戦争はいかに終結したか 二度の大戦からベトナム、イラクまで
千々和泰明(著)
/中公新書
作品情報
第二次世界大戦の悲劇を繰り返さない――戦争の抑止を追求してきた戦後日本。しかし先の戦争での日本の過ちは、終戦交渉をめぐる失敗にもあった。戦争はいかに収拾すべきなのか。二度の世界大戦から朝鮮戦争とベトナム戦争、さらに湾岸戦争やイラク戦争まで、二〇世紀以降の主要な戦争の終結過程を精緻に分析。「根本的解決と妥協的和平のジレンマ」を切り口に、真に平和を回復するための「出口戦略」を考える。
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商品情報
- 著者
- 千々和泰明
- ジャンル
- 教養 - 戦記(ノンフィクション)
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2021.07.25
- Reader Store発売日
- 2021.09.24
- ファイルサイズ
- 1.9MB
- ページ数
- 312ページ
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この作品のレビュー
平均 3.9 (27件のレビュー)
-
或る本を読んでいて、その中に別な本に関する言及が在ると、少し強い興味が湧く場合も在る。そしてその興味が湧いた本を紐解くと、それがまた非常に興味深いという場合が在る。こういうのを「読書の発見、歓びが拡が…る」とでも呼ぶのだと思う。本書はそういう「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をさせてくれた一冊だ。
本書は「在りそうで、存外に無い?」という感じの、重要と思われる主題を論じている。「読書の発見、歓びが拡がる」ということと無関係に、単独でも非常に価値が高いと思う。
本書を知ったのは『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』という本を読んでいた時だった。『終わらない戦争 ウクライナから見える世界の未来』の著者による対談が収録された本に、対談の相手の一人として本書『戦争はいかに終結したか―二度の大戦からベトナム、イラクまで』の著者が登場していた。
2022年2月以降のウクライナでの戦争は1年半以上も続き、「終わらない…」という様相を呈してしまっている。そういう中で「終結?」、「停める?」というようなことが上述の本の対談で論じられていた。
戦争の目的を追求して戦闘が繰り広げられる等の展開が在る。そういうことをすると「現在の犠牲」というようなモノが生じることから免れられない。「現在の犠牲」に「何処迄耐える?」ということになってしまう。どんなに犠牲を払っても「将来の危険」を排すべく戦争の目的を追求するという考え方と、「現在の犠牲」を回避すべく妥協的な和平の工作を試みるという考え方が事案の両極のように存在して、両者の間の色々な形での「終結」が図られたのが、これまでの戦争の歴史で、これからの戦争もそういうことになるのであろう。
ウクライナ、ロシアの戦争に関して言えば、上述書に在るのだが、両陣営は各々に「将来の危険」を排しようと「現在の犠牲」を払い続けていて、「一体、何処迄?」というようになって行くのだと思われるが、互いに排しようとしている「将来の危険」は「非常に高いハードル」になってしまっていて、収束に向けた協議が巧く進められない状態に陥って時日を経てしまっている訳だ。
本書に出くわした経過の事柄で少し文字数が嵩んでしまった。が、こういう他の本で呼んだ事柄を踏まえて本書を興味深く読んだのだ。
題名に「二度の大戦からベトナム、イラクまで」と在る。文字どおりにこれらの戦争に題材を求め、戦闘を停めて行く、終結を図るという過程に注目し、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考えた」というような経過に光を当てようとしているのが本書の内容だ。
本書では、第1次大戦、第2次大戦の欧州関係、第2次大戦の日本関係、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争からアフガニスタンやイラクに至る一連の戦争というような形で「各戦争の終結」が論じられている。
総じて思わざるを得ないのは「“始める”こと以上に“終える”ことが難しい」のが戦争というモノであるということだ。そして“終える”ことへのイメージが貧しいままに“始める”に至った戦争は、殊に敗れた側にとっては「ロクなモノではない…」というように終始してしまう。
甚大な犠牲が払われた種々の戦争に関して「その終結」という角度で観て、振り返るというのも有益だと思うのだが、「現在の犠牲と将来の危険を勘案して考える」というようなことは、応用範囲が広いというようにも思う。様々な好ましくない状況から抜け出して行こうとする場合の考え方として有用かもしれない。
「読書の発見、歓びが拡がる」とでも呼ぶ経験をで、なかなかに有益な一冊に出会えて善かった。続きを読む投稿日:2023.10.08
戦争を終結に至らせる要因を、「紛争原因の根本的解決」「妥協的平和」とし、それを見積もるものを「将来の危険」「現在の危険」と分類する。
第一次世界大戦、第二次世界大戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争、湾岸戦争、…イラク戦争、アフガニスタン戦争をこの評価軸で分析し、総括する。
なるほどなあ、と思わせる。
現実に侵攻している、ロシアの侵略、イスラエルの進軍にも当てはまる気がする。
問題は、その「危険」「原因」の認識が現実に合ってるかどうかだという気がした。特に、「根本的解決」という言葉には欺瞞を感じる。そう思ってるだけで、勘違いの可能性が極めて高い。
特に、敵と味方を間違える天才、大米帝国においては。
あとなあ、先の大戦での大日本帝国の終戦への道筋が若干違和感あって。天皇がかなり積極的に動いてる。これまで読んで来た本では、そうではないと理解している。
まあ、「天皇制」と言ってるレベルで感じるところはある。続きを読む投稿日:2024.02.10
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