子どもの誇りに灯をともす――誰もが探究して学びあうクラフトマンシップの文化をつくる
ロン・バーガー(著)
,塚越悦子(訳)
,藤原さと(解説)
/英治出版
作品情報
子どもたちが自ら学び、可能性を切り開いていく学校とは?
全米屈指のPBL校ハイ・テック・ハイの教育思想に大きな影響を与え、現場の教師に20年読み継がれる教育書のバイブル、待望の邦訳。
「提出して終わり」じゃなくて、何度もやり直して「美しい作品」をつくり上げる。
生徒が、先生が、地域の人たちがワクワクする学校が生まれる!
★『「探究」する学びをつくる』著者、藤原さと氏による解説を収録
★ハワード・ガードナー氏(ハーバード大学教育学大学院教授)推薦
「本書は、才能溢れる教師、優れたクラフトマン、そして教育改革の中心的な存在であるロン・バーガー氏の生涯の経験に基づく必読書です。私がそうだったように、読者のみなさんも全てのページから学ぶでしょう」
●プロジェクト型学習を取り入れても、生徒の主体性をうまく引き出せていないと感じる教師必読の一冊!
●クラフトマンシップの文化が生徒の学びを変える
・クラフトマン(職人)=誠実さと知識を兼ね備え、自分の仕事に誇りを持って一心に取り組む人。その文化をみんなで共有すると、生徒は内面から自分を変えていく。
・「提出して終わり」ではなく、仲間からの批評をもとに何度も草案をつくり直し、より良いアウトプットを目指す授業が深い学びをもたらす。
・生徒は他者の評価ではなく、自分なりの美意識や評価基準を原動力にして学ぶようになる。
●3つの工具箱を使って学校を改革する
小さな学校の教師だった著者自身の実践、学校へのコンサルティング、大学院での研究から見出した、学校を変革するための3つの工具箱を各章でわかりやすく解説!
〈目次〉
はじめに クラフトマンでいっぱいの教室
第1章 エクセレンスの収集家
第2章 工具箱①学校にエクセレンスの文化をつくる
第3章 工具箱②エクセレンスを追究する学び方
第4章 工具箱③エクセレンスを教える
おわりに エクセレンスの測り方
訳者あとがきーー世界が注目するハイテックハイ
解説ーー美しい作品をつくり出す人生
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商品情報
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この作品のレビュー
平均 4.0 (1件のレビュー)
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40年以上教師を勤め、ハーバード大学教育学修士、EL Education シニア・アドバイザーとして教育業界を牽引してきた著者が、現代の学校教育に必要と考える方針と戦略をまとめた一冊。
***
…・この本の目的
①「学校における「エクセレンスの倫理観」がどのようなものかを説明し、そうした文化を築いて維持する戦略を読者と共有すること(P.21)」
②「そのような文化を、特に必要としている学校に役に立つような形で共有しようと模索する私(=著者)の探究の物語(P.22)」
・独自のキーワード「エクセレンス」について
①「自分が誇りに思えるような、力強く正確で美しい作品(P.11)」
②「即効性のある方法ではなく、長期間にわたるコミットメントが必要(P.17)」
③「エクセレンスの鍵は、文化にあります。家庭や地域コミュニティや学校に、質の高い作品を生み出すことを期待し、支援を惜しまない文化があると、子どもたちはその文化に適応しようとするのです(P.20)」
・なぜエクセレンスを追求する必要があるのか?
「学校は、課題の量よりも、最終成果物の質を大事にするように変わる必要があります(P.23)」
「私は、『質の高い作品は変容をもたらす力を持っている』と信じています(P.23)」
「生徒の自尊心を『まず』高めて、『そのあとに』作品の質を高めることはできません。『良い作品をつくり上げるその過程で自尊心が培われる』のです。(中略)いくら褒め言葉を尽くして彼らの自尊心を高めようとしても、生徒自身が『これは価値があるものだ』と思えることをしない限り、自尊心は芽生えません(PP.103-4)」
***
この春小学校四年生になった私の息子は、読書が大の苦手だ。学校の読書の時間が嫌い。図書館から借りてきた本を読むのも嫌い。家では1日30分の読書タイムを設けているが毎回罰ゲームの様相を呈している。極め付けは読書感想文。学校指定の小さな読書ノートにたった三行ほどの感想を書くだけなのに、おそらくこれが今の彼の人生において最大の苦行。
私は昔から読書が大好きなので、息子にこれ以上読書を嫌いにならないでほしい。別に大好きになる必要はないけれど、義務感だけで嫌々やっていたらなんの本を読んでも楽しくないし内容も頭に入らないし、ただの時間の無駄になってしまう。
四苦八苦する息子の姿を見ながら、この本で著者が強調していた「エクセレンスの追求」について考えた。今の息子は、読書することにも、読書感想文を書くことにも、おそらく何の価値も見出していない。やりたくないけれど、やらなければいけないからやっている、ただそれだけ。つまんない、楽しくない、私が目を離した隙にタイマーを誤魔化して一分一秒でも早く終わらせたい・・・この状況をどうやったら変えられるか?
ある日の苦行のあと、私は息子と話をすることにした。
「読書、なんで楽しくないんだと思う?」
「お話の内容がおもしろくない」
「タイトルでだいたいの内容はわかるよ。興味ありそうなものを借りてみたら?」
「でも、学校のおすすめ本リストのチェックを埋めたい」
「そのリストは埋めなきゃいけないの?」
「そんなことはないけど、読んで、ハンコがもらえると嬉しい」
なるほど。息子も私も(なんなら夫も私の母も)収集癖があるので、リストに載っている本を読んで早くハンコを集めたいという彼の気持ちは痛いほど理解できる。私もそういうモチベーションで行動してしまうことが今もよくある。だからその欲求はある程度満たしつつ、読書における苦痛レベルを下げていきたい。さあどうする?
「じゃあリストから借りるのは一冊にして、他の二冊は自由に選んでみたら?」
「簡単な絵本みたいなのでもいいのかな」
「いいと思う。その代わりひとつだけ。読書感想文をもう少し綺麗な字で書いてほしいな。作文や文集を見ているから君が綺麗な字を書けること知ってるよ」
「・・・わかった」
苦手な読書においてエクセレンスを追求するのはまだまだ先の話だれど、少しでも本を読むことが楽しいと感じられれば、あるいは綺麗な字で読書ノートに感想文を書くことができれば、振り返ったときに達成感を得てくれるかも知れない。そしてそれが彼の体験となって、読書に価値を見出してくれるかも知れない。ここからどうなっていくかわからないけれど、希望を持って注視していきたいと思っている。
***
以下、その他所感。
親の立場からすると、エクセレンスの追求と過保護との線引きが難しそうだと感じた。子どもにより良い品を作って自尊心を高めてもらいたいがために、教師や親が手を加えたり、創作の過程に必要以上に介入することは当然望ましいことではない。かといって、最初から最後まで全てを子どもの力に委ねるのにも限界がある。創作物が完成した際に子どもが「自分ので作ったのだ」としっかり思えるように、程よい距離感を保ち、子どもの成長過程に応じた支援を見極める必要がある。
後半、教師への援について書かれた章も非常に興味深かった。息子が通う小学校は学習指導要領をほとんど無視した教育を行なっているので、教師への負担が非常に大きいようだ。そのため、学期の途中で体調を崩してしまったり、休職したりしてしまう教師の数は、他の学校と比較して多いように思う。確かに教師の仕事というのは青天井で、熱意があればあるほど際限なくやることが増えていってしまう。熱意を持って赴任してきた教師たちがそれを枯渇させることなく職務を全うできるように、学校組織はもちろんだけれど、保護者である私たちも協力していく姿勢が必要であるように思えた。続きを読む投稿日:2023.04.07
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