京都食堂探究
加藤政洋(著者)
,〈味覚地図〉研究会(著者)
/ちくま文庫
この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
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ネット上で偶々見掛けた地方紙<京都新聞>のサイトで取上げられていた本だ。「面白そう」と思って入手してみたが、期待以上に面白かった。紐解き始めてみれば、頁を繰る手が停められなくなり、素早く読了に至った。…
本書は京都に纏わる話題を扱っている。と言って、相当に古い文物や史上の出来事等に関して論じているのでもない。また、具体的な場所を訪ねるガイド的な内容を主体としているのでもない。題名にも在るが、「とりあえず“食堂”と総称出来そうな街中の店」に関連する話題だ。
何処の街にも、地元で親しまれて長い経過を有する飲食店が在る。地元の人達が気軽に立寄っていて、同時に来訪者も利用し得る場所だ。そうした場所に関しては「地域毎の個性」というようなモノ、「他所と少し違う?」が見受けられる場合も在る。
飲食店の「他所と少し違う?」に関しては、大雑把に「東日本の流儀」に対して「西日本の流儀」というような差異が目立つ場合が在るかもしれない。そうなれば「東京では…」、「大阪では…」ということになる。そういう調子で考えた場合、「京都では…」というのは東京とも、大阪とも違う場合が在るというのだ。
そんな東京とも、大阪とも違う京都の飲食店で供されるメニューに関して、また食べ方に関して、種々の資料も駆使しながら語っているのが本書である。
自身の京都訪問の経験の中、少なくとも京都の「たぬきうどん」というのが、他地域で言うような感じとは全然違うということは承知している。そういうような例が色々と見受けられて、そこには様々な経過が在ったということなのだ。
更に本書によれば、例えばスタンダードな形としてうどんを使うメニューに関して、「台換え」とでもいうようなこと、蕎麦に換える、「黄色いソバ」が由来らしい「キィーソバ」と呼び習わされる中華麺に換えるというような食べ方も少しポピュラーなのだそうだ。
こういう実に興味深い話しに夢中になる。が、外食業全般が一定程度隆盛と言い得る昨今、本書で取上げているような「とりあえず“食堂”と総称出来そうな街中の店」に関しては、新規に登場するということも殆ど無く、長く営んで来た方達が高齢化してしまい、後継者も無いので閉店してしまっている例が一寸目立つのだそうだ。そういう意味で、本書は「昭和、平成、更に令和に受継がれた、街で見受けられた日常」を記録して伝えるというような雰囲気も帯びているかもしれない。
本書に綴られているような、「街の人達の日常」ということに注目するというのは興味深い。来訪者の目線としても「訪ねた先に在る普通の人達の普通の様子に紛れ込む」という程度が面白いのだとも思う。本書は手軽に読了してしまう程度の厚さの文庫本だが、なかなかに濃い内容で面白い。
こんな「街中の様子」に纏わる豊富な話題に触れると、京都を訪ねて街中を徘徊するようなことをしてみたいという気分が高まってしまう。続きを読む投稿日:2024.03.15
何回聞いても忘れる「キツネ」と「タヌキ」問題。これに加えて、「しっぽく」と「おかめ」問題、さらには麺と丼で違う「しっぽく」(→椎茸丸のまま)、「かやくとじ」(=しっぽくの卵とじ→椎茸薄切り)と「木の葉…」(→椎茸薄切りの丼物)。更に「のっぺい」問題。「台抜き」(台となる麺やご飯がない、または天ぷらの具がない状態)と「台替え」(蕎麦やうどんに替える)と来る。新潟では「のっぺ」というが、これも北前船で関西から伝わったのかな?しかし、面白い!
(抜粋)
「キツネ」は大体どこでも同じだが、「タヌキ」大阪と京都でも異なる。大阪で「タヌキ」のいえば「キツネそば」のこと。ところが京都では「キツネそば」は「キツネそば」で、「タヌキ」は「キツネ」のあんかけのこと。…東京では、ご存知のとおり、揚げ玉(天カス)が入ってきるのが「タヌキ」。…文字どおり、所変われば品変わる、である。大阪では「ハイカラ」といった。…京都のタヌキとは「「キツネ」のあんかけ」なのであった。続きを読む投稿日:2024.04.21
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