労働法はフリーランスを守れるか ――これからの雇用社会を考える
橋本陽子(著者)
/ちくま新書
作品情報
アプリで仕事を請け負い、ウーバーやアマゾンの配達員として働くギグワーカーたち。時間にとらわれず、働きたいときに働くのは、自由に見える。しかし労働法によって保護されない個人事業主には、労災保険が適用されないばかりか、最低賃金や長時間労働の規制も、失業時の補償もない。その勤務実態はときに苛酷で、危険も伴う。労働法は誰のための法なのか。欧米各国の動向も視野に、フリーランスの「労働者性」を問いなおし、多様な働き方を包摂するこれからの雇用社会を考える。
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橋本陽子著『労働法はフリーランスを守れるか : これからの雇用社会を考える
(ちくま新書 ; 1782)』(筑摩書房)
2024.3発行
2024.4.2読了
(要約)
最近、フリーランスが注目…されているが、フリーランスの中には、本来、労働法が適用されるのに、その規制を免れるために偽装フリーランスとして働く者が存在している。2023年5月に「フリーランス新法」が交付され、フリーランスにも一定の保護が講じられるようになったが、労働法の規制と比べると不十分である。また、いったんフリーランスに対する特別法ができれば、その対象となったフリーランスの労働者性は否定される傾向になりがちである(p245)。彼ら偽装フリーランスの「最低労働基準」を確保するため、偽装フリーランスの労働者性を認めて、労働法を適用するべきではないか。
具体的に労働者性の再検討にあたっては、1985年の労基研報告が重要である。労基研報告では、労働者性の判断要素を8つに整理して、これらの判断要素を総合的に考慮して労働者性を判断している。
筆者は、「事業者とはいえない者が労働者である」という二者択一的な考え方に立ったうえで、労働者性の個々の判断要素を事業者か否かという観点から評価すべきだと主張している(p234)。そして、指揮命令拘束性を事業者性を否定する要素に分類整理した上で、指揮命令拘束性の中でも「事実上の拘束」を特に考慮して労働者性を判断するべきだと提唱している(p237)。
「事実上の拘束」とは、役務の内容および遂行方法に関して、契約上の定めから生じる多様な義務(拘束)のことであり(p77)、例えば、トラック持ち込み運転手の労働者性が争われた事案では、運送係による配送先や納品時刻の指示は「事実上の拘束」と整理され、労働者性を裏付ける指揮命令拘束性を示す事情とは認められなかった。
筆者は、従来、労働者性を裏付ける判断要素として認定されてこなかった「事実上の拘束」を事業者性を否定する要素に位置付けて、労働者性を拡大する方向性を提唱している。
なお、労働者性をめぐる問題については、労働者と自営業者の中間概念として「第三カテゴリー」を設けるという立法的手当も考えられる。実際、イタリア、スペイン、ドイツにおいては「第三カテゴリー」が実定法上定められている(p175)。しかし、例えば、ドイツでは、「労働者類似の者」という中間概念が認められているが、労働者に比べると法的保護に弱く、労働者と「労働者類似の者」を区別する必要から労働者概念が狭く解されることになってしまっている(p179)。
他方、EU労働法においては、2021年12月にEUプラットフォーム労働指令案が公表され、プラットフォーム就労者につき、労働者性を広く認める傾向が示されている。「第三カテゴリー」を有する労働法制を持つ国でも、プラットフォーム就労者を「第三カテゴリー」ではなく、労働者であると認めるようになってきている。
このようなEU労働法の動向を見ても、自営業者のための特別規制を設けるよりは、労働者性を広く認める方向性の立法を考えていくことが必要ではないか。
https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000001-I32111130767898続きを読む投稿日:2024.04.07
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