東京消滅―介護破綻と地方移住
増田寛也(著)
/中公新書
作品情報
若者の集まる街、東京。そんなイメージは過去のものになるだろう。2015年から25年にかけて、東京圏では75歳以上の高齢者が約175万人増加する。東京圏には医療・介護施設が不足しており、将来、介護施設を奪いあう事態になりかねない。地方の介護人材がさらに東京圏に集中すれば、「地方消滅」に拍車がかかる。東京発の日本の危機を脱するため、地方への移住を含めた解決策を提言する。鎌田實氏らとの対談も収録。
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商品情報
- シリーズ
- 東京消滅―介護破綻と地方移住
- 著者
- 増田寛也
- 出版社
- 中央公論新社
- 掲載誌・レーベル
- 中公新書
- 書籍発売日
- 2015.12.20
- Reader Store発売日
- 2017.04.07
- ファイルサイズ
- 10.3MB
- ページ数
- 208ページ
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この作品のレビュー
平均 3.3 (9件のレビュー)
-
【由来】
・図書館の新書アラート
【ノート】
・昨年、日本中(特に行政関係者)に大きなインパクトを与えた「地方消滅」。その後、「地方消滅ー創生戦略編」と続き、本書は第3弾。中公新書の増田本は、セガー…ルみたく「沈黙」ならぬ「消滅」でシリーズ化するのかと思ってしまうほど「消滅」づくし(笑)。
・東京圏における75歳以上の後期高齢者(≒要介護者)が今後、急増するが、それに対応できるだけの病院、介護施設はない。建設するににも大変なコストがかかる。「現代版姥捨て」との批判があるCCRCだが、「東京のツケを地方にまわすな」という捉え方ではなく、積極的にその組み立てに乗ることによって地域創生のポジティブファクターにすることができるというのが本書の主張。例えば杉並区はコストを負担して南伊豆町に介護施設を作っている。北九州市長も積極的な受け入れ(アクティブシニアだけど)をいち早く宣言した(しかし北九州市は色々と活発だなあ)。早く手を上げて連携すれば、地方サイドとしても医療・介護施設の建設コストを首都圏サイドに負担してもらい、人口も増え、また若い人の仕事も増えますよねという青写真。
・北海道なら北見や帯広が、施設(病床)的には比較的余裕を持って高齢者を受け入れられると分析しているのが興味深い。全国でそういった地域が41紹介されている(もちろん「現在は」ということで)。函館も入っており、新幹線開通と相まって、効果的な連携ができるのではないかと思うが、函館市でそういう議論は進んでいるのだろうか。
・でも、あれですね、中央からきれいな青写真を提示されて、それは、まぁ、よく考えられてて(色んな意味で)結構なんだが、つい警戒して身構えてしまう部分もある。だからと言って反対のための反対をしても不毛なので、地方である僕らの側から、よく考えられた提案ができないものかな。続きを読む投稿日:2018.10.28
このレビューはネタバレを含みます
2015年刊行。
レビューの続きを読む
編著者は東京大学公共政策大学院客員教授。
「地方消滅」で叙述された東京ないし首都圏の問題に焦点当てをした書。ゆえに特段の新奇はない。
が、
① 東京周辺(都・神奈川県・千葉県成…田市)に外国人医師と家事代行業の外国人受入特区を設定済みとのこと。周辺業態への拡大という未来像を想起できる現実だ。そうなれば事実上の移民解禁であろう。
② 介護施設の設置費用の過半が不動産取得費用にある点。
この程度は目を引く内容だ。
ただし、本書に書かれる問題は、東京ないし首都圏単独の問題でない。現に、本書においては、大阪府ないし大阪圏の方が、介護必要高齢者の顕著な増大という点で、首都圏より先に問題顕在化すると思しき記述がある。
ところが、視点は首都圏のみである。
他も多くはスカスカなそれ。
例えば、本書では介護職への給与水準の低さを問題視する、それ自体は真っ当な指摘だとしても、もし全国一律に給与水準が上がった場合、地方だけの雇用増を齎すのだろうか?。
多くの高齢者が住まう首都圏の雇用増を来すだけではないのか?。
さらに、都内の介護施設の設置に関する用地・容積基準を緩和するのが政策的に手っ取り早いから、そこだけに手を付けて、首都圏の問題を解決し、さらに問題を先送りするだけなのでは、との疑問も?。
そもそも、本書は高齢の要介護者及びその予備軍の、東京乃至首都圏から地方への移動、つまり政策的IないしUターンを実現しようと目論むものである。
そして、そのIないしUターンが「トリンクルダウン」的に、介護職を中心とする若年層の雇用を地方に生み、地方の自治体消滅を回避しようというものである。
が、ここで挙げる政策の採用がちぐはぐであれば、地方に費用負担だけを押し付ける帰結を招来しかねない。
なるほど本書は、そうはならないように一応の配慮をしているが、政策の部分採用ないし政策効果の見通しを誤れば、本書の提言が首都圏のみの生き残りを画策したものとの評もあり得るのではないか。続きを読む投稿日:2016.12.04
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