伊豆の旅
川端康成(著)
/中公文庫
作品情報
一高生時代の〈美しい旅の踊子との出会い〉以来、伊豆は著者にとって第二の故郷となった。青春の日々をすごした伊豆を舞台とする大正から昭和初期の短篇小説と随筆を集成。小説は代表作「伊豆の踊子」ほか「伊豆の帰り」など七篇、随筆は「伊豆序説」「湯ヶ島温泉」「温泉女景色」「伊豆の思い出」など二十五篇を収録する。〈解説〉川端香男里
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商品情報
- シリーズ
- 伊豆の旅
- 著者
- 川端康成
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公文庫
- 書籍発売日
- 2015.11.25
- Reader Store発売日
- 2016.08.02
- ファイルサイズ
- 0.4MB
- ページ数
- 320ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (5件のレビュー)
-
4月のGuruGuruBooks読書会で使用
伊豆の踊子を課題図書にしたので、伊豆の踊子を読むからにはセットで読みたいこの本の中からも、いろいろと紹介をして読書会を進めた。
担当より投稿日:2022.08.07
川端作品はいくつか読んだけど、有名どころの雪国は嗜好にあったけれど、伊豆の踊子の良さは実はさっぱり見いだせなかった。
この伊豆の旅には、川端さんが長年、第二の家の様に逗留した湯ヶ島の湯本館での滞在記に…近いものなど、伊豆における文豪の素顔も垣間見れる短編集となっていて、ちょっと面白い。
川端ファンなら、同じ過ごし方をしてみたくなるかもしれない、るるぶ前の観光本といった趣。
伊豆序説は、そのまま数ページで伊豆の紹介文。
伊豆温泉記は、昔の仲居さんのちょっと商売女的な様子(お客と混浴したり)や、湯質、湯ヶ島以外の伊豆の温泉、文壇友人の来訪した際の思い出など。
正月三が日から、伊豆の帰りまでは小説。
正月三が日は、伊豆の温泉に旅行に来た二組の夫婦の心の機微の話。太宰治が女性の気持ちがよくわかると思っていたのと同じくらい、川端さんはあまり女性の気持ちには敏感でないと思っていたけど、この初対面に近い妻同士、しかも片やおおらかなタイプで、もう一方はなよっとした弱げで、ちょっと女子受けは悪そうなタイプと違う組み合わせの牽制とは違うやりとりは、リアル。
旅によくある、リーダーシップのとり具合による不満が出たり、夫婦2組混浴による相手の伴侶の見極めなどによって、夫婦の心の関係に変化が生じる話。
思い出したのが、一度、仕事の懇親で温泉旅行があった。その時、一緒に旅する同僚女が嫌いで、とても一緒に入る気にはならず、何か理由をつけて、時差で一人で入った覚えがある。裸の付き合いっていうのは、誰とでもできるわけじゃないよね。
椿は、川端を顔見知りの客として信頼し、残したご飯を食べていた貧しい仲居の女の子の話。その子に、上から目線で、そんなことをする君を愛しく思う的な手紙を書いたり、彼女の出身の村を見に行く話。ちょっと、後の川端のフェチ的な部分が見え、みずうみなどほど浄化されてなく、少し気持ち悪い。
夏の靴は、感化院に来てる(最後にわかる)女の子が、馬車のただ乗りをしようとして、それを最初は阻止しようとする馬車屋との丁々発止の闘い。うんざりして、もう乗せようとすると、それを返って、哀れみの様に受け取り嫌がり出す女の子。
数ページの作品で、タイトルの意味など、色々含むところはあるけれど、あまり爽快な気分になるようなその内容ではない。
有難うは、セリフとしては「ありがとう」しかない、礼儀正しいバスの運転手と、そのバスに乗り合わせた娘を都会へ売りに行く母親の親子の話。所謂、ハッピーエンドなのだが、何も問題は解決されておらず、先送りされただけのような読みもできる。ありがとうが発する言葉の殆どである人も、怒る時があり、その影響は大きいといったことか。それとも、善人が運をもたらし、他人にも幸運をもたらすという冒頭の母親の発言に近いものがテーマだろうか。
処女の祈りは、集落の墓地から石が転げ落ちるのを見て、厄払い的に、処女を集めて笑わせるというちょっと気持ち悪い話。
伊豆の帰りは、後の伊豆の思い出に書いているが、それに近い元日記があり、川端との婚約を解消した最初の恋人を思い出させる(しかも幸せに生きていたらこうなっただろうという美化した姿)女性が旦那らしき人といるのを電車で目撃するという話。こっちは、先方の幸せそうなのを喜んでいるのに、目をそらしているらしき態度に、段々と悲しくなるという話。最初は、旅好きな川端さんらしく、電車に乗ると、その地での淡い恋は泡沫の様に、電車にのっていくうちに忘れていくというスタート。それから、忘れられない女の話になり、その人?との会合を経て、それを忘れるために前の地、伊豆の仲居の女の子を思い出そうとするが、過去の人の面影が強く、思い出せないというような話。
伊豆の思い出は、エッセイで、病気療養に来ていた梶井基次郎の話が多い。その他に、印象的だったのは2文に分けて引用した、伊豆の踊子に対する自己分析。伊豆の踊子一家とのその後の文通の様子や、踊子姉夫婦が病気に悩んでいたことを「伊豆の踊子」に書くべきだったかを未だに逡巡していて、かつそれをここに告白すべきかをも迷っていることなど、「伊豆の踊子」の背景もしれるものとなっている。
雪国の方が好きなので、雪国のこういった本もあれば良かったのにと思った。続きを読む投稿日:2023.05.23
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