黒い海 船は突然、深海へ消えた
伊澤理江(著)
/講談社
作品情報
その船は突然、深海へ消えた。
沈みようがない状況で――。
本書は実話であり、同時にミステリーでもある。
2008年、太平洋上で碇泊中の中型漁船が突如として沈没、17名もの犠牲者を出した。
波は高かったものの、さほど荒れていたわけでもなく、
碇泊にもっとも適したパラアンカーを使っていた。
なにより、事故の寸前まで漁船員たちに危機感はなく、彼らは束の間の休息を楽しんでいた。
周辺には僚船が複数いたにもかかわらず、この船――第58寿和丸――だけが転覆し、沈んだのだった。
生存者の証言によれば、
船から投げ出された彼らは、船から流出したと思われる油まみれの海を無我夢中で泳ぎ、九死に一生を得た。
ところが、事故から3年もたって公表された調査報告書では、船から漏れ出たとされる油はごく少量とされ、
船員の杜撰な管理と当日偶然に発生した「大波」とによって船は転覆・沈没したと決めつけられたのだった。
「二度の衝撃を感じた」という生存者たちの証言も考慮されることはなく、
5000メートル以上の深海に沈んだ船の調査も早々に実現への道が閉ざされた。
こうして、真相究明を求める残された関係者の期待も空しく、事件は「未解決」のまま時が流れた。
なぜ、沈みようがない状況下で悲劇は起こったのか。
調査報告書はなぜ、生存者の声を無視した形で公表されたのか。
ふとしたことから、この忘れ去られた事件について知った、
一人のジャーナリストが、ゆっくり時間をかけて調べていくうちに、
「点」と「点」が、少しずつつながっていく。
そして、事件の全体像が少しずつ明らかになっていく。
彼女が描く「驚愕の真相」とは、はたして・・・・・・。
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商品情報
- シリーズ
- 黒い海 船は突然、深海へ消えた
- 著者
- 伊澤理江
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 講談社
- 書籍発売日
- 2022.12.23
- Reader Store発売日
- 2022.12.22
- ファイルサイズ
- 7.1MB
- ページ数
- 288ページ
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この作品のレビュー
平均 4.3 (51件のレビュー)
-
「どうしても...せねばならない」の連発
今年(2023年)、各紙で絶賛され、賞を総ナメにした本なんだけど、おかしくね?っていうのが正直な感想。
どうにも著者の言う”潜水艦衝突説”が信じられない。
彼女の仮説を整理するとこうなる。
海中…を航行中の潜水艦が停泊中の寿和丸に接近し、避けきれずセイル(中央突端の潜望鏡などを収めたポールみたいな艦橋)に接触してしまう。
何とか回避しようと急速潜航したところ、今度は跳ね上がった艦尾の操舵が寿和丸の船底をぶち抜いてしまった、と。
生存者の証言と重ねると、右舷前方で2回の衝撃音があり、1回目は「ドン」、7-8秒後に「バキッ」という破壊音だったらしい。
ネットで日本の潜水艦の画像を開いてみて、セイルと艦尾の操舵の長さを確認し、頭の中でイメージしてみる。
相手は停泊中とはいえ、何ノットかで航行中に、最初にセイル、次に艦尾が当たる。
それも同じ右舷前方に?
ちょっとあり得ない気がする。
特にセイルと艦尾までの距離が短い日本のような小型の潜水艦では、ますます確率が低そうだし、だいいち潜水艦の方も無事では済まないだろう。
確かに本書でも、元潜水艦隊司令官だった人物が登場して、「日本のだと隠しきれない」と証言し否定されている。
それで米原潜ではないかとなるのだが、確かに巨大な原潜であれば、セイルから操舵までの距離も格段に長いのでありえるかなと思えてくるが、そうなると別の問題が発生する。
全長数百メートルもの巨大な原潜が急潜航した時、その真上に位置する海上はどうなるだろうか?
波の高さは2mほどだったらしいが、そんな程度ではすまないのではないか?
それに衝突時のブリッジにいた甲板長の証言にも気にかなる記述が...。
慌てて”何かぶつかった、逃げろ”ではなく、落ち着いた様子で、”クレーン操作して、バランスをとれ”と指示しているのだ。
落ち着いた様子で?
すでに沈み始めているのに?
ますますわからない。
船舶や海事関係専門のシミュレーションができるところであれば、どのくらいの大きさの潜水艦が何ノットで航行して、セイルが当たるギリギリまで接近した後、急激に潜航し、それで右舷前方だけにセイルと操舵をぶつけることができるのか、解析してもらったらいい。
そうすれば、潜水艦のサイズが絞り込めるかもしれないが、その場合でも確信を持って言えるが、衝撃音はドンというより、引きずるような長めの音になるはずだし、右舷前方だけに片寄らないはずだ。
なんでクジラなどの海洋生物の可能性は、一顧だにされてないのだろう。
イルカの群れもあれば、巨大なダイオウイカだっているだろう。
本書でも繰り返し触れられてはいるが、現下に否定されている。
世界中の潜水艦による海難事故を調べてはいるけど、さまざまな生物によるあり得ないような転覆や沈没事故の事例を集めたら、酷似したものがおそらく出てくるのではないか。
それに太平洋上の海中を行き交っているのは、潜水艦ばかりではない。
昔であれば軍事用の水中グライダーやドローンもそうだし、現在なら無人の潜水ロボットだってある。
今回、本書で焦点となっているのは、海中に流出した重油の量なのだが、運輸安全委員会の報告書と乗組員の証言とは大きく異なっている。
ただ、ここにも疑念がある。
事故調の調査が異例の長期にわたったのは、流れ出した大量の重油と沈没の因果関係を無視して、波による転覆で辻褄を合わせるのに苦慮したためという見立てだが、本当にそうなのか。
証言以外に、写真が決め手になったのではないか。
現場海域の捜索中に撮られた写真、そして何より遺体収容時に帰路の船内で撮られたという油まみれの写真だ。
だが、それについてはその後、全く触れられていないのが何とも解せない。
国は国で、流出量が大量なものではなかったと考えるだけの証拠に依拠していたとは考えられないのだろうか。
仮に本書で語られている通り、船底が損傷し大量の重油が漏れ出て、それが原因であっという間に浸水が始まったとするなら、やはり5000m下に沈んでいる寿和丸の潜水調査が欠かせないだろう。
てっきり最終章では、国がやろうとしない調査を民間で、クラファンでも何でも呼びかけてるのかと思ったら、案外あっさりとあきらめて、報告書の不備をつく訴訟に移行してしまったので、残念でならなかった。
確かに、亀裂の入ったとされる部分から沈んでいったとしたら、必ずしも潜水調査で、都合よく船底の該当部分を晒した状態で着水しているとも限らないだろうし、何より知床遊覧船沈没事故でも再三語られた通り、沈没時に新たな損傷が生まれ、事故原因の確定が困難なことも予想される。続きを読む投稿日:2023.12.15
-
2008年に太平洋上で碇泊していた漁船が突如沈没し、17名もの死者行方不明者を出した海難事故があった。原因は大波を被ったとされているが、生存者の証言や現場の海況などを鑑みると不自然な点が数多く浮かび上…がってくる。
本作はミステリー仕立てのようであるが、その実はノンフィクションであり謎はむしろ事故処理のプロセスにある。多くの犠牲者が出た重大海難事故について、潜水調査などの現場検証も十分に行なわれず、報道や捜査機関の挙動もあまり目立っていないのはなぜなのか。
四方を海に囲まれた海洋国家である日本で、国民の生命を脅かす様々なファクターがあまりにもブラックボックス化し、捜査や原因究明のプロセスが開示されず、大本営発表をそのまま垂れ流すだけのマスコミといった今現在も変わらない状況が見え隠れする。
蛇足だが、小名浜漁港や著者の縁があった中板橋といった地名は少なからず見知った地域でもあり、あーあの塾か!とあとがきを読んで親近感を持った。続きを読む投稿日:2024.04.03
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