人生はゲームなのだろうか? ――〈答えのなさそうな問題〉に答える哲学
平尾昌宏(著者)
/ちくまプリマー新書
この作品のレビュー
平均 4.1 (20件のレビュー)
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哲学とはそもそも何か。
思想家の考え方を学び、分類するのが哲学ではない。哲学とは、自分で考え「続ける」ことなのだ。
その題材として、取り上げられているのが、「人生とはゲームか?」というものであり、本…書では、そのテーマに対して、一冊まるごと取り組む、という意味で面白い。
では、「人生はゲームなのか」と問われたときに、まずは単語を分解しなければならない。
私たちは、普段、言葉を無意識のうちに使っているけれども、こうした命題に対しては、そもそもの定義が曖昧だと、それに対する答えというものは大きく変わってしまう。ゲームがいわゆる「テレビゲーム」なのか、それともスポーツで言うところの「ゲーム」なのか。
そうした、言葉の意味を捉え直してみるというプロセスから、それが正しいのかどうかを展開、判断していく。
今ここで書いたのは、哲学することの序盤であり、この本では深く深く丁寧に進められていく。
考えることは、非常に難しい。「ちゃんと考えました」というのは、実は何も考えてないのかもしれない。丁寧に捉えたつもりでも、掬い上げた両手からこぼれるものは多い。
『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)』 の考え方に近いが、知っている「つもり」になっているものは自分が思っている以上に多いのかもしれない。
良いか悪いかは別として、意味を考えることもなく素通りできる、もしくはできてしまう毎日に、考える習慣を身につける。
そんなきっかけを持つための一冊。続きを読む投稿日:2022.02.25
『人生はゲームなのだろうか?』
著者 平尾昌宏
ちくまプリマー新書 2022年
結論だけを知ってもしょうがないことがあると知ったのはいつからだろうか。学問を学んでいったり、仕事の実務を覚えていった…り、または人として大切なことを会得していったり。そのような中で、結論や答えを教えてもらっても、納得できなかったり、納得はできても、ただの知識で終わり、そのままということもある。
いろんなことを知っていく中で、結論だけを知っても意味がない。過程をしることで改めて見えてくるものがある。そんなことを教えてくれるのが、本書である。
この本では、上記の通り、結論だけを知っても意味がない。それはこの本の副題「<答えのなさそうな問題>に答える哲学」が雄弁に物語っている。
この本は著者が1人で答えを導くような、そんな感じの本ではない。この本では、読者とともに考えるということを視野に入れている。テーマを決めて、自分たちで答えを出す。著者はそう書いている。もちろん、本という媒体上、限界はあるが、読んでみれば、「この本は確かに、結論だけを知ってもしょうがない」と思えるはずだ。
読者と考えていくとはどういうことなのか?ここで、本書のタイトルをみてみると『人生はゲームなのだろうか?』である。つまり、人生がゲームであるかどうかを読者と考えるということである。この本では考える過程を示し、それに読者が呼応するような形で、進んでいく。少し引用しよう。
ゲームとは何か。言い換えると、「ゲームの本質」と言ってもいいです。あるいは、「ゲームの概念」と呼ぶこともできます。「概念」というのは、英語だとコンセプト、ドイツ語だとペグリフと言いますが、これは両方とも「掴む」という意味の動詞からできた言葉です。ゲームならゲームってものを、どう捉えるか、どう掴まえるか、捕まえた内容が概念。
(中略)
だから、「ゲームが成り立つための必須の条件」を考える。こっちの方がやりやすいでしょう。
このような考え方を本書では採用し、この論を進めていくことで、人生がゲームであるのかどうか、はたまた人生以外でも、戦争や受験、宗教などの事柄がゲームであるかどうかを判断していく。
本書はいわゆる哲学的思考を身につけるための本である。このような本は幾百とあるが、この本が他の本と違うところは著者の親しみやすい文章と思考の根拠や理由をはっきりと示しながら尚且つそれを読者自身にも考えさせやすいように、著者自身の考えがわかりやすいようにしてあるところだと思う。
最後に、印象に残った箇所を引用する。
たぶんですけど、「もっと深く、もっと突っ込んで」という面を見ると、「やっぱり哲学って答えがないんだな」と思ってしまう人もいるだろうと思います。だけど、そうじゃなくて、例えば、「人生はゲームか」については一定の答えが出せたわけです。ただ、たとえ答えが出せたとしても、その上で、「もっと先まで、もっと広く」、あるいは、「もっと深く、もっと突っ込んで」っていうのも可能だってことです。それは「答えがない」というのとは全く違ってて、言うんだったら「哲学には終わりがない」と言った方がいい。区切り区切りで、一定の答えを出すことはできる。だけど、それをさらに広げたり、掘り下げることもできる。そう言う意味では、終わりがない、いつまでも続けられる(楽しい!)。
続きを読む投稿日:2024.01.31
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