変半身
村田沙耶香(著者)
/ちくま文庫
作品情報
「だって、私たちって、家畜じゃない」(「変半身」)「僕たちの身体には奇跡が眠っているんだ」(「満潮」)――若者が贄となる孤島の秘祭「モドリ」の驚愕の真相から恐るべき世界の秘密が明かされる「変半身」、「潮を吹きたい」という夫に寄り添う妻がふたりで性の変容を探求する「満潮」、ニンゲンの宿命と可能性を追究して未知の世界を拓く村田ワールドの最新の到達点を見よ!
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この作品のレビュー
平均 3.5 (32件のレビュー)
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どうしたのだ、わたしは。
村田沙耶香さんの性の話ほどワクワクと共感に溢れた作品なんてない、と思っていたのに…
作品の内容に触れる前に、この作品の背景の説明が必要だ。
冒頭で、こう説明がある。
「本作…は、村田紗耶香と松井周が三年におよぶ取材・創作合宿を経て、共同で原案を創り、それぞれ小説と舞台として発表するプロジェクト=inseparableのために書き下ろされ」た作品だそうだ。
解説では、「演劇版と共有するのは千久世島という場といくつかの設定だけで、ストーリーはまるで異なっている」とのこと。そして「どの村田作品にもまして演劇的な趣が強いのは、この創作プロセスとも無縁ではないだろう」。
演劇的な趣。
なるほど。いつも奇抜だけれどその世界観にするっと入り込める村田作品と比べて、今回はなかなか入り込めなかったのはそのせいなのか。
本作品を読んでいる間じゅうずっと、この作品を読んでいる自分を、もう一人の自分が見つめているような、そんな感覚が抜けなかった。
「変半身」と書いて、「かわりみ」と読む。
なぜこの字を当てたのか、作品を読み終えると納得する。
しかし、展開的に、タイトル的に、掘り下げるのが「変半身」であってほしかったのだ。
「変半身」は結局手段だったように感じてしまって、すごくもったいないような、そんな気がしてしまっている。もっともっと、クローズドサークルと性とアイデンティティ、みたいなところにぐいぐい持って行ってほしかった。これは、欲張りなんだろうか。でも、これまで彼女の作品を読み進めてきたファンとしては、やはりちょっと、期待しすぎてしまう。
「変半身」のラスト、展開のついていけなさに加え、ほぼ「ポーポー」のみで占拠されたページにぎょっとしたし、「満潮」では「潮を吹けない」ことに対するコンプレックスや、「潮を吹く」ことに対する蔑視がわたし自身に特になく、寧ろ「潮を吹ける」っていいな、でも掃除大変だし別に吹けなくても…という、特に大きな感情の変化は訪れることはなく…
両作品に共通するもの。それは、「中身」の重要性だと思う。島が「島」であることに囚われ、島民がその外面に振り回される姿、膣の中身という見えない場所に秘められたもの。いずれも、「見えない」からこそ外面で体裁を保とうとする。両作品は、その「見えない何か」に一生懸命向き合い、探っている。自分だけのそれ、というものを見つけたい、名付けたい、という気持ちの強さが伝わってくる作品だった。そう考えると、これまでの村田作品よりもまた一段階深みを増している、と言えるのだろう。
しかしなんというか、今回はいつにもましてぶっ飛んでいて、途中で置いてけぼりにされてしまったような、そんな感覚が消えないのである。
そして、本作品以外にも最近、村田さんの作品がどんどん文庫化されていて嬉しい。
先日仕事帰りに、どうしてもほしい本があって大きな本屋さんをぷらぷらして、その時に村田さんの最新エッセイ「私が食べた本」を見つけた。目次に金原さんの「星に落ちる」を見つけて、大好きな作家さんが大好きな作家さんの本を推している!この悦び!!
次は「星に落ちる」を読もう。続きを読む投稿日:2021.12.18
思っていたより内容が薄いと思いました。
世界観は不思議で独特。レビューで狂気だとか気持ち悪いとか言われていたので、期待してしまいました。メッセージ性があるし、おもしろいとは思うのですが、読み手の頭がお…かしくなる程じゃなかったので少し残念に感じました。続きを読む投稿日:2024.04.29
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