世界史の分岐点 激変する新世界秩序の読み方
橋爪大三郎(著)
,佐藤優(著)
/SB新書
作品情報
予測の先の新時代に備えよ!
近いうちに、「世界史の分岐点」が訪れる。日本も世界も、その激動に呑み込まれるだろう。避けることはできない。本書は、それがどんなものか、なぜ起こるのか、詳しく論じている。ビジネスにたずさわる人びとも、市井の人びとも、その備えをしたほうがよい――(「まえがき」より)経済、科学技術、軍事、文明……「知の巨人」が語りつくす、新しい時代を読み解く針路。
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この作品のレビュー
平均 3.6 (11件のレビュー)
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橋爪大三郎氏が、佐藤優の脱線しがちな対話の流れを何度も引き戻す。解説もそれぞれに得意分野があり、佐藤優を上回る知識や見解を披露できる橋爪大三郎は流石だ。分かりやすいし、面白い。技術論も踏まえた世界情勢…について。
今の中国は大東亜共栄圏とよく似ている。グローバル経済は主権国家がたくさんあって、しかし経済は各国の法律のもとで活動するのがルール。法律は国ごとに違う。各国の法律を国際フォーマットに合わせなければならない。会計法、訴訟法、特許権とか知的財産権とか。現状これにそぐわない国はイスラム圏と中国。国際秩序のゲームチェンジャーになろうとしている中国を牽制すべく、こぞってウィグル問題で中国を非難し制裁をかけるが、日本は与さず、視点は台湾海峡へ。
日本でもアメリカでも起こっている問題は中流階層の解体。製造業中心の大企業が経済を牽引していたが、生産拠点を海外に移し始めることで打撃を受ける。リカルドの比較優位説。これを洗練させたのがサミュエルソン。国際貿易の基本定理としてのモデル。自由貿易を進めていくと最終的にどうなるか。モデルの前提は各国間で資本や技術の移転はなくて生産物を輸出入するだけというもの。それを続けていくと各国の要素価格が均等する。要素価格とは生産要素の価格のことで土地、資本、労働の価格。賃金が世界中で均等化すること、これが国際貿易の最終到達地点。付加価値の大部分は先端技術に集中するのだと。
日本もアメリカもここ数10年賃金が上がらず、アメリカの先端企業における一人勝ちの構図が格差を拡大し、富の集中とともにアメリカ経済を引き上げているから、日本のみが停滞してるように見える。国境の枠内に社会保障が必要な人間をどれだけ抱えているか。それによって税金が異なる。つまり要素価格は国際比較によって均等化する傾向にあるとしても、自国の枠内に抱えるリソースの形によってそれぞれにハンデが異なるから、最終的に賃金が世界中で均等化する事はありえないのでは。
核融合が10年後に実用化すれば地球温暖化の問題は解決する。今の原子力発電所は核分裂。放射性のウラニウムを使うがこの資源は埋蔵量が少なくまもなく枯渇する。廃棄物も多く出る。廃炉の解体も厄介。核融合なら海中に無制限に材料があって枯渇の心配がない。水素は炭酸ガスを出さないが、そもそもエネルギー資源ではなく、他のエネルギーを使って生産されるものである。太陽光エネルギーより太陽熱発電の方が本命。
受験や就職のために科目を選択して、早い段階から決めつけてしまう人生は空虚だ、と最後に二人。全くその通りだと思う。上手く生きる事は生命にとって重要で、社会のルールを把握したら、それに合わせて最大限自分の得意分野を当てはめる。それ自体は空虚だとは思わぬが、社会のルールは正しいか、それで社会は変わるのか。その時点での自己評価は正しいか、別の環境や異次元での成長を目指さないのか。内外から規定する人生の単位の枠を超えねば。国境枠内のリソース差異により均等化があり得ぬ原理と同義にも感じる。続きを読む投稿日:2023.09.20
タイトルと対談者の組み合わせから大いに期待をしたが、やや期待を下回る内容だった。前半はほぼ橋爪先生の独壇場で日頃の主張と大きく変わらない。最近は橋爪先生の書物の出版があまりに連続して出版されるのでやや…満腹感が出てきた。後半で佐藤氏による外交の裏側の解説は著者ならではの経験、知識が披露されて興味深い。続きを読む
投稿日:2023.04.27
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