冤罪の軌跡―弘前大学教授夫人殺害事件―
井上安正(著)
/新潮新書
作品情報
警察のストーリー通りの調書と、疑惑の証拠鑑定によって、二五歳の青年は殺人犯にされてしまった。判決が確定し、服役も終えた後、真犯人が名乗り出てきたことで、時計の針は再び動き始めたのだが……司法の不条理に青年と家族はどのように立ち向かったのか。過ちはいつまで繰り返されるのか。戦後日本の冤罪事件の原点、弘前大学教授夫人殺害事件の顛末を新資料を盛り込んで描き出す、迫真のノンフィクション。
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商品情報
- シリーズ
- 冤罪の軌跡―弘前大学教授夫人殺害事件―
- 著者
- 井上安正
- 出版社
- 新潮社
- 掲載誌・レーベル
- 新潮新書
- 書籍発売日
- 2011.01.15
- Reader Store発売日
- 2011.07.22
- ファイルサイズ
- 0.8MB
- ページ数
- 207ページ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (5件のレビュー)
-
冤罪は人の人生を狂わせてしまう。日本の犯人を検挙する警察力は世界でも高いという話を昔聞いたことがある。当時は安心で安全な生活はそうした警察官の努力でできているんだと感謝の気持ちだった事、日本人としての…誇りの様なものも感じたと覚えている。私は大学は法学部へ進んだ。とりわけ勉強熱心な優秀な生徒では無かったにしろ、特に刑法の授業は面白かった。沢山の判例を見て、その向こう側にある様々な犯罪を無邪気に想像したりしていたものだが、そうした法律が人々に自制や反省をもたらしているんだと、法学部生であることに誇りを感じていた。
だが現実の蓋を開ければ、我が国では多くの冤罪事件がある。罪のない人々が罪を着せられ長きにわたり囚われていた事で、大きく報道されたり書籍にもなっている。そうしたものを読むたびに、世の中の真実が自分の信じてきた警察や法律だけで成り立たないもどかしさ悔しさの様な感情が浮かび上がってくる。仕方ないと諦めて仕舞えばあっさり忘れる事もできるのだろうが、やはり法律を学んだ記憶がそれを許さないのか、そう簡単に記憶の奥底から葬り去る様に私の頭は出来ていないらしい。
本書は弘前で発生した殺人の冤罪を扱うものである。逮捕その後刑務所に収監されるまでの経緯、杜撰な捜査と取り調べ、権威に溺れた法医学者など読んでいて苦しくなる様な経緯が綴られていくが最初から冤罪だとわかっている分、怒りの感情も加わって読み進める事になる。
最後まで自分が無実だという何ものにも変えられない信念、それを信じ支える家族の愛情、ただ真実のために闘う弁護団、そして罪を犯しながらも最後には事実を語った真犯人の勇気、それら登場人物の魂が文面から伝わってくる様だ。服役を終え、最後の真実である無実を勝ち取るまでの後半部分は目頭を熱くする。そして、無罪判決。
日本の安全で秩序ある社会は警察官や弁護士、裁判官など多くの国民の血と汗と涙が成り立たせている事は間違いない。現代の科学も医学もそこに大きく貢献しており、今後もきっと恐らくは変わらないだろう。その中に不幸にして生まれてしまった冤罪が、当人と関係者の強い信念のもとで、新たな真実に繋がっていく。今後の冤罪発生の抑止はこうした人々の努力の上に成り立つのも、また間違いない。真実は一つ、諦めてはいけない事を学んだ。続きを読む投稿日:2023.10.20
ルポとして非常によく書かれた新書だった。事実は小説よりもってことを実感できる作品で、司法の問題点を赤裸々に綴った、渾身の内容だと思う。冤罪と言えば、『それでも僕はやってない』って映画が頭に浮かぶけど、…本当にやるせない気分でいっぱいになる。ただ、紙面の都合もあると思うけど、被害者の目線という部分がほとんど無いのが気にはなりました。続きを読む
投稿日:2013.05.26
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