この作品のレビュー
平均 2.8 (16件のレビュー)
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マンガに対する規制とそれに対抗する動きを紹介する一冊。前半で昨今の状況、後半で戦後以降のマンガ規制に関する歴史を紹介している。
[マンガ規制反対派の<弱さ>を示す一冊]
読んでいてとにかく不思議でな…らないのは「人を楽しませるのが商売の漫画家がそのおもしろさを保つために規制と戦う。こんな面白い話をなぜここまでつまらなく紹介できるのか?」ということ。
マンガはバトルが命、という部分があります(少年向けは特に)。この本はベースに『バトル』があるにも関わらず、その命を失ってしまっている。
正直なところ、この本よりももっと「マンガへの規制との戦い」を描いている本はあると思うのです。例えば「コミックマスターJ」という本があって、そこでは『非実在のマンガアシスタント』が活躍する中で『マンガを規制しようとする人たち』とも戦う。その過程の中で「まるでマンガキャラ並みに滑稽なマンガ規制派たち」の姿も描かれる。
別に面白くなければ本じゃない、というわけではない。しかし、ある意味で「面白い」題材を面白く書けていない、というのは良い悪いは別として不思議な現象だと思う。
[マンガ規制賛成派の<強さ>を示す一冊]
この本で強く感じたのは『非実在青少年』という言葉が持つ無限の可能性。
物語で書かれた『非実在青少年』の受難が、現実に影響し「実在の青少年」に不利益を与えるのではないか?という、そんな考え方。
しかし、この『非実在○○』という概念は非常に独創的。
例えば、絵を描くのが好きで絵に貼るトーンの種類のことで頭がいっぱいの「実在する青少年」は、自身の属する学級では「存在感のない子」だったかもしれない。でも、そんな彼・彼女が書いた『非実在青少年』の物語はもしかすると「実在の青少年」に影響を及ぼし、ついには政府や各種団体をも動かした(横やり、という形ではあるがw)。
例えば、とあるサッカー漫画に出てきた『非実在サッカー少年・大空翼』の物語は、国境を越えて「実在のサッカー少年」に影響を与え、そんなサッカー少年の一部は今開催中のW杯サッカー大会にも出場している、と聞く。
「だからこそ、『非実在青少年』の活動を制限するべきだ」という考えも分かるし、「だからこそ、『非実在青少年』の活動を規制することは「実在の青少年」を縛るのと同じだ」という考えも分かる。本来、どちらが正しい、と白黒付けるような問題でもないような印象は受ける。
ただ、そんな万能の言葉『非実在青少年』という言葉を作り出したのは表現を規制しようとしていた側である、という皮肉な現実には目を向けるべきだと思う。
[総じて言えば]
「事実の列挙」のような記述が多くあり、「正しい一冊」ではあるのですが「読むことを推奨したい」とは思わせない一冊。
ただ、後半の「マンガ規制に関する歴史」は比較的よくまとまっており、一定の資料的価値はあるのではないか、と考える。続きを読む投稿日:2014.06.22
いわゆる「非実在青少年」で話題になった東京都青少年健全育成条例にまつわる解説。この、「〇〇はなぜ△△なのか」というタイトルの付け方は最近の流行に沿ったのかもしれないが、その質問の答えが示されているわ…けではない。むしろ副題にあるように、「マンガはいかに規制されてきたか」と言うべき内容だ。
著者は規制反対の立場であるため完全に公正中立な内容とは言えないが、事実の提示と著者の意見は一応区別できる記述にはなっている。従って、この問題について考察するための資料として使える本だと思われる。
条例の内容や推進派の主張について思うところは多々あるがここには書かない。彼らが規制によって具体的に何を実現しようとしているのかが不明なので、できればそれを述べた本でも読んでみたいところだが、そういう本は見当たらない。多分、漠然とした嫌悪感以上の理由はないのだろう。
本書の初版発行からちょうど1ヶ月後に都議会は条例改正を可決した。施行は今年7月からだが、石原都知事の人気はその前に切れ、選挙が実施される。石原氏が出馬するかどうか現時点では不明。やれやれだぜ。続きを読む投稿日:2017.06.18
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