害虫の誕生 ――虫からみた日本史
瀬戸口明久(著)
/ちくま新書
作品情報
江戸時代、虫は自然発生するものだと考えられていた。そのため害虫による農業への被害はたたりとされ、それを防ぐ方法は田圃にお札を立てるという神頼みだけだった。当時はまだ、いわゆる“害虫”は存在していなかったのだ。しかし、明治、大正、昭和と近代化の過程で、“害虫”は次第に人々の手による排除の対象となっていく。日本において“害虫”がいかにして誕生したかを、科学と社会の両面から考察し、人間と自然の関係を問いなおす手がかりとなる一冊。
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商品情報
- シリーズ
- 害虫の誕生 ――虫からみた日本史
- 著者
- 瀬戸口明久
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 生物・バイオテクノロジー
- 出版社
- 筑摩書房
- 掲載誌・レーベル
- ちくま新書
- 書籍発売日
- 2009.07.10
- Reader Store発売日
- 2014.12.23
- ファイルサイズ
- 7.6MB
- ページ数
- 217ページ
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この作品のレビュー
平均 3.6 (12件のレビュー)
-
ニーチェの『悲劇の誕生』、フーコーの『監獄の誕生』、平朝彦の『日本列島の誕生』と「誕生モノ」で感銘を受けた名著は多いが、この『害虫の誕生』も名著である。
現代に生きる私たちは、パソコンやテレビなどの現…代生活の必需品に対しては、それなりの経緯を知っているが、生活の場から消え去ったものにたいしての「誕生」の経緯を知らない。
私は、よく変人扱いされるが、一般人がもつゴキブリ、ハエや蚊(ひどい場合には、昆虫全般)に対する嫌悪感にはまったく同感できず、常々、なぜこんなにこの人たちは、昆虫を怖がるのだろうと感じていた。
その嫌悪感の由来が、害虫の誕生とともに伝承された習慣であるという認識の正しさをこの書物は教えてくれた。
そもそもマラリアのような伝染病を広める生物に嫌悪感をもつというのはわかる。しかし、順序だてて考えると、ハエがマラリアを伝染するという事実を知る前には日本人も西洋人もハエに愛着を感じていた。すなわち、害虫という言葉や思想が形成されることによって生まれた嫌悪感なのである。
農業でも虫追いの行事は、虫に対する悪意ではなく、自然現象への「祈り」をふくみ、嫌悪ではなく、諦めから生まれた祈りなのである。虫追いは、虫を駆逐する作法ではない。
殺虫剤というのは、正解でも正義でもなく、科学知識が生んだ思想の一つなのだ。
そこにはたくさんの矛盾がある。たとえば、害虫の大量発生に対して現代人の対処法は、除去するという方法をとる。
科学知識が表面的な「悪」をあぶり出すのだが、まず、なぜその害虫が大量発生する土壌が生まれたのか、また、必然的に大量発生したものを「殺虫剤」で除去することによって生まれる弊害はないのか。という思想は殺虫剤の思想を越えた思想になることができる。
現在の学問の志向は、害虫を排除するという方向を向いていない。
「害虫」という概念を作り出した科学は、「害虫」を害虫であるという理由で共生の世界から排除したりしない。これからの科学を予見するという意味では、「誕生もの」の名著にふさわしい書物である。
有吉佐和子の『複合汚染』で指摘されている毒ガスと農薬、火薬と肥料のつながりを越えるような思想が本書では見て取れる。
昆虫学の応用範囲はこれからまだまだ広がるのだと再認識した。続きを読む投稿日:2011.12.04
定住型農耕が始まって害虫という認識が誕生した。
近世まで虫の駆除には殺傷感覚が存在していた。そのため宗教的な行事に頼る。
ゴキブリはコガネムシと言われ、金持ちのところにしかいない虫で、殺さないように…していた。
松方正義は、虫のにわかに生じたるにあらず、その実人の虫を発見したるのみ
ということを述べている。
ハエが汚いというイメージは、コレラの媒介を抑えるという目的から、国、世界でのキャンペーンによってつけられる。当時はハエを捕ることに賞金が設けられた。そのため、盗難も行われた。続きを読む投稿日:2020.08.29
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