魔法を信じるかい ミスターメロディ・杉真理の全軌跡

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  「最後のメリー・クリスマス」という杉真理さんの曲がある。偶然ラジオから流れてきて、こたつで勉強していた私は、勉強そっちのけでその曲をきいた。「WinterLounge」というコンピレーション・アルバム…に入っていると知って、図書館でCDを借り、散々聞いた。録音の音源を失くして、復刻したCDを買ったのに、何を間違ったのか、それを売ってしまった。あれほど自分のミスを悔やんだことはない。
  
  ともかく「最後の～」を聞いて少ししてから、中学の先生とCDを貸し合ったことがあった。私の方は渡辺美里さんの「ラヴィン・ユー」を貸して、先生からは「ナイアガラ・トライアングルvol.２」を貸して頂いた。８０年～９０年初頭の曲が好きな私VS大瀧詠一さんがお好きな先生という組み合わせだった。
  
  一曲目に杉さんの「LoveHer」が入っていて、この声！と、職員室にすっ飛んで行った私に、先生が杉さんのお話をしてくれた。３年だったのですぐ卒業だったが、それまでに「ロング・バケーション」やら「EACH TIME」なんか貸してくださって。高校に入った私は、友人の聞いている流行りの曲には目もくれず「SABRINA」や「レディーズ＆ジェントルマン」「World　of　love」「BOX」なんかを、友だちに頼んでレンタルまでしてもらい、探しまくって聞いていた。恋するQuestやいとしのテラが、ほっといても口をつく。そういう青春時代だった。
  
  杉さんが、この本の出版とともに、他のアーティストに提供なさった曲を集めた「Mr.Melody」を出されて、それは買ったけれども、この本を読んでから聞きたくて、未開封のままだ。私はひたすらアルバムを集めて聞いて、幾度かライブに行き、聴くたび気持ちは、名を知らずに耳にして、曲の端切れを歌っていた６年生や、ラジオにかじりついたセーラー服の頃のまま。
  
  ディープなファンの方ならご存知のことも、知らずにいた。歌が、理屈を超えて好きでいさせてくれたのだ。それはそれで素敵なことだけど、杉さんご本人のお声でおしゃべりを聴くような、この自叙伝は、大好きなあのアルバム、このアルバムは、こういう時に、こういう気持ちで作られたのか、とわかって、夢中で読んだ。
  
  荒れた気持ちになりそうな時、自分を好きでいたい時。友達の支えになりたい時、もう少し頑張りたい時も。いつも杉さんの歌に帰ってゆく。
  
  派手な美女にはなれなくたっていい。内気でやさしく、不器用な、彼の曲の中のヒロインたちは、いつも微笑んでは、「大丈夫よ」と言ってくれた。おとなになった今も。こんな愛し方がしたくて、こんなふうに想われたくて。冴えない自分の髪を梳かしては、笑顔でいようとリップクリームを塗る。
  
  世の中はいいことばかりじゃないけれど、良い方に持っていこうと想わなければ、幸せにはならない。
  
  杉さんの交友関係の広さや、慕われるお人柄は有名だけれど、こんなにも、深く温かなつながりをお持ちなのね、と、読み終わったこちらが、幸せを分けて頂いた感じで、一緒に幸せになっている。不思議な本だった。日本のポップス史の、素晴らしい記録だから、ぜひ昭和から平成のヒット曲に興味のある方は、手にとって、曲を聴きながら読んでみて頂きたい。
  
  それと、もう一つだけ思い出話。
  
  出待ちで１度、お声をかけてくださった時、ライブハウスの熱気で、冬だというのにのホカホカに温まりすぎ、コートを着ていなかった私に
  
  「大丈夫？寒くない？」
  
  ご一緒におられた方から
  
  「誰？」
  
  と尋ねられて
  
  「うん。友達だよ」
  
  とおっしゃった。ありきたりなお礼しか言えなかった、ただのファンの女の子のことなのに。当然、知り合いでもなんでもない。初めての出待ちだった。それを、なんでもなく笑顔で、友達だと。
  
  そのお答えをきいて、
  
  「ああ、この方は歌の通り、大切にしている気持ちを聴かせてくださってるんだ。」
  
  と、言葉には出来なかったけど、胸がきゅっとなった。思い出すたび、ぽわんと指先が暖まる。背中を押してくれている思い出だ。
  
  その時着ていたセーターは、なんでもないワインカラー。もう何年も何年も前のことなのに、大事な思い出だから、クロゼットにちゃんと残してある。
  
  ラジオのお仕事も健在だし、ここのところのビートルズやシティ・ポップのヒットや注目度の高まりで、忙しくされていることだろう。
  
  親愛なるMr.Melody
  
  これからも、幸せの虹をかけ続けていてくださいね。出来ることなら、あなたの歌を聴き続けている、たくさんの私と同じ、仲間からも、受け取った幸せの分、虹のかけらをお返しすることが、出来ていますように。
  
  私のラジオからは、まだあなたの声が聞こえています。
  
  セーラー服の、ショートカットの自分が、あなたや、あなたの大事なひとたちの歌を、たくさん見つけたこと。数学は苦手だったけど、大手柄だと思うのです。
  
  どうか、元気でいてくださいね。幸せなことが、あなたにも、たくさん届きますように。
  
  あなたの、遠い友達より。続きを読む

  投稿日：2024.03.31

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  ドラソル

  杉真理の自伝。
  
  知ってるミュージシャンが多数出てきて、彼を取り巻く音楽環境を知ることができた。

  投稿日：2023.11.21

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