私の脳で起こったこと ――「レビー小体型認知症」の記録
樋口直美(著者)
/ちくま文庫
作品情報
「若年性レビー小体型認知症」本人による、世界初となる自己観察と思索の記録。認知症、脳の病気とは一体何なのかを根本から問い、人間とは何か、生きるとはどういうことかを考えさせる。周りに理解されないための孤独と絶望の中にありながら、幻覚(幻視、幻聴など)、嗅覚障害、自律神経症状など自分に起きたことを日記形式で淡々と観察し、卓越した文章力で表現した希望の書。
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商品情報
- 著者
- 樋口直美
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま文庫
- 書籍発売日
- 2022.01.06
- Reader Store発売日
- 2022.05.06
- ファイルサイズ
- 0.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.5 (5件のレビュー)
-
アルツハイマー型認知症については当事者による著作も少なくないが、それに比べて少ないものの認知症の約5人に1人にあたると言われる「レビー小体型認知症」の当事者による記録であるという点が、まず大きな特徴で…ある。もうひとつの本書のポイントとしては、当事者によって綴られた日記だということが挙げられる。文庫版、約280ページ。
本書は主に、病気に気付いてから講演に踏み出すまでの約二年半の日記からの抜粋で構成されており、四季ごとを一章として構成しているため、全12章となっている。巻末には日記の終末近くで著者が準備している様子も描かれている、認知症ラボにおける講演の記録、そして文庫版あとがきが収められている。見開き左側のページには、注釈が掲載されており、認知症に関連する固有名や症状などについても、手早く確認できる。
2012年の秋に始まる日記は、50歳で夫と二人の成人した子供と暮らす著者が、自己診断によって自身がレビー小体型認知症ではないかと疑うところに始まる。著者の病気の過程で独特なのは、そもそも日記から約9年まえの時点で著者の病状がうつ病と誤診されているところにある。それによって、長期にわたってうつ病向けの不必要な薬を処方されていたことが著者のそれまでの生活に大きな影を落としていたことが端々で語られ、このような誤診に警鐘を鳴らすことも、本書が果たす役割のひとつとなっている。
日記という形式の特色もあいまって、二年半の記録のなかで浮き彫りになるのは、やはり著者の内面である。レビー小体型認知症による身体的な苦痛や精神的な抑鬱状態、幻覚といった症状に翻弄され、好不調によって一喜一憂する様子がまざまざと浮かび上がる。記録の対象になっている前半の期間については、とくにその傾向が色濃く、著者の焦燥感や死への恐怖が読み手に伝わる。
著者が病気と向きあう過程を読んでいて流れをポイントになったのではないかと感じたのは、多くの人に自らの病気をカミングアウトできるようになったことにある。初めは夫や子どもにさえなかなか病気の詳細を伝えられなかった著者は、自分一人で抱え込むことによって、より不安や絶望感を大きく膨らませていたように見える。しかし時間をかけて病気と付き合ううちに、周囲に伝える決断して理解を得たことが、病気と付き合うための状況を大きく好転させたのではないだろうか。カミングアウト後の著者は、不調を迎えることはあっても、それ以前のように一人で欝々とするような記録は減り、辛いこともありながらも前向きに生きる様子を窺うことができる。
このほか本書は、「認知症」という言葉が使われることによって生まれる偏見や、笑顔をはじめとした当事者にとって重要なものなど、当事者としての体験から得られた知見が多く、認知症と向きあう人々とって貴重な助言を受け取ることができるのではないだろうか。同時に、現時点で(うつ病としての誤診の期間も含めて)レビー小体型認知症に罹患してから15年以上が経過しても、元気に活動している著者の存在そのものが多くの人への励ましになるだろう。続きを読む投稿日:2022.02.23
以前読んだ『ゆかいな認知症』でこの著者とこの本について知った。
壮絶な体験記。よくぞここまで書かれたと敬服。
病との孤独な戦いが、少しづつ前向きに変えられていくきっかけは、ご主人と息子さんにご自分の状…況について話したこと。夫の見守りと優しい子どもたちのサポートは、どんなに心強いものになったことか。
障害や病気の有無にかかわらず、支え、見守り、自分の気持ちを受け止めてくれる存在があるかないかは、その人が前向きに立ち上がれるか否かの分水嶺なのだと思う。続きを読む投稿日:2022.10.12
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