血潮の色に咲く花は(イラスト簡略版)
霧崎雀(著)
,refeia(イラスト)
/ガガガ文庫
作品情報
『宿主』救済,それは青年の贖罪だった。
いつの頃からか、この世に現れた人間に寄生する妖花。その花に寄生された人間――『宿主』は頭から花を咲かせるようになる。しかしこれは花の本体ではなく、仮花と呼ばれるもの。おそろしいことに『宿主』は、本体の花を咲かせることこそ己の第一の使命と思うようになり、花の咲くときが来れば、自らそれに適した場所へ向かう。つまり花に操られて行動しているのだ。
花の命を繋ぐこと。それが花と、花に操られた『宿主』にとっての至上命令。
だから『宿主』を殺すことを生業にしているルッカが、憎まれるのは必定。しかし、それはルッカにとって酷く悲しいことだった。救えども、救えども、ルッカは恨みだけを背負っていく。どれだけ拒絶されようとも、ルッカはかつて人間だった頃の彼女たちのためを思い『宿主』を狩り続けていた。
そんなある日、ルッカは街で花を咲かすことと、もう1つの目的をもった『宿主』の少女・リディと出会う――。
人に寄生し成長する妖花の存在する世界。そこで織りなされる『宿主』の少女と妖花を狩る青年の物語。
アニメ『まどか☆マギカ』などで知られる新房昭之監督が選んだ第8回小学館ライトノベル大賞審査員特別賞受賞作。
※この作品は廉価版です。廉価版にはイラストが入りません。
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商品情報
- シリーズ
- 血潮の色に咲く花は(イラスト簡略版)
- 出版社
- 小学館
- 掲載誌・レーベル
- ガガガ文庫
- 書籍発売日
- 2014.05.25
- Reader Store発売日
- 2014.08.29
- ファイルサイズ
- 0.3MB
- ページ数
- 328ページ
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 3.5 (2件のレビュー)
-
哀しく美しい物語
「頭に花が咲く」と書くとアレだが、能天気に笑う余地はない。
寄生花が存在する世界における社会の姿や、植物ならではの価値観は、けっこう本格的なSFの趣。
(そういえば昔、『花狩人』という作品があったよう…な。内容はまったく覚えていないけれど。)
「血潮」という言葉が入ってるからといって、グロさを狙ったスプラッタではないので、エグいのが苦手な方もご安心を。
寄生花による悲劇を経験し、今は腕利きの鋏(プルーナー)=花を狩る者となったルッカ。
「人間だった」ものへの敬意を払い、必要以上に蹂躙することはなく。
しかし、親しく接してきた宿主にも、平然と毒を盛り騙し討ちにし。
そして恨みと絶望の視線を向ける相手に、「君を救うためだ」と説く。
この明らかに歪んだ自身の考え方に追い込まれていくルッカに、一風変わった宿主の少女リディが転機をもたらす。
南方では恐怖の対象でしかない宿主を、種子をばらまくことのない北方では飼う人間もいたり。
「鋏」たちが宿主の超人的身体能力に対抗するために服用する「蜜虫」の原料は、宿主が金を得るために売った仮花だったり。
理屈は通っているがどこか矛盾をはらんだシステムが興味深い。
安直なラブストーリーにはならず、でも重いだけでもない、印象的な作品。
続きを読む投稿日:2015.01.03
-
一貫して花というモチーフを存分に使っているのは見事。飲むと葉脈が浮き出る身体強化の蜜虫、花に寄生された宿主などはイメージしやすく、世界観の設定は非常に面白い。文章も上手く、かなり丁寧に描かれた印象があ…る。ただ、主人公の動機が始まりから終わりまで通して他者依存が酷く、いまいち行動理念に説得力を感じなかった。寄生する花という設定は、リチャード・マチスンの往年の吸血鬼もの『地球最後の男』を彷彿とさせるが、人間と宿主の違いがあまり浮き彫りにならず、半端に優遇措置を取られているせいか、かなり弱い。単純な二項対立に収まらない広がりがあるのは評価できるが、そのせいでカタルシスが若干損なわれた部分もある。恐らくは宿主が人類にとって危険であるという認識が伝わり難かったのが原因だろう。そのせいで宿主を狩る側の主人公の葛藤に共感できず、単なる人殺しのようにしか思えなかった。罪を背負い、さらにその先も背負っていくというのはやはり重過ぎるように感じる。続きを読む
投稿日:2019.05.27
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