グローバリゼーション ──移動から現代を読みとく
伊豫谷登士翁(著者)
/ちくま新書
作品情報
急増する移民・難民、各地で台頭する自国中心主義や排外主義、そしてますます拡大する経済格差……。ヒトやモノ、カネ、情報の国境を越えた移動を基礎に飛躍的な発展を遂げたはずの現代世界で、いったい何が起きているのか。本書では、現代をグローバリゼーションの時代と捉え、国民国家や国民経済といった近代社会の前提とされてきた枠組みを、移動という視点から再検討していく。グローバリゼーションと国家との逆説的な関係を解きほぐし、現代世界の深層に鋭く迫る。
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平均 3.0 (3件のレビュー)
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人の移動を切り口にした社会学。農村から都市へ、海外へと人々は移動を続けてきた。特に現代では先進国のみならず途上国においても、海外からの労働者なしでは社会経済が成り立たない。今回のコロナ禍では、その動き…が強制的に停止させられ、社会経済的に大きな影響が出た。逆にこれは人々に移動というごく当たり前の行為をあらためて考えさせる契機になっている。
研究者による論文であるために、慣れていない自分にはかなり読みにくかったため、星3つとしました。続きを読む投稿日:2022.01.18
伊豫谷登士翁(1947~2022年)氏は、滋賀大学経済学部卒、京大大学院経済学研究科博士課程単位取得満期退学、東京外語大専任講師・助教授・教授、一橋大学大学院社会学研究科教授を経て、同名誉教授。専門は…、経済政策、国際関係論、社会学。
本書は、著者の20年ほど前の著作である『グローバリゼーションと移民』(2001年)と『グローバリゼーションとは何か』(2002年)以降に、様々なところで書いたものから選択し、大幅に書き改めたものである。
私は、21世紀に入ってから世界中に広がっている、自国第一主義、移民・難民排斥、及び、その背景ともなっているネオ・リベラリズムと、それに起因する格差の拡大、更には、宗教・文化間における対立、いずれに対しても強い問題意識を持っており、本書を手に取った。
一般に、globalizationとは、様々な事物・側面において、旧来の国家や地域などの境界を越えて、地球規模に拡大する現象を指し、その事物はモノや金や人や情報であり、また、経済や政治や文化や社会などの側面を持つが、本書において著者が取り上げるのは「人」に関わるglobalizationである。
目次は以下の通り。
序章:移動という経験
第Ⅰ部:グルーバリゼーションの時代 第1章:グローバリゼーションを学ぶ/第2章:移動と場所を問いなおす/第3章:グロ-バル資本と世界経済/第4章:世界都市からグローバル・シティへ
第Ⅱ部:移動とは何か 第5章:移動のなかに住まう/第6章:難民が問題になるとき/第7章:「アジア」を問いなおす/第8章:移民国家としての日本
第Ⅲ部:場所の未来 第9章:境界からみる多文化共生/第10章:人の移動とコミュニティという場
終章:人の移動をどう考えるか
読後感は、(書き下ろしではなく、既存の論文を集めたものだからだと思われるが)新書としては、全体の理路が雑然としており、著者の言いたいことも分かりにくい印象が強く、途中からは飛ばし読みで最後までページをめくった。
上記理由により、本書のサマリーとは言えないのだが、断片的に読んで考えたことの備忘は以下である。
◆現代のグローバリゼーションによる人の移動は、発展途上国から先進国への労働力の供給という(ある意味、プラスの)側面を超えて、昨今は、移民の過剰流入と、それに伴う政治的不安の問題を生んでいる。
◆その原因は、世界的な格差を必然的に生み出す、行き過ぎた資本主義(=ネオ・リベラリズム)、及び、国民と移民を否応なく区別する「国民国家」の枠組みである。
◆よって、ネオ・リベラリズムの是正(これについては、著者は語っていないと思われる)と、国民国家の枠組みを超えた、新たなコミュニティを創るための発想が必要となる。
著者は最後に次のように記しているので、私の理解もあながち外れてはいないかも知れない。
「もし本書が国民国家の物語から人々を解き放つ方向を少しでも示唆することができたならば、当初に企図した役割を果たすことができたのではないかと思います。」
(2024年2月了)続きを読む投稿日:2024.02.02
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