世界に勝てる! 日本発の科学技術
志村幸雄(著)
/PHPサイエンス・ワールド新書
作品情報
「ジャパン・アズ・ナンバースリー」(米「ウォールストリート・ジャーナル」紙)、「飛躍する竜(中国)、沈む太陽(日本)」(英「タイムズ」紙)といった海外論調が示すように、日本の地位の低下が著しい。では、逆風に揺らぐ「ものづくり大国」をいかに立て直すか? 従来路線の強化や事業の再編成が指摘されるが、それだけでは新興国にも勝てない!残された解決策は、いまや他国の追随を許さない「サイエンス型革新技術の創出」である。本書では、アンドロイドロボット、スピントロニクス、ナノカーボン、高温超電導、光触媒など、日本が世界に誇る最新成果を取材し、明日への展望を示す。江崎玲於奈氏(ノーベル物理学賞受賞者)推薦。
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商品情報
- シリーズ
- 世界に勝てる! 日本発の科学技術
- 著者
- 志村幸雄
- ジャンル
- サイエンス・テクノロジー - 数学・物理学・化学
- 出版社
- PHP研究所
- 掲載誌・レーベル
- PHPサイエンス・ワールド新書
- 書籍発売日
- 2011.02.01
- Reader Store発売日
- 2011.05.20
- ファイルサイズ
- 1.8MB
- ページ数
- 280ページ
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この作品のレビュー
平均 1.7 (3件のレビュー)
-
一時期は日本の技術の空洞化が進むと騒がれていましたが、この本を読む限り、世界に通用する「日本初の科学技術」が多く開発され続けているようです。最近、日本人のノーベル賞受賞者が増えていますが、明治から終戦…までにかけてノーベル賞級の発明をしていた多くの日本人がいた(p58)のは、日本の実力を示す嬉しい事実だと思いました。
以下は気になったポイントです。
・原理的な発見から工業的応用までの時間的開きは、写真技術112年、蒸気機関85年、電話56年、ラジオ35年、レーダー15年と時代を追うごとに短くなった、トランジスタやコンピュータ、レーザは数年以内(p26)
・室温で連続発振する半導体レーザーが開発されたのは1970年だが、当時、このレーザーを光源とした光通信が実用化されると本気で考えた人はいなかった(p35)
・今日では弱体といわれる「川上」の科学研究が、明治期後半から昭和初期にかけては、欧米諸国して伍して善戦していた(p58)
・戦争が終結すると、川上研究の弱体化により、新技術開発力の低下となったので、それを補完するために探られた手段が、先進工業国(米国)からの技術導入であった(p63)
・理化学研究所でなされた発明や発見の多くが、後に理研グループに参画することになる新規企業群で事業化されて、それによってもたらされた利益が研究資金に還元される仕組みが完成した(p72)
・コンピュータが人間と同等の認識能力をもつには、人間と同じように、一定の環境の中で動き回り、モノに触れる体が必要になる(p95)
・人間の脳は1ワットしかエネルギーを消費しないが、脳に劣るスパコンは5万ワットも消費する、この差の答えは、ノイズ(ランダムな信号や動き)の利用である(p105)
・消化器官系を中心とする内胚葉諸器官の充足である「農業」、次いで筋肉など中胚葉諸器官の「工業」、そして最後が脳脊椎神経系など外胚葉諸器官の「情報産業」の時代になる(p110)
・脳に電極を入れないで人間の脳活動を検出する方法として、頭にかぶるキャップに配置した電極を頭皮ないし毛髪の上から接触する方法がある(p114)
・多くの物理現象は、従来ニュートン力学とマクスウェル電磁気学によって説明されてきたが、これらの理論に代わる新しい物理学の法則が量子力学である(p125)
・パラダイムの転換を促すような技術革新期には、軋轢や反発が生じてきた、こんぴょうーた主記憶装置における磁気コアメモリーから半導体メモリーへの転換、通信ケーブルの金属導線から光ファイバー(p162)
・中村氏の青色LEDについて、1)ツーフロー方式製膜装置の完成、2)窒化ガリウム半導体のP型化に、通常焼きなましの熱処理技術を適用したことが、成果である(p175)
・照明革命は、白熱電球、蛍光灯に続いて、青色LEDをベースとした白色LEDが第三の照明革命が現在進んでいる(p178)
・超電導物質が認知される条件として、1)電気抵抗ゼロ、2)マイスナー効果、3)安定性、4)再現性、である(p201)
・住友電工は、超電導ケーブルの技術を完成させ(電流密度を従来銅線の200倍)、無人運転で電力を供給することに成功している(p211)
・従来のアモルファス金属は、溶けた金属を超急冷という「力ずく方法」でつくっていたが、金属ガラスの場合は、ゆっくり冷やしても結晶化することなくアモルファスな金属が得られる(p222)
・太陽光によって二酸化炭素と水が反応して、でんぷんと酸素ができる反応において、単に混ぜたものに光を当てても反応は起きないが、葉緑素が太陽光を吸収することで反応が進む、これを光触媒という(p229)
・酸化チタンをコーディングしたタイルに光(1000ルックス)を1時間当てると大腸菌などが99%以上死滅することがわかっている(p236)
・欧米では第一次大戦までは電気自動車がかなり普及していた、1903年時点で40社に及ぶ電気自動車メーカがあり、4万台が走行していた、自動車レースではガソリン車も寄せ付けなかった(p245)
2011/4/8作成続きを読む投稿日:2011.07.17
本書では、日本の「ものづくり神話が揺らいでいる」と語っているが、本書を読んでも、その主張の全体像が良く理解できないし、具体性も感じられないと思った。科学技術も産業技術として生かされなければ、なかなか…一般の目に見えるものとはならないのだと思うが、その産業技術としての視点もあまり展開されていないし、国家戦略とも関連すると思われるが、その視点も見えない。
本書では、「コモディー(汎用品)化からの脱却であり、パラダイムの転換を促すような革新的な製品の創出」をうたいあげているが、そんなものがおいそれとできれば苦労は無いし、そもそも科学技術も産業技術も、それぞれの国の歴史や文化によって育てられ発展してきた以上、その枠と規制によって成立したものであると考えられる。日本の大量生産による工業製品がいまさら他国に追い上げられているからといって、そう簡単にパラダイム転換ができるものとは思えないし、もしパラダイム転換を本気で主張するならば、相当に深く鋭い考察が必要であると思われるが、本書にはみあたらない。
しかし、「21世紀を担う日本発の科学技術」における「ロボット」や「ナノカーボン」、「高温超伝導」の紹介には夢を感じた。やはり、科学技術には人類の夢を見たいものだと思う。
本書は技術の一面しか見えていないように思えたし、本書の表題の「世界に勝てる!」とは、あまりにも狭い観念ではないだろうか?「科学技術には国境は無い」ぐらいのことは言ってもらいたいものである。ちょっと残念な本である。続きを読む投稿日:2011.11.09
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