気候文明史 世界を変えた8万年の攻防
田家康(著)
/日本経済新聞出版
作品情報
繰り返される寒冷化と温暖化――
人類の歴史は気候変動との死闘の連続だった!
●自然科学と人文科学を融合させた名著を文庫化
異常気象を中心とする気候変動が人類の営みに及ぼしてきた影響を豊富なエピソードと共に紹介し、日本ではほとんど例がない、気候と文明・歴史の関係を通史で描いたユニークかつ良質な解説書として高い評価を受けた、『気候文明史』を文庫化しました。
●気候変動に翻弄されてきた人類8万年の軌跡を解説
氷河期以降繰り返される温暖化と寒冷化の移り変わりは人類の歴史をどう動かしたのか。本書は、メソポタミア文明をはじめとする古代文明の興亡から、ナポレオンの敗北、天保の大飢饉まで、豊富なエピソードを交えてつづる歴史読み物。
専門研究に埋もれた気候と人類の関係を示す歴史的事実を丹念に収集し、クロスワードパズルを埋めるようにして完成させた文明史です。
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商品情報
- シリーズ
- 気候文明史 世界を変えた8万年の攻防
- 著者
- 田家康
- 出版社
- 日経BP
- 掲載誌・レーベル
- 日本経済新聞出版
- 書籍発売日
- 2019.03.01
- Reader Store発売日
- 2019.06.24
- ファイルサイズ
- 7.6MB
- ページ数
- 368ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (7件のレビュー)
-
地球温暖化というフレーズがいつの間にか「気候変動」と呼ばれるようになり、温暖化だけでなくさまざまな自然災害の原因として二酸化炭素が原因という名の下に、それを排出するエネルギーや自動車に変化が起きようと…しています。
地球温暖化に対する取り組みを否定するつもりはありませんが、歴史を振り返ってみると、温暖化の時代よりも「寒冷化」の時に歴史が動いていることがわかります。それまで食べていた穀物が取れなくなって飢えてしまうので民族移動が起きて戦争も発生してきたと理解できます。
この本では長い歴史を振り返って、気候がどのように変化してきたかが解説されています。今は温暖化と騒がれていますが、いつ寒冷化の時代になってもおかしくない状況にあると感じました。
以下は気になったポイントです。
・炭素の同位体分析によれば、北米大陸とアジア大陸では700万年前頃からC4型植物が増加したことがわかる、これらの地域のかなりの面積で、森林が草原に変わった。その理由として、2500万年前以降に大気中の二酸化炭素濃度が顕著に減少したためと考えられている。(p31)
・ミトコンドリアDNAによる分析では、原生人類はもっと古い時代(炭素、アルゴン法等で測定できる年代)、30万年前にはアフリカ大陸に登場していただろうとの推測がある(p35)
・コロモジラミはアタマジラミから7万4000年前頃に分化して生まれたことがわかった、これは衣服の着用が始まったのはこの時代であることを暗示していて、トバ火山噴火による急激な寒冷化をきっかけに人類は衣服を着るようになっという仮説がある(p43)
・今日、南極とグリーンランドで一年中積雪があることから、我々が住む時代は数千万年続いている氷河期に入る頃になる(p50)
・北大西洋の海底コアによる分析は、ドイツ人ヘルムート・ハインリッヒにより、1988年に最終氷期の7万年の間に6回ほど急速に寒くなった時代があったと発表している(p61)
・恐竜は2億年近く地上で繁栄していたのになぜ知性を発達させなかったのか、それは人間が直面したような生き延びるために知性を必要とする奇行激変の連続という環境的圧力は、中世だいに存在しなかったから(p63)
・日本もヨーロッパと同様に海岸部のほとんどの遺跡が縄文時代以降の海面水位の上昇で水没してしまったと考えられる、わずかに現存している例は、愛知県知多半島の、先刈遺跡がある。縄文時代早期に区分される9000年前頃のもの、海面下十数メートルに位置して、遺跡から彼らが採取した魚介類が見つかっている(p68)
・海面水位の低下が最も低くなった時期は、2万2000年前から2万年前にかけてで、この時代の陸上の雪氷は地球全体で8400から9800万立方キロメートルと見積もられている、現在は3000万であり、この差が海面水位の130メートルに相当する。(p76)気温の低下する中で降雪量が増加する場合には氷床面積が少しずつ拡大するのに対して、気温が上昇する際には長年積もった万年雪、万年氷が一気に溶けるので海面水位の上昇は早い(p77)
・農耕を始めるきっかけには、人口増加と気候変動の2つの要因があった、狩猟採取生活が限界に近づいた時に寒冷気候が到来した(p96)
・世界で最も古く農業が開始された3つの地域、肥沃な三日月地帯、中央アメリカ高地、中国長江流域における料理は、地中海料理・メキシコ料理・中華料理である(p99)
・動物の家畜化において、家畜化可能な動物は実際のところごく僅かであった、世界全体で45キロ以上の体重をもつ哺乳類は148種類、その中の14種類だけが家畜化されている。他の動物は、気質が荒い、食肉の量が少ないといった理由で適さなかった、そのうち9種が肥沃な三日月地帯を中心とした地域で家畜化に成功したものでビックフォーと言われるのは、ヤギ・羊・豚・牛である、アフリカでシマウマを何度も繁殖させようとしたが失敗している(p101)
・農業による安定した食糧確保が可能になったことで寿命が延びたと思いがちであるがそうではなかった、移動の負担や危険から解放されたことでいつでも子供を作れるようになり、妊娠頻度が上昇したため、妊娠と育児のためかえって寿命が短くなった、男女間で寿命の違いが広がったため、危険な外の世界は男、集落周辺で手作業は女と、家族の中の男女の役割が固まっていたという見方がある(p123)
・6000年前の日本、札幌は海岸に面し、仙台平野。濃尾平野は海に没し、能登半島は島として分離、現在人口が集積している沖積平野は海面下に沈んでいて、洪積台地だけが海上に陸地として突き出している形状である。関東地方の海岸線は、群馬県藤岡市まで達しており、霞ヶ浦は外洋に開いていた(p125)
・5900年前に寒冷化、乾燥化が進んだ、乾燥化した地域として、モンゴル・中国南部、チベット高原、インド、オマーン、イスラエル、サハラ、イベリア半島がある。馬は、ヤギ・羊、牛、豚に遅れてこの時代に家畜化した、カザフスタンと言われている(p137)
・古気候研究からエルニーニョ現象の発生頻度は温暖な時代に減少し、寒冷な時代に増加するという傾向がある、エルニーニョ現象に注目が集まったのが1970年代半ばであり、同じ時期に地球全体の気温が上昇したことで温暖化と結びつける発想が生まれたが、過去1500年間の発生頻度を振り返ると実際には温暖化で増加するという相関関係は見られない(p147)
・サハラ砂漠の拡大については、地球温暖化の影響よりも、砂漠地帯の南側の草原地帯サヘルで牧畜民の人口が増加、それに伴って数が増えた、やぎ・羊が若芽も含めて草原植物を食べ尽くしていることが大きな原因である、農耕による開墾も砂漠化の一因である(p152)
・農耕についで牧畜も1万年前頃に開始された、家畜と密接した生活は伝染病の被害を引き起こした、ほとんどは、犬・やぎ・羊・ぶたである(p157)
・エジプト王朝の盛衰と時期がナイル川の低地にあるエリス湖の水位と一致している、水位が低下すると王朝は混乱して新しい王朝に変わっていた(p160)
・シュメール人最後の帝国(ウル第三王朝)は滅亡すると、日常語はシュメール語から、アッカド語に変わり、セム語族の文化へと変わった、シュメール語は中世のラテン語のように権威ある言葉と米ドル日本政府知恵、紀元前1800年頃には、王碑文、王賛歌、そして学校で用いられるだけとなった(p165)
・豚の家畜化は8000年前頃の西南アジアで始まり、4900年前頃には家畜の中の20-30%を占めていた、ところが4400年前以降になるとメソポタミアのほとんどの地域、エジプトで宗教的に禁止されるようになった、宗教的な忌避の由来が、旱魃の到来という気候変動にあった、インドも3000年前頃までは北インドでは牛は食用とされていた。しかし牛を飼育するために穀物を使わなければならないため、牛は農耕での使役用として食肉とはしなくなった、紀元前257年には、アショカ王の決断により、特権階級であっても牛肉食は禁止となった。仏教、ジャイナ教、仏教にとって変わるヒンドゥー教による禁止も現在に至っている(p166)
・ミノア文明を滅亡させた3700−3600年前の間にエーゲ海サントリーニ島で巨大火山があった、噴火規模は、過去1万年で3本の指に入る大きさであり、1815年のタンボラ火山の3分の2、20世紀最大の噴火であるピナツボ火山(1991年)の9倍に相当したと考えられる(p171)
・ヒッタイトは謎の民族とされる海の民の襲撃を受けて紀元前1190年に滅亡する、鉄の精製は長らく秘伝とされてきたが、滅亡をきっかけに、鉄の使用が世界各地に拡散、青銅器文化から鉄器文化へ移行した(p178)
・人間は気候が寒冷化する時代が到来すると、精神世界の革新を起こすようになり、近世の寒冷化した時代に近代思想が生まれている(p188)
・ローマ領土の拡大時期にワイン醸造の製法は変わった、古代ギリシアの陶器にあるようにブドウを発酵させる壺に変わって、ビールの生産に使われていたオーク材を用い流ことになり、現在普及している製法となった(p198)
・中世前期にあたる900−1300年にかけては、温暖あ気候による繁栄(人口の急増)があった(p235)
・太平洋側の朝廷の勢力範囲は、7世紀には福島県と宮城県の県境であったが、714年には仙台市以南まで郡が整備、724年には多賀城、765年には男鹿半島の北部まで勢力範囲となった。8世紀の日本の人口は600万人、12世紀前半には699万人、弥生時代の10倍である(p40)
・1252−59年にかけて旱魃、長雨、大雨による凶作が続き、疫病も流行した。これにより、天台宗・真言宗の仏教の祈祷、呪術の効果に疑問がつき、極楽浄土を求める鎌倉仏教が支持を集めていった、中世温暖期に、鎌倉幕府、寒冷化する14世紀以前には北関東を拠点としていた足利氏が幕府を京都へ移した、16世紀後半から17世紀前半かけて江戸幕府が開かれ、再び厳寒期となる18世紀後半に東日本の経済力が低下、西日本による倒幕がなされる、東日本と西日本の間での政治の中心の移り変わりは気候変動と一致している(p244)
・小氷期の中で特に寒さが厳しくなった時期は4回ある、1280-1340、1420−1530、1645-1715(マウンダー)、1790−1830(ダルトン)(p271)マウンだー期には、現代社会の基礎となる、物理学・政治哲学・経済学のほとんどがこの時期に活躍した人間に由来している(p304)
・本当の救世主は、英国・オランダを中心とした農業革命よりも、新世界からもたらされた新しい農産物(じゃがいも、トウモロコシ)である(p300)これにより農業に従事しない人口を多く養うことができ、工業労働者を生み出せた(p302)
2023年4月14日読了
2023年4月15日作成続きを読む投稿日:2023.04.15
このレビューはネタバレを含みます
読み始めたときは「自分が望んでいた内容だ!」と喜んだのだが、読み進めていくとアラが目立つ。著者の経歴から一抹の不安を抱いていたが、それが現実化した感じ。
レビューの続きを読む
100ページほど普通に読んだだけで誤植を3〜4…箇所見つけており、明らかな誤字脱字が目に付くので、校閲どころか校正すらしてないのだろうか?と不安になる。巻末に謝辞もないので本当に著者一人で書いたのだろうと思う。
内容的にも「コレ、本当か?」と思う箇所(地球科学的な内容)があり、話半分に読むものだと認識している。
また構成がヘンなのも気になる。
この内容で年代順で話を書かないのは、違和感が強い。
序章で人間の発達と気候の関係(5〜2万年前前後)まで話を進めておきながら、2章で人間の発生前の最終氷期前後の話(20万年前)に戻すのは混乱するし、肩すかしを食らったようで興ざめである。
序章で話の大枠を示し、「大きな変動としての気象イベントを説明、後に人類史へ入っていく」というような流れの方が良かったと思う。章立ても細かい割に意味不明な感じがするので、内容・章立て共に校閲されていない感じが強い。
引用も「えっ!?そんなの論拠として引用するんですか?」と思う物が出てきたりするので、内容だけでなく著者の経歴(気象予報士)から言っても、"専門家(;研究で食べている人)の文章"ではなく、"よく勉強したアマチュアが書いたもの"と思っていた方が良い。
良い点を挙げておくと、
まず、読みやすい。
学者の書いた専門的な文章は読みにくいことも多い。それでも知識欲だけで読んでいくのだが、読み進めるのが辛く、時間がかかることも多い。その点、本書は文章がソフトで言い回しも上手いので最後までスムーズに読むことが出来た。
また、著者の専門である気象に関する内容はさすがにちゃんと書かれており、過去の事例を解説しながら近年の温暖化にからめて、『人類活動に依らない温暖化』の記載を随所でしているのは冷静で解析的で良い。続きを読む投稿日:2024.03.28
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