上意討ち
池波正太郎(著)
/新潮社
この作品のレビュー
平均 3.4 (10件のレビュー)
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土方歳三や永倉新八を扱った篇もあるが、多くは、室町から江戸に生きた中で、きっといたであろうような、名もない武士、町人を素材に、その哀歓を。
投稿日:2015.10.16
「池波正太郎」の短篇時代小説集『上意討ち』を読みました。
ここのところ10冊連続で「池波正太郎」作品です。
-----story-------------
殿様の尻拭いのために仇討ちを命じられ、ど…うしても相手を討つ気になれない武士の心情を描いた表題作をはじめ、江戸家老の馬鹿息子のいたずらが招いた悲劇(『刃傷』)、愚かな領主の死後、藩を守るべく奔走する江戸留守居役の苦労話(『疼痛二百両』)など、身分社会ならではの葛藤を描いた傑作短編集。
剣豪「塚原卜伝」や「近藤勇」、「土方歳三」など新選組を描いた佳篇をも収録。
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1971年(昭和46年)から1978年(昭和53年)に刊行された短篇集の中から11篇の短篇を選んで再編集した作品です。
■激情
■上意討ち
■恋文
■刃傷
■雨の杖つき坂
■卜伝最後の旅
■剣友渡辺のぼり("のぼり"は"日"に"舛")
■色
■龍尾の剣
■疼痛二百両
■晩春の夕暮れに
■解説 佐藤隆介
奥御殿に奉公している中老の「お喜和」が、六十七万石の太守の跡継ぎに嫁ぐことになった側妾の娘「信子」のことが口惜しくてならない奥方から、明後日の宴席で「信子」の食膳に毒を盛ること命じられる『激情』、
上意により「田中源四郎」を探し出して討つことを命ぜられた「森十兵衛」だったが、このことは殿さま自身が無理を仕掛けたところから発展したことから、「十兵衛」は「源四郎」を斬りたいと思っておらず、何とか出会いたくないものだと思っていた… しかし、不思議と「源四郎」と出会ってしまう、そして、五度目の出会いが巡ってくる『上意討ち』、
音吉を妬む「平次郎」が、「新七」をつかって「おその」から「音吉」への偽の恋文を届けさせ、「音吉」は「おその」との約束の場所に行くが、「おその」は現れない… 軽いいたずらのつもりだったが、途方に暮れている様子を見かねた「新七」が声をかけると、「音吉」は店の金を持ったまま逃げてきたので、帰るにも帰れなくなっており、「新七」は「音吉」が大金を懐にしているのを知り、強欲から「音吉」を殺して逃げてしまう『恋文』、
「千代」に「辻又五郎」からの恋文が届き、「千代」は「辻又五郎」からの恋文に書かれている通りに、約束の場所に向かうが、そこで「千代」を嘲る笑い声を聞く… その恋文は、江戸家老の長男「田中主馬」のいたずらであることを知った「千代」が、ある決断をする『刃傷』、
「源七」がある旅の博奕打ちの姿を見て、もしやと思ったのはさすがの勘働きであった… 「源七」と「彦太郎」は4年前に「竹原の喜助」の家に殴り込みをかけており、その時の報復として、「野川の弥市」と「三ツ堀の岩吉」、そして、旅の博奕打ちは「橋羽の万次郎」という助っ人が二人を追っていた。「源七」は、右腕の大きな痣から「万次郎」の素性に気付き、独りで勝負を挑む『雨の杖つき坂』、
再び甲斐の「武田信玄」を訪れた73歳の「塚原卜伝」は「梶原長門」という剣客と立合うことになるが勝敗は一瞬のうちに決した… この後、しばらく甲斐にいて、川中島での「上杉謙信」との対決を見届けた後、「卜伝」は京に向けて旅立ち、息子のように愛する「足利義輝」と再会する『卜伝最後の旅』、
「渡辺のぼり」は天然理心流の「近藤勇」に頼まれると、近藤道場に行き試合をすることがしばしばという間柄であったが、その後、「近藤」は京へ向かうことになり、「渡辺のぼり」も主家の九州・大村藩に戻ることになる… そして、「渡辺のぼり」は「桂小五郎」、「坂本竜馬」、「中岡慎太郎」らと交わり始めるが「渡辺のぼり」が京に出ると新選組から狙われる立場となる。「近藤勇」と「渡辺のぼり」の交流を描いた『剣友渡辺のぼり("のぼり"は"日"に"舛")』、
「土方歳三」は農家に生まれ、商家で奉公したこともあったが、多摩に戻り剣術に没頭するようになった… やがて、「近藤勇」らと京へ向かい、京都守護職の庇護のもと新選組となり、市中取締りに活躍していたが「歳三」が一人で外出し襲われたとき「お房」とう女性と出会う。「歳三」と「お房」邂逅を描いた『色』、
「永倉新八」は初対面から「藤堂平助」が気に入らなかった… 「新八」は幼いころから悪戯が過ぎ、親を困らせていたが、その「新八」がのめり込んだのは剣術で、それをたよりに生きてきており、「近藤勇」の紹介により「新八」は「藤堂平助」と出会い、やがて「近藤勇」を中心としたグループは新選組になっていく。「永倉新八」の運命を描いた『龍尾の剣』、
昨年11月に読んだ『新装版 幕末新選組』の元ネタですかね。
出来の悪い殿さまが突然死んでしまい、跡継ぎはまだ4歳の幼児であることから、この若殿が跡継ぎになれるかどうかが、藩存亡を賭けた事件となっており、金を使って方々に働きかけをしなければならないが、藩には資金がなく、「大原宗兵衛秀望」は頭を悩ましていた… そんな中、旧友の「高木彦四郎」から誘いがあり、久々に会ってみると、かつて二人と関係のあった女の娘が生きており、二人のどちらかが父親の可能性があるという。「大原宗兵衛秀望」が、藩の存亡と資金難、父親問題に頭を悩ますことになる『疼痛二百両』、
「筒井土岐守忠親」が家来たちとはぐれ、農家の前を歩いていたとき、百姓女の裸体が目につき、色情が抑えきれず百姓女に挑みかかってしまう… このことが渡り中間どもの耳に入り、間男大名だの手ごめ大名だのと揶揄されてしまったうえに、このことが将軍の耳にも入ってしまい、国替えとなってしまう。数年後に、その百姓女と再会した「筒井土岐守忠親」は詫びるつもりだったが、再び血のいろがのぼってきてしまう『晩春の夕暮れに』、
テーマが多岐にわたり、バラエティに富む作品群だったし、現在に通ずるテーマの作品もあり、面白くてサクサク読めましたね、、、
印象に残ったのは、『激情』、『上意討ち』、『雨の杖つき坂』の3作品かな… 類似のテーマを扱っていましたが、『恋文』、『刃傷』も面白かったですね。続きを読む投稿日:2023.05.01
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