コロナ・アンビバレンスの憂鬱
斎藤環(著)
/晶文社
作品情報
コロナ禍という人類史上希な病理下において、人々の精神を支えるものはなにか?
人と人とが会うことが制限される状況下で、我々はどう振る舞うべきなのか?
ひきこもり問題、オープンダイアローグの第一人者が綴る、コロナ禍を生き延びるためのサバイバル指南書。
感染症をキリスト教の〈原罪〉になぞらえて自粛風潮の危うさを訴えた「コロナ・ピューリタニズムの懸念」、災厄の記憶が失われていくメカニズムをトラウマ理論に結びつけて分析した「失われた『環状島』」、対面の場から生まれる根源的な暴力性を問う「人は人と出会うべきなのか」など、ネット上で大反響だったコロナ関連の論考を集大成。コロナ禍という未知の時代を生きていかなければならない我々のヒントとなる、貴重な論考集。
私は、コロナ禍がそれほど社会や人間を変えるとは思っていない。(…)おそらくコロナ禍が過ぎてしまえば、社会が驚くほど変わっていないことに人々は気付かされるだろう。(…)私が注意を向けているのは、ふだん「日常という幻想」が覆い隠しているさまざまな過程や構造が可視化される場面だ。「親密さとは何か」「不潔とはどういうことか」「人の時間意識を構成しているものは何か」「社会はどのように災厄を記憶するのか」そして「対面(臨場性)はなぜ求められるのか」。いずれもコロナ禍でなければ問われることのなかった問いばかりだ。(「あとがき」より)
【目次】
はじめに
1.〝感染〟した時間
コロナ・ピューリタニズムの懸念
失われた「環状島」
〝感染〟した時間
人は人と出会うべきなのか
会うこと、集うことの憂欝と悦び
2.コロナ・クロニクル
「医療」に何が起こったか
第3波の襲来とワクチンへの期待
コロナ・アンビバレンスとメディア
コロナ禍のメンタルヘルス
リモート診療の実態とリモート対話実践プログラム(RDP)
リモート教育は「暴力」からの解放である
コロナ禍で試される民主主義
3.健やかにひきこもるために
健やかにひきこもるために
リアリティショーは「現代の剣闘士試合」か
「マイルドな優生思想」が蔓延る日本に「安楽死」は100年早い
「鬼滅の刃」の謎─あるいは超越論的炭治郎
「意思疎通できない殺人鬼」はどこにいるのか?
亡き王女(猫)のための当事者研究
あとがき
カバー画像:《同じ月を見た日》
コロナ禍に孤立感を抱えている、ひきこもりを含む様々な事情を持った国内外の人々が参加するアートプロジェクト。各々の場所から月の撮影を行い、ここに居ない誰かを想像する。
企画:渡辺 篤
撮影:「アイムヒア プロジェクト」メンバー約50名
画像配置協力:紅、田中志遠
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商品情報
- シリーズ
- コロナ・アンビバレンスの憂鬱
- 著者
- 斎藤環
- 出版社
- 晶文社
- 書籍発売日
- 2021.10.26
- Reader Store発売日
- 2021.10.26
- ファイルサイズ
- 4.3MB
- ページ数
- 272ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (2件のレビュー)
-
コロナ禍という非常事態において、「ふだん『日常という幻想』が覆い隠している様々な過程や構造が可視化される場面」を丁寧に描き解説されており、納得できるものも多かった。著者は「コロナ禍がそれほど社会や人間…を変えるとは思っていない」と諦めに近いことを書いているが、当初は「パンデミックは忘却されやすい災厄だ。だからこそ適切に外傷化される必要があり、望ましい社会的変化という瘢痕を残す必要がある」とも書かれている。最終章で、優生思想について言及し、鬼滅の刃についての論評もあり、興味深く読ませていただいたが、コロナから離れての社会論評と書かれているが、底ではつながっていると思いながら最後まで読み切った。続きを読む
投稿日:2021.11.21
2022年2月、新型コロナウイルスの世界的流行という未曾有の大災害の最中にいます。
日本でも感染の蔓延を防止するための対策がとられています。マスクをせずに外出することなど考えられず、飲食店は時間制限が…行われ、飲食を人とする機会がほぼありません。大規模な集会やイベントも制限されています。
そしてそれに慣れてきている自分がいます。毎日のように居酒屋で談笑をした人達とはもう2年も会っていません。コロナ前の写真を見返して、大人数の集合写真やマスクなしで笑顔で人と近接している写真で一瞬ものすごい違和感を覚えてしまいます。コロナ前の時間のほうが人生の大半だったのに、今ではそれはまるでパラレルワールドの自分が歩んできた、別世界のものだと錯覚してしまいます。
コロナによって何が変わってしまって何が変わっていないのか。そしてその変わったことを私達はいつまでも忘れずに覚えていられるのか。人と実際に会う、ということはオンラインと何が違うのか。そんなことを考えることのできる本書です。
ひきこもって読書やNetflixなどをひたすら味わって、そんな生活もそれなりに楽しくやってきたけれど、やっぱりそろそろリアルに色んな人にあって話したいなあ。本書を読んで、人と会うということが私に不安と恐怖を感じさせたり私の存在を揺さぶったりする「暴力性」をはらんでいる一方、誰かと目の前でやりとりをするということの本能に訴えかけるような心地よさを与えてくれたことを思い出しました。
今、私はそれを求めているんだなぁと感じています。続きを読む投稿日:2022.02.19
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