【感想】狼の幸せ

パオロ・コニェッティ, 飯田亮介 / 早川書房
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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ブクログレビュー

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  • hosinotuki

    hosinotuki

    このレビューはネタバレを含みます

    モンテ・ローザの麓フォンターナ・ブレッダを舞台にミラノから離婚してやってきた作家ファウストと彼を雇ってくれたバベット、元森林警備隊員のサントルソとウェイトレスのシルヴィア。この4人が関係を築き影響を与えあいながら変化していく。自然描写の息を呑むような美しさと綺麗事だけではないトイレ事情などの生活面での厳しさ。一年を山や森林の変化と狼の見え隠れする存在感で満たした文章の美しさ、ディネーセンに捧げられたよう気がしました。また北斎を意識した36章仕立て、富士山ならぬモンテ・ローザを背景に人間たちの営みが描かれユーモアにも優れています。

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    投稿日:2023.08.23

  • 彗

    前2作(帰れない山、フォンターネ)よりも薄い感じ。
    山や山での暮らしの描写は変わらず生き生きとしていたが、薄いと感じたのはなぜだろう。
    時間をおいて、もう一度読み返してみたい。

    投稿日:2023.08.11

  • FT

    FT

    日本でいうところの"黄昏(誰そ彼)時"、あるいは"彼は誰時"に該当する言葉として、イタリアでなくフランス語ではあるが、"犬と狼のあいだ"という表現が当地にはあると知り、いかにもアルプスの山々を身近に仰ぐ民の言葉らしいな、と妙に感服した。
    また、標高が100m上がれば気温は0.6℃下がる、と言われるが、なるほど主人公が考えるように垂直移動による気候の変化もそれ自体を旅と捉えれば、私たちの人生をもう少し豊かにすることもできるのかもしれない。

    モンテ・ローザを富士山になぞらえ、作品全体を富嶽三十六景に見立てて構成している様が、日本人にとっては嬉しいサプライズのようでもあり、まさしく日めくりの絵画を鑑賞するが如く味わうことができる。
    …が、個人的には細かく章立てせず、一つの大きな物語として悠々と紡いでくれる方が好みだったかな…。

    俗世間でこなさねばならぬタスクの合間の慌ただしい時や、何某かの悩み事等に脳内の大半を占められている時ではなく、心身ともに余裕がある時に、じっくりどっぷり浸かることこそがふさわしい作品だと感じた。

    「凶暴なまでに違和感のある、不快な眺めだった。ロープウェーの設備も、落下防止用のネットも、整地の跡も、むきだしのコンクリートも、何もかもが醜悪だった。」
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    投稿日:2023.08.03

  • 翡藻美

    翡藻美

    山に登りたくなる、山の麓に住んで暮らしてみたくなる作品。淡々とした文章だけど、その文章や表現の中に作者の山に対する気持ちや山に関わる人のことが描かれていた。
    心を穏やかにさせてくれる作品だった。再読したい。続きを読む

    投稿日:2023.07.29

  • うみかもめ

    うみかもめ

     街の暮らしに疲れた中年男が標高2000メートル近い山村に逃れた。男の職業は作家。

    絵にかいたようだ・・・。

     山村のバルでコックの職を得た彼は、彼同様街暮らしから逃れた若い女性と付き合うことになった。

    中年男のファンタジーだ・・・。

     四季を通じた自然の描写、山に暮らす人々の生業と生活の描写、美しく描かれている。絶滅の危機に瀕している狼の控えめな描写がタイトルのもとになっているが、結局中年男のファンタジーだな。
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    投稿日:2023.06.23

  • ぽてち

    ぽてち

    イタリアンアルプスのふもとにあるフォンターナ・フレッダという小さな町を舞台に、そこに生きる人々や自然を活写した作品。
    作家でパートナーと別れたばかりのファウスト、唯一のレストランを営むバベット、そこでウェイトレスをすることになったシルヴィア、山で働くことを何より楽しんでいるサントルソの4人が主要な登場人物だ。36篇の短篇で構成された作品で、この数字は北斎の『富嶽三十六景』にちなんでいる。
    タイトル通り狼も登場するが、恐怖の対象でもなければ駆除されるわけでもない。自然界に生きる仲間として認められている。この距離感が好みだった。
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    投稿日:2023.05.22

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