この作品のレビュー
平均 4.4 (6件のレビュー)
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海軍ものに手を出さず、本書や「南蛮阿房列車」に耽溺する読者というのは、阿川氏ではなく宮脇俊三氏のファンと相場が決まっています。まあ、かく言う自分もその通りなのですが。
鉄道紀行の大家と言えば、初代が…内田百閒、跡を継いだのは阿川弘之、そして三代目は宮脇俊三。「こういう場合、二代目は大したことがない」などと仰ったのは阿川氏ご本人ですが、いやいやとんでもない!終戦直後から高度成長期に片足を突っ込みかけた頃の鉄道が、いや日本社会の姿が生き生きと描きだされています。
新幹線も高速バス(いや、それ以前に東名自体が存在しない)も無い時代のエッセイ、今となってはなんとも時代がかっていますが、特急機関士の働きぶりなどは現代に通じる要素が多々あって大変興味深かったです。
そう言えば子供の頃って、地元の商店街でも盛んにスピーカーから宣伝放送が流れていましたよねえ。「かばんのマルジョー」、いつ頃から耳にしなくなったのだろう。続きを読む投稿日:2017.04.02
面白かった。
本書のように純文学系の作家が、筆休め?なのか、本気なのかはわからないが、本業の創作から離れてのびのびと「好きなもの」を語る。こういう本は本当に楽しい。
言わずと知れた『阿房列車』も、他の…随筆も大好きだが、実は、百閒先生の小説作品などはわずかしか読んでいないのに対して、阿川さんは、まず他の小説作品をそれなりに読んできたので、新鮮味が強い。
鉄道ではないけど、(そう言っていいのかわからないが、)福永武彦さん・奥泉光さんのものする推理小説も同じ方向性と言えないだろうか。どちらも大好きなのだが。
阿川さんの本書は、百閒先生と比較すると、執筆当時の海外の鉄道事情にも触れていたりする点と、どちらかというと鉄道の運行や車体そのものへの興味から描かれているが、『阿房列車』はもっと紀行文的側面もあると思う。何れにしても、根っからの鉄道マニアというわけではないところが良いと思う。でも普通の人よりも興味は強いのだ。その程度に親近感。そして、阿川さんも百閒先生も、教養と文学的素養のある人たちだが、変なこだわり、頑固さがあって、本書にもそれは垣間見えた。
他の方のレビューにあった、宮脇俊三さん、獅子文六もぜひ読んでみたい。続きを読む投稿日:2020.10.19
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