数万人に膨れあがった反対派のデモは、魔法士たちが滞在する迎賓館を包囲しつつあった。 事態収拾のため、サクラとフェイ大使は反対派の要、リン・リー議員の私邸へと向かうが・・・・・・。 賢人会議と人類の同盟を“望む者”と“望まない者”。それぞれの信念と思惑の行き着く先は、果たして“平和”か“戦争”か──。「落日の都」完結編。
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商品情報
- シリーズ
- ウィザーズ・ブレイン
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 電撃文庫
- 書籍発売日
- 2014.02.01
- Reader Store発売日
- 2014.08.27
- ファイルサイズ
- 8.8MB
- シリーズ情報
- 既刊21巻
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この作品のレビュー
平均 4.3 (4件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
3年待った。本当に長かった。でも、読み終わった今となってはまずこう伝えたい。面白かったぞありがとう!
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このシリーズについては尋常でない思い入れを自覚しているので冷静では居られないのだが、目まぐるしく動く展開や、今までの伏線を踏まえながら「ここでもう一度その方向に物語が振れるのか!」という意外性は素晴らしい。
思えばエピソードⅤにおいて通常人VS魔法士という対立基軸を掲げはしたものの、大きくぶつかりあったのは直後のⅥくらいで、勢力として敵対はしていても各主要人物は緩やかな協力体制を築いていて(真昼の退場は予想できたとしても)なんとなくこのままみんな協力して良い流れに向かっていくのかな?ということを漠然と思っていた。
ところがこのⅧ下で急転直下、まさか今までの流れから全面戦争になるとはまったく予想できなかった。
また裏から全てを操ってきた真昼が最後に泥臭い頑張りを見せてくれて、でも結果には繋がらなかったり、真昼の理想家としての側面を好意的に描きながら、あそこまでの策謀を巡らせてもなお現実というのは強固で、その理想には届かないのだ、ということをシティの為政者たちに代弁させてもいて、この世界設定のシビアさには舌を巻く。
ここまで重苦しく混迷してきた話にどのような決着を見せてくれるのか、期待と不安で先が本当に楽しみだ。
真昼が遺した言葉は何だったのか、それを見たサクラがなぜあそこまでの決意に至ったのか、兄姉を失った錬は自分の道を見つけ出せるのか、などなど主要人物の動向に注目しながら、完結まで残り2エピソード、続きを待ちたい。投稿日:2014.02.09
このレビューはネタバレを含みます
組織のNo.2を誘拐されたことにより、賢人会議とシティの市民は戦闘状態に突入してしまう。その裏には、同盟反対派の工作もあったが、市民の行動は、その反対派の計算を遙かに上回って大きくなっていく。
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誘拐さ…れた天樹真昼を追いかけるサクラ、シンガポール側のフェイ。だが、天樹真昼が世界に隠していた秘密が明かされてしまう。大気を覆う雲の除去方法。その方法とは、Iブレインを持たない人間を全員殺し、Iブレインをもつ魔法士全員の脳を同調することにより、雲を情報の側から解体するという恐ろしいものであった。情報制御理論を考えた天才が残した遺産。天樹真昼はこの研究を発展させ、犠牲のでない方法を見つけることをシンガポールに持ちかけていたのだった。全世界にあかされたその理論によって、世界は完全に賢人会議の敵となった。そして、天樹真昼は、名もなき市民によって殺されてしまう。
サクラは、全人類に対して、宣戦布告をし、去っていく。
・・・といのが、8巻でした。
とにかく、一言。どーすんの、この後!?
1巻から出てきた天樹真昼が死んでしまいましたよ。
彼が計画してきた全人類を救う企み。彼が死んだ後に、誰がこれを継ぐのだろう・・・?
この物語には、たくさんの出来る大人たちがいます。それも、この物語の大きな魅力なのです。
でもね、何かを起こすのはいつだって、これからを担う世代だと思うのです。
そして、それを静かに支えてくれる大人に憧れるのです。
だから、きっと決断するのは若い誰か。そうあってほしいと思います。
けれども、どうでしょう。自分の道をはっきりと定めている人たちはたくさんいますが、
それは、自分はこうあるべき、というだけのこと。
それではない・・・そう、世界はこうあるべき。
そういう精神を持っている人がいるのかどうか、そう言われると分からない。
彼らは、彼らの正義を信じて動いていますが、それはあくまで、何かが起こったら、
それに対する判断をするという段階でしかないのです。
賢人会議の代表のサクラが、何かをしようとして、それに乗っかってきたのです。
ところが、参謀のいない賢人会議がやろうとすることが、
乗っかれることではなくて、本気で止めなければいけないことになる可能性が、十分にある・・・。
そういう事態になっていると思うのです。
さて。この8巻を通じて描かれた政治家は、自分の正義を持たない政治家たちでした。
民主主義の責任をとるべきは、政治家ではなく、市民であるというのです。
しかし、その政治家は首相となり、
世界を救おうと献身した青年・天樹真昼は名もなき市民によって殺されてしまうのです。
その優秀さを知ることは出来ない。
なんというかな。彼の最後は、革命家の最期というものの原風景のように思います。
救おうとするものによって殺されること。名もなき足軽にも満たない人間に殺されること。
魔法士によって圧倒的に殺されるのではなく、何ともあっけなく死んでしまう。
人間が魔法士によって殺されるのではなく、人間が、人間によって殺された。
そこになんとなく、納得というか、殺されちゃったんだな、という実感を与えられた・・・そんな気がしました。続きを読む投稿日:2015.05.06
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