流通大変動 現場から見えてくる日本経済
伊藤元重(著)
/NHK出版
作品情報
壮絶な主導権争いは何をもたらすのか
流通業界ではメーカー(上流)、問屋(中流)、小売(下流)の垣根がなくなり、チャネルリーダーのポジション争いが激化している。流通の変化は消費者にどのような影響を及ぼすのか。30年間にわたって流通の現場を歩き、「ウォーキング・エコノミスト」と呼ばれる経済学者が、マクロとミクロ両面の視点から日本経済の先行きを見通す。
[目次]
第1章 流通から見えてくる日本経済
第2章 なぜセブン‐イレブンはミールサービスを始めたのか
第3章 アジアが日本の流通を変えた―ユニクロの成功の秘密を探る
第4章 そうは問屋が卸さない―いま中間流通に何が起きているのか
第5章 情報通信技術で変わる日本の流通
第6章 都市の変容とともに小売業も変わる
第7章 チャネルリーダーの地位を確保せよ
第8章 アジアの需要を日本の内需に
結びにかえて―流通の現場は刺激に満ちている
もっとみる
商品情報
- シリーズ
- 流通大変動 現場から見えてくる日本経済
- 著者
- 伊藤元重
- 出版社
- NHK出版
- 書籍発売日
- 2014.01.10
- Reader Store発売日
- 2014.06.06
- ファイルサイズ
- 1.4MB
- ページ数
- 256ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.9 (14件のレビュー)
-
そうはとんやにおろさない
セブンvsミスド
「コンビニに入って来た客が、必要な商品を探してレジを通るまでの平均時間は四分程度である」消費者から見たコンビニの最大の利点は時間消費の節約だと言うことだ。レジに客が並ぶと新しいレジを…あけると言うのは他の業態の小売店ではなかなか無い。これまで店舗網を拡大して市場を拡大して来たコンビニだがもはや限界で単一店舗の売り上げを落とさないと新規出店が出来ない様になって来ている場所も多い。そこでコンビニは狩猟型から農耕型ビジネスへの転換をはかることになる。POSデーターから客層を分析すれば同じ系列でも品揃えが変わっていく可能性があり、リピート客を大事にすることと、時間消費という点からファストフードはコンビニのライバルになる。伊藤氏は10年以上前のセブンの鈴木会長との対談でミールサービスを熱心に語っていたことが印象に残っているという。ファストフードもそうだが宅配に力を入れ出した原因は社会の高齢化に伴う行動様式の変化があるのではと。70才を増えると700m以上歩くのがいやという人が増える。ワンストップで買い物できるコンビニがさらに宅配に手を伸ばしファストフードからも消費者を奪い固定客化しようとしている。
郊外店の背広はなぜ安いのか
一例だが百貨店で売っている背広が58千円とすると製造原価が16000円、これに対し郊外店では35千円で売り原価を12200円に抑えている。百貨店が23000(40%)、アパレルが19000(33%)のマージンを取るのに対し、郊外店は18000(51%)、メーカー4800(14%)と一見メーカーが利益率を落としている様だがロットサイズが大きければメーカーも充分成り立つ。これを極端に規模を追いかけてやっているのがユニクロなどのSPAでユニクロは東レと組んで単純に安いというよりは独自のブランド価値を作り出している。今や旗艦店の立地は百貨店と変わらない。百貨店はアパレルやブランドに場所を貸し出す不動産業というのが実態に近い。先のコンビニとの対比で言えば百貨店の目指すのは時間を消費させる場所でしかないような。在庫は持たないショールームに特化しそのかわりセミオーダーメードのように高いけれど客の注文を何でも受け付けると。元々がご用聞きが利益の源泉なのだから。そしてお金を使わなくても楽しい場所を目指すのだろう。阪神百貨店のフードコートなんかが良い例だと思うし、宅配もしないそこでしか売っていないお菓子に並ぶ人も多い。百貨店に限らず例えば原宿はそこに行くこと自体が目的の観光地と化し海外からも人気が高い、そしておばあちゃんは巣鴨の地蔵通りへいく。
専門店vsアマゾン
トイザらスに代表されるカテゴリーキラーの最大の競争相手はアマゾンなどのネット販売になるかも知れない。インターネットとロジが組み合わさり流通業自体に変革が起きている。専門店はサプライチェーンの中でチャネルリーダーの立場を獲得した。メーカーが育てたナショナルのお店に対し売り場の発言力の方が強くなったヤマダ電機という変化だが、今後は生産者が直接消費者と結びつきニッチな生産者を束ねるプラットホームとしてのアマゾンや楽天、そしてそれを支えるヤマトなどの物流会社という構図が進むのだろう。宅配の時間指定はもはや当たり前だが、例えば到着予想時刻を知らせるサービスなんか今の技術で出来るだろう。ちょっと外出してる間に配達があってもそれをスマホに飛ばしてもらえば即座に何分後に再配達を依頼ということも出来る様になる。
そうはとんやがおろさない
うまい商売を思いついても肝心の商品を問屋が売ってくれないというのがこのことわざの語源で、昔は問屋が流通の中心にいて商流(金の流れ)、物流(物の流れ)と情報の流れを全て押さえていた。例えば風邪薬の場合大正製薬のパブロンと武田薬品のベンザエースでは小売店のマージンが全く違う。小売店にお勧めの風邪薬を聞くとパブロンやストナなど直販メーカーの商品を勧めるのはその方が小売店の手取りが増えるからだ。アメリカの医薬品問屋は病院に深く入り込み、在庫管理の悪さに眼をつけ管理サービスまで引き受けた。また危険薬品管理について指紋認証の容器を提案し、手術用にはキットをパッケージにして病棟ごとに届ける様にしたのはマーケティングの良い成功例だ。決済サービスもロジもインフラとして整備されたので後は情報をどう扱うかがテーマなんだろう。アマゾンの場合もどこの店が信頼できるか、そして信頼できない店をどうやって排除するか。メーカー側からしても情報の発信がキーになる。宮尾酒造の〆張鶴は年間20億ほど売れていないが利益は9億も稼ぐらしい。他にもブームになった地酒や焼酎なども昔からのつきあいのあるところにしか卸さないという話はいくつもある。続きを読む投稿日:2014.12.14
-
流通研究の権威である伊藤元重氏による、現在の流通業界に関する書。実例を挙げながらわかりやすく流通について現状を説明している。研究書というより、気楽に書いたエッセイという感じである。流通についての第一人…者だけあって、知識、経験が豊富であり面白い。
「書籍をまとめるには、いろいろな準備が必要だ。図書館にこもって関連の文献を調べなくてはいけない。データを整理して、それが語る動きを読み取ることも必要だろう、読者の方が何気なく手に取った本でも、実はその著者の膨大な作業があって初めてその本ができている」p4
「日本の個人が保有する金融資産の6割以上は60歳以上の世帯が保有している」p43
「マクドナルドでは客が注文してから60秒以内に商品を出せるような仕組みを構築しているという。吉野家では、牛丼の注文が来てから商品が出てくるまでに1分というのが目処であるようだ。コンビニのレジでもそうだが、客に無駄な時間を使わせないということが、いかに小売業や外食産業にとって重要であるかがわかる」p58
「(ユニクロの少品種多量戦略)紳士用のヒートテックのソックスが1時間あたり50足売れるとしてみよう。12時間店が開いているとすれば、600足になる。ユニクロの店舗は全国に2000以上あるので、単純計算をすれば1日の総販売数は120万足ということになる。これを30日間続ければ、3600万足ということになる」p67
「(ユニクロに)競合する小売業がユニクロと同じように魅力的で低価格の商品を展開しようとすれば、ユニクロに匹敵するだけのボリュームを実現しなくてはならない。そのための店舗数、ブランド認知、アジアでの有力縫製工場の手配、メーカーからの新製品の調達などが必要となる。そうしたものを他社に先駆けていち早く確立し、規模の利益を確立したユニクロを追撃するのはそう簡単なことではない」p68
「(安い)アジアでの生産メリットを享受するためには、大量のロットを確保することが前提条件となる」p70
「そうは問屋が卸さない(それだけ問屋の力は強かった)」p89
「ローソンではある菓子を、売上げランキングでは上の方ではないが、店に常に置くことを決めたという。それは、その菓子を購入している人の多くが継続的にそれを購入していることがわかったからだ。その菓子が手に入ることを期待して来店した人をがっかりさせるようなことがあれば、来店客を減らすことになりかねない。リピート率というのは販売戦略を考える上で重要な指標であるが、ポイントカードを利用することで簡単にその情報がとれるのだ」p131
「(スマホ、タブレットの業界で)アップルだけが大きな利益を上げているのはどうしてだろうか。その答えを一言でまとめれば「アップルはこの世界でチャネルリーダーのポジションをとったからだ」と言うことができる。価格決定権を握っているのはアップルである」p171
「戦後日本ではずっと、多くの商品でチャネルリーダーはメーカーであった」p172
「(生産者保護のための価格補填政策)一定の価格で買い取ってもらえるということで、生産者は質より量を求めるようになった」p229
「農業者の一部が、農地を手放さないで兼業農家を続けている理由の1つは、農地の転売や貸し出しで利益が出ることを期待しているからだということは専門家から何度も聞かされていた」p242
「円高が進めば、海外から輸入した商品の価格は大幅に安くなるはずである。しかし、現実には国内での価格下落の動きは非常に鈍かった。流通の構造がそれに深く関わっていることは間違いない」p243
「企業が持続的に成長を続けるためには、安売りだけではだめなのである」p246続きを読む投稿日:2018.11.04
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。