教室を生きのびる政治学
岡田憲治(著)
/晶文社
作品情報
国会でも会社でも商店街の会合でも
そして学校のなかでも、
人間の行動には同じ力学=「政治」が働いている……
いまを生きるわたしたちに必要なのは
半径5メートルの安全保障 [安心して暮らすこと] だ!
学校生活のモヤモヤを政治学から見てみると、
わたしたちはとっくに政治に巻き込まれていた!
◆自治:女子の靴下だけ黒限定のトンデモ校則
◆議会:かみ合わなくてイライラがつのる学級会
◆多数決:むりやり感あふれる過半数ルール
◆公平:不登校を「ズルい」と思ってしまう気持ち
◆支持:意見を言えない人はどうする?問題
心をザワつかせる不平等も、友だち関係のうっとうしさも、孤立したくない不安も……
教室で起きるゴタゴタには、政治学の知恵が役に立つ!
学校エピソードから人びとのうごめきを読みといて、社会生活をくぐりぬけていこう。
人が、社会が、政治が、もっとくっきり見えてくる。
「安全保障、といっても軍備や国家間の紛争の話をしようというわけではない。半径五メートル、それは僕たちの日常の生活空間の話だ。日常の生活空間(とくに教室内)で頭を抱えながらうずくまるのではなく、少しでも心穏やかに、安心して過ごすために、なにより政治学が役に立つ、ということを伝えたいのだ」
(「はじめに」より)
【目次より】
はじめに
序章 大前提――力を抜いて自分を守る
――善・悪・社会
教室のなかの安全保障/だれも立派にはなれません/友だちが一〇〇人も必要なワケがない/世界史に一度しか登場しない僕たち
第1章 言うことを聞く/聞かせるということ
――権力・合意・自治
政治とは「選ぶ」こと/僕たちの心の習慣――理由を放置したまま従う/トンデモ校則は守るべき?/「みんなで決めた」というフィクション
第2章 どうして「話し合い」などするのか
――議論・中立・多数決
話し合いは失敗する/偏りを確認するために/「論破」に含まれているもの/多数決=民主主義?――とりあえずの風速計/黙っているが考えている/言い出せない人のための政治
第3章 仲間をつくるということ
――対立・支持・連帯
友だちより「仲間」を/対立を恐れず、やみくもに戦わず/上も下もない対等な僕たち――協力関係の組み立て
第4章 平等をめぐるモヤモヤ
――公平・公正・分配
心がザワつく厄介な「平等」/平等を切り分けてみる/平等でないと困る理由
第5章 政治は君たちの役に立つ
――責任・民主主義・政治
自己責任論なんて無視してよいのだ/やり直しが前提のシステム――民主主義/学校でも家でもない場所へ
おわりに
大人はなかなか変わりにくい/こんな世の中にしてしまった/政治学は教室を放置してきた/僕たちもかつては君たちだった
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商品情報
- シリーズ
- 教室を生きのびる政治学
- 著者
- 岡田憲治
- 出版社
- 晶文社
- 書籍発売日
- 2023.04.25
- Reader Store発売日
- 2023.04.25
- ファイルサイズ
- 3.1MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 3.4 (16件のレビュー)
-
『政治学者、PTA会長になる』が面白かった(著者 オカケンの吠える声が今でも耳に残っている…)ので、同じ学校現場関連で本書をチョイス。
PTAでは親御さん世代が対象であったのに対し、今回は(一応)中…高生向けに執筆されている。「自分の身の安全を確保し、学校生活をサバイブしてほしい」というのが本書におけるメッセージだ。
学校はいわば社会の縮図。政治学をその小さな社会に当てはめることで、身の回り半径5メートル以内の「安全保障」につながる、というわけだ。
中高生対象なだけあって、今回のオカケンは超ノリノリ!
ほぼ話し言葉だし、まるで階段教室に全国の中高生を集めた臨場感たっぷりの講義を行なっているみたい。(その分脱線したりとまとまりがないように感じることもあったけど)
本文の主役とも言える若人の声・本音はあくまでオカケンが作り出したものだが、言い分はよく分かるしこれでもかとこだましてくる。
何よりもここで大切にされていることは「分節化」だ。
ビッグワード(「社会」など抽象度が高く汎用的な言葉)について、「そもそも〇〇(ビッグワード)」とは何かを分析し、必要とあらば何種類かに切り分けている。
・「友達」→「自分以外の区分け(クラスメート・違う組の知らない人….)」
・「意見を言わない人」→「彼らが意見を言わない理由」
等を列挙・解析することで、大きな壁みたく立ちはだかるビッグワードを見極められるよう促している。ビッグワードを振りかざされるたびに立ちすくむこともなくなったりして。
表向きは中高生向けだけど、中高生だった自分にも今の生活において共感できる点が多かった。「友達100人なんてもってのほか、友達よりも”仲間”を作る方が必要!」の話は心がほぐれる…。
何かを取り決める時(本書では学祭の出し物を決めるクラス会議が引き合いに出されていた)、「みんなの心を一つに!一致団結!」の精神論がもてはやされがちだけど、「仲良くもない人たちに合わせたくない」というのが大体の本音である。
でも人間関係が合わないのは自然なことだし(オカケン…ではなく哲学者フッサール曰く、「なぜかそうなっちゃう組み合わせにすぎない」)、協力する動機なんか正直何だって良い。意見が対立したら損得勘定で対応したって良い。
心の安全さえ確保できれば、それくらいドライでも良いのか。過去の自分に教えてあげたい。
「僕たちは弱くて小さくて助けが必要だ」
「学校なんか命をかけて行くところじゃない」
何のために学校へ行くのかを問われると、悔しいかな親や教師が吐いたような文言しか出てこない。そこで展開される教育の目的も然りだ。
オカケン曰く(二度目の正直!)、その真の目的は「勇気と覚悟をもって自分で考えて決断できる頻度の高い人間を社会に送り出すこと」だという。「生きのびる=正しいと判断したことを実行できる」フィールドが教室でなくても良いのだ。続きを読む投稿日:2024.03.03
政治家たちの不祥事が取り沙汰される昨今、教室を生きのびる政治学とは面白いタイトルだな、と思って手にした一冊。
扱う内容はいいけれど、クセの強い口語文体で、読むのに苦労した。中高生だとこうした文体の方…が読みやすいのかな……。
政治学というのは身近に存在している。そのことを学校生活の一部を切り取って説明してくれるので、なるほどなと思う点は多かった。
ただ、教室を生きのびるために政治学が役に立つとうたっている点に関しては、うまく理解できなかった。政治学の知恵というより、筆者の知恵は役に立つので、読んで損はしないけれど。
まとめると、筆者からの中高生への熱いメッセージがつづられた本、という感じだ。
友だち・話し合い・リーダーシップ・不平等・自己責任・民主主義……読めば、社会の仕組みへの理解やものの見方が豊かになるし、モヤモヤもスッキリするはずだ。
中高生に読んでほしいけれど、なかなか読みづらい(そして政治学の繋がりがわかりにくい)ので星3つ。続きを読む投稿日:2024.04.07
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