三陸物語 被災地で生きる人びとの記録
萩尾信也(著)
/毎日新聞出版
作品情報
廃墟と化した三陸海岸では、累々たる死の傍らで、復興に向けた暮らしが始まった。被災者の断ち切られた記憶を掘り起こし、震災後の生を言葉に刻む、未来に向けての記録。
津波に襲われた町で被災者一人ひとりが経験したこと。助け合って生きる絆。死のかたわらで営まれるいのちの輝きを伝える、未来のための記録。
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この作品のレビュー
平均 4.0 (4件のレビュー)
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(2011.12.01読了)(2011.11.24借入)
【東日本大震災関連・その39】
東日本大震災のルポです。「毎日新聞」に2011年5月2日~9月1日、連載したものがもとになっています。取材先は…、岩手県釜石市が大部分で、一部、陸前高田市や大船渡市が含まれています。釜石から車で1時間前後南下すると大船渡や陸前高田に行くことができます。
一人ひとりの人物に取材してまとめています。震災の被災者は、一人ひとりがあの日からの物語を持っています。読んでいると、活字が涙でゆがんできますが、読み進まずにはおれません。もう何冊も読んだのに、何冊読んでも悲しみは変わりません。
早目に避難して助かった人。津波に追いかけられながらかろうじて助かった人。津波から逃げ切れずのみ込まれたけれど、何とか生き延びた人。眼の見えない被災者。耳の聞こえない被災者。できるだけいろんな人たちを取材し、まとめています。
目次は以下の通りです。
故郷・釜石から
澤田幸三さん・長距離トラック運転手
菊池忠彦さん・釜石の漁師
菊池玲奈さん・岩手県立大槌高校三年
堀切友哉さん・遠野市の消防士
新田貢さん・家族三人を失った父親
吉田寛さん・電器店の二代目
藤原正さん・全盲の鍼灸師
中村亮さん、三三子さん・視覚障害の兄妹
手話サークル「橋」・ろうあ者は私たちだけじゃない
吉田千壽子さん・いつ死んでもいいように、毎日を悔いなく生きたいの
岩間郁子さん・私は言葉を大切に生きようと思いました
伊藤艶子さん・釜石最後の芸者
●一気に語る(31頁)
被災地を回り、腰をおろして話しこむと、多くの人々が津波の日の出来事をまるで映写機でも回すように一気に語った。不条理に向き合ったときの、心の表出の仕方だった。
●下半身丸出し(50頁)
丸太を胸に抱くようにして平泳ぎで橋脚を離れた。流れに抗うように必死に100メートルほど泳いで、堤防にたどりついた。よじ登ろうとしたが、体が重い。ジャンパーが水をためて膨らんでいた。ファスナーを開けて水を出し、岸に上がると下半身が丸出しになっていた。知らぬ間にズボンやパンツが激流にさらわれていたのだ。体は傷やあざだらけ。特に右太ももの傷はパックリと開いて、血がにじんでいる。
●遺体収容・陸前高田市(96頁)
居合わせた17人ほどの団員で遺体収容を始めたのは3月14日午後。倒壊家屋や電柱や車が立ちはだかり、すぐに立ち往生した。
最初の一体を運ぶのに8人がかりで1時間半かかった。二体収容したら夕刻、睡眠不足と空腹でへたり込んだ。長靴も軍手も足りず、孤立無援の作業だった。15日過ぎに重機も入って本格的な作業が始まった。同級生や知人の顔を見つけ、幾度も涙があふれ出た。
●津波の時(120頁)
「避難しよう」と車で迎えに来た娘と孫の声に、二階から顔を出したおばあちゃん。その眼前で津波が車を飲み込み、自分も家ごと流され、気がついたらがれきの下だったと吐き出すように語った。
津波で流れる家の二階で手を振る人の姿が脳裏にこびりついたおじいさんもいた。「あれは、助けてという意味なのか、お別れのさよならなのか」と自問していた。津波から逃げようとした中年の女性は、年老いた男女に「助けて」としがみつかれた。濁流が間近に迫る。「私、ふりほどいて走ったんです。後ろを見たら、二人はもういなかった。手の感触が腕に残っています」。
●情報障害(135頁)
掲示板に張られた公報や告知は、誰かが内容を教えてくれないと分からない。視覚や聴覚に障害を抱える人は「情報障害者」と呼ばれるが、その実態にまで思いが及ぶ人はそういない。
●障害者向け避難所(137頁)
1995年の阪神・淡路大震災の教訓から、障害者を集中避難させ、個々の障害に配慮したサポートをする福祉避難所の必要性が指摘されてきた。その結果、障害者向けの避難所を指定した自治体もあったが、釜石を含めて指定に至らぬ自治体も多かった。
☆関連図書(既読)
・石巻市
「ふたたび、ここから-東日本大震災・石巻の人たちの50日間-」池上正樹著、ポプラ社、2011.06.06
「石巻赤十字病院の100日間」由井りょう子著、小学館、2011.10.05
「奇跡の災害ボランティア「石巻モデル」」中原一歩著、朝日新書、2011.10.30
・大船渡市・陸前高田市
「罹災の光景-三陸住民震災日誌-」野里征彦著、本の泉社、2011.06.30
「3・11東日本大震災奇跡の生還」上部一馬著、コスモトゥーワン、2011.07.01
「被災地の本当の話をしよう」戸羽太著、ワニブックスPLUS新書、2011.08.25
「生きる。-東日本大震災-」工藤幸男著、日本文芸社、2011.09.20
・釜石市
「遺体-震災、津波の果てに-」石井光太著、新潮社、2011.10.25
(2011年12月6日・記)続きを読む投稿日:2011.12.06
☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB07180954投稿日:2021.02.24
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