Maxwellさんのレビュー
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このユーザーのレビュー
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有頂天家族
森見登美彦 / 幻冬舎文庫
リズミカルで読みやすい文章
31
話の内容もさることながら.
文章がリズミカルでテンポ良くすいすい読めました.
アニメ化されてテレビで放送されているので(2013年9月現在)そちらも観ていますが,ナレーションの端々が耳に残っています.…
ちょっと日本語ってきれいだな,って思ってしまうほど.
「声に出して読みたい日本語」と言えるのではないでしょうか.
狸が人に化けてふつうに居酒屋で呑んでいたり,天狗が空を飛んでいたりしますが,
なぜかまったく違和感を感じません(笑).
人に化けた狸と人間が同じ鍋を囲んだり,狸が天狗に弟子入りしていたりと,
3つの種族が入り乱れてふつうに人間っぽく生活しています.
そんな中で私のいちばんのお気に入りは淀川先生(人間,大学教授,50歳くらい?).
「狸はかわゆいな」と言いながら「食べちゃいたいほど好きなのだ」から「狸鍋を喜んで食う」と言ってみたり,
すき焼きの肉を大人げなく取り合ったり,鍋を食べたすぐ後で「腹が減ったね」とおにぎり(自作)を食べてたり.
淀川先生も「かわゆい」なあと思っちゃいました.
続きを読む投稿日:2013.09.25
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青の炎
貴志祐介 / 角川文庫
感動のサスペンス,青春小説
18
読んでいる最中は,主人公の秀一にすっかり感情移入してしまって彼の「犯行」が露見しないかとドキドキし,
読み終えた後は胸がきゅんとして,その後数日はふとした時に本の内容を思い出しては切ない気持ちになって…いました.
私のつたない文章力ではとても表現できませんが,こういうのを「感動した」と言うのだと思います.
こんな本に出会ったのは久しぶりです.
試験の前とか,たくさん仕事がある日の前には読まない方が身のためです.
そうでないと,勉強や仕事に集中できないかもしれません.
続きを読む投稿日:2013.09.28
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週刊ダイヤモンド (2014年4/26号)
ダイヤモンド社 / ダイヤモンド社
落として落として,最後にちょっとだけ持ち上げる
12
「ソニー消滅!!」と過激な副題をつけているだけあって,かなり手厳しくソニーの経営成績と経営陣にダメ出ししています.
(批判の主対象は平井氏が社長に就任した2012年度以降).
最後だけは今後「期待でき…そうな」製品を紹介してちょっと持ち上げていますが.
確かに決算を見る限り主力のエレクトロニクスは赤字続き,業績予想の下方修正続きで,
資産売却で食いつないでいる感があるのは否めません.
ただ,ソニーは「人のやらないことをやる」「それまでにない新しいモノを創り出す」ことで
成長してきた会社だから,その原点に立ち返って成果を出そうとしたらある程度の時間がかかるのは
仕方がないと思います.
確かに批判の中には納得できるものもあります.
ただ,ここ1年くらいの間で出てきたソニー製品を見る限り(個人的には VAIO Duo13 は秀逸だと思います),
またテレビ,雑誌,CESでの基調講演などでの平井氏の発言を見る限り,ちょっと公平な評価ではない気がします.
決算,株価,販売台数のような,明確な数値となって表れるものを主要な着眼点として,
「厳しく評価する」方針でまとめた特集と言えそうです.
続きを読む投稿日:2014.04.22
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週刊ダイヤモンド「ソニー特集」バリュー版 2冊パック(週刊ダイヤモンド特集BOOKS(Vol.7))
後藤直義, 藤田章夫 / ダイヤモンド社
個人的には「ソニーのB面」の方が好き
9
個人的には「ソニーのB面」の方が好き.
ソニーが持つ放送用,業務用機器に関する技術,徹底したサポート体制など,ソニーという言葉から連想される「他とは違う際立った素晴らしさ」を感じられる1冊.
もう一方…の「ヤメソニーに訊け!」は何か浅い.
どこかで聞いたような話を寄せ集めた感が強く,読んでてあまり満足しなかった.
ただ感じ方は人それぞれだと思います.ソニーのB面が星5つ,ヤメソニーに訊け!が星2つで平均すると星3~4.
続きを読む投稿日:2013.11.21
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PlayStation 4ができるまで -日本発売までの367日間 新世代ゲーム機の新たなる戦場
西田宗千佳 / MAGon
「やんちゃさ」は薄れたけれど,やっぱりソニーのDNAを感じさせる
6
PlayStation(初代)の発売から20年近く,ちょっと時代の流れを感じました.
PlayStation3までがハードウェアの性能の高さで他のゲーム機と差別化し,
またゲーム機以上の存在にしよう…としていた(ソニーゲームエンターテイメント
ではなくソニーコンピュータエンタテイメントという社名もその思想の表れらしい)
のに対し,PlayStation4は素直にゲーム機であることを追及しています.
ユーザがゲームを楽しめること,(起動までの待ち時間が長いなどの)ストレスを
感じないこと,ゲーム開発者にとって開発がしやすいこと.またソニーは
PlayStationPlusのような「継続的なサービス」をより大きな収益源に育てていく
つもりのようです.
製品やサービス,ビジネスの両面で,ソニーという会社から連想される
「やんちゃさ」が薄れ,成熟してきた印象を受けました.
それでもソニーという会社のやんちゃなDNAを引き継いでいる側面も感じられます.
その一例がGPGPUです.開発の難易度が高い代わりに巧く使えばPS4の性能を
大きく高めることができます.この「巧く使ってゲーム機の性能を限界まで引き出す」
ような職人芸を開発者に要求するあたり,旧PlayStationシリーズに通じるものを
感じます.
一方,PS4のライバルとされるXBoxOneは安定して動作することに重点が置かれて
いるそうで,これはこれで仕事のツール(Windows, Officeなど)を提供している会社
が採る作戦としてはもっともだと思います.
PS4とXBoxOneのハードウェア構成は似ていても,設計思想や目指す方向性には
会社の特徴が色濃く表れる.こういった「製品の背景」に関する記述もあって興味深く
読めました. 続きを読む投稿日:2014.03.26
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太平洋戦争、七つの謎 官僚と軍隊と日本人
保阪正康 / 角川oneテーマ21
太平洋戦争を始めたのは官僚だった
6
愕然としました.
太平洋戦争は,その終結までの具体的なシナリオもないまま,官僚によって始められてしまった,という本書の記述に.
実際,戦争開始という国家の重大事が,国会の議決もなく始められてしまってい…ます.
そしてシナリオもなく勢いで始められてしまった戦争で,何百万人もの国民の命という高すぎる代償を払うことになりました.
官僚が始めた,と書きましたが,特定の誰か,ではありません.
しいて言うなら,官僚組織,官僚の集合体です.
この状況が,今現在の日本とどこか重なっている気がして背筋が寒くなりました.
膨らみ続ける国の借金,収束しない原発事故...
誰も破局に向かう道を選びたくないのに,誰も制御できない巨大組織の意思のようなものによって破局に至り,
政治的にもっとも弱い立場の一般市民がその代償を払う...
歴史は繰り返す,とも言いますが,そうならないように歴史に学ぶこともできるはずです.
続きを読む投稿日:2013.09.28