【感想】ゲーセン戦記 ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀

池田稔, ナカガワヒロユキ / 中公新書ラクレ
(2件のレビュー)

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    このレビューはネタバレを含みます

    ゲーセン戦記
    ミカド店長が見たアーケードゲームの半世紀

    著者:池田稔
    聞き手・構成:ナカガワヒロユキ
    発行:2023年6月10日
    中公新書ラクレ

    ミカドというゲームセンターは、「ゲーマーの聖地」として国内、海外でその名が知られているらしい。現在、高田馬場2軒と池袋の3店舗があるが、いずれも、ほぼレトロゲームだけで経営がなりたっている。その創業者で店長を兼ねる著者の〝成功物語〟だけれど、決して大もうけしてはいない成功物語だ。つまりは、ゲームセンターそのものが成り立つ時代ではないのに、立派に成り立たせているだけでも大成功と言えるんだろうということが分かる本だった。

    ゲームって家庭かスマホでする時代だと思っていたが、それに対してゲーセンでするゲームを「アーケードゲーム」というらしい。始まりは、横浜のデパート屋上一角に設置された木馬だそうで、それがナムコだった。いうまでもなく、日本のアミューズメント業界を大きく発展させた会社。1974年生まれの著者は、子供の頃からゲームが好きで、ゲームセンターを経営するのが夢だったが、ゲームが好きであることはもちろん、きっとゲームセンターが好きだったのだろう。いかないと分からない、文化がそこにはあるようだ。カリスマプレイヤーの技を見たり、対戦相手と交流したり。

    そんな「小さな文化」を守りたい、という思いで、いまも必死に頑張っているようだ。配信ゲームの台頭、ビデオゲームの衰退、そこへ襲いかかった東日本大震災。ダメ押しはコロナだった。それでもなお、ゲーセンは残る、アーケードゲームは残るのである。

    読んでいても、ゲーム事情にうとい僕は、理解できない部分がたくさんあった。言葉が分からないし、分かりやすく説明されてはいるのだろうが、やったことがないのでイメージが膨らまず、その画が頭の中で描けない。でも、なんか伝わった。きっと、著者がレトロゲームでこの文化を守ろうとして頑張っているからだろう。

    最初は、1974-1996の歴史、著者の歩みが章立てになっていて、年表がついている。そこには、
    1972年 ポン
    1974年 ポンダブルス
    1976年 ブレイクアウト
    1977年 サーカス
    1978年 スペースインベーダー
    1979年 ギャラクシアン・・・・・
    などと続く。やったなあ、ポン。卓球をイメージしたやつ。飛んでくる球を受けて跳ね返す。段々スピードが早くなっていく。相手側に入れたら勝ち。
    それを相手側に入れるのではなく、ブロックを崩していくようにしたのがブレイクアウトだった。それを擬人化して、シーソーで人が飛んで風船を割っていくのがサーカスだった。全部割った時に流れる音楽は今でもよく覚えている。
    インベーダー以降は、言うに及ばず。無茶苦茶やったし、お金を使った。

    著者が本格的にハマったゲームは、1983年のゼビウスらしい。小学生の頃。ゼビウスは、辛うじて重なるかな、僕も。でも、その後はほとんど知らない。アメフトゲームぐらいしか記憶にない。ピンボールのブラックナイトなら、夢中になった。

    1995年はゲーセンに熱気がある時代だったらしい。バーチャルファイアター2(1994)のブームが大きい。地下鉄サリン事件、阪神・淡路大震災、エヴァンゲリオンブームなど、世の中が混沌としつつ熱気に溢れていた。1997-99年の2年は、対戦格闘技ゲームの黄金期だった。

    UFOキャッチャーで出す景品については、30-35%を原価率にしている店が多く、800円の景品を出すためには2400円のインカムが必要。しかし、機械的にそういうペースで出すと、まったく取れないという感覚になってしまうそうで、アームで景品は動くが、途中で落っことす、ちゃんと動いたからゲームをやった気になる、というさじ加減が店のノウハウだったらしい。しかし、今の機械は確率機が多く、何回かに1回、アームの強さが変わったりする、機械側で確率を設定できるようになっていて、ノウハウが必要とされない。

    1997-2005

    対戦格闘技ゲームの時代が一つの節目を迎えたとき、女子高生という新たなユーザーがゲーセンに登場。プリント倶楽部(1995)の登場。やがてプリクラだけの店が原宿などに登場。プリント倶楽部の開発元のアトラスがゲーセン以外の駅やコンビニにも置くと、とたんにゲーセンの売上げは落ちた。

    続いての救世主は「音楽・リズムゲーム」で、通称「音ゲー」。「ビートマニア」(1997)に始まり、プリクラとならぶ「神風」に。

    2000年代になると、ゲームはデータ化され、メーカーとゲーセンは回線で結ばれて使用するごとに課金されるシステムが主流になる。これが、結果的にゲーセンを衰退させることにつながっていく。

    著者は、最初はメーカーとゲーセンの間に入るディストリビューターで働き、転職して、今度はゲーセンも経営する会社に入って実際のゲーセン店長をする。そして、起業を決意するが、自分でゲーセンをするために2000万円が必要であることが分かり、資金がないので一緒に辞めた仲間とゲーム攻略DVDなどを作り、販売した。最初に1000万円の振り込みがあったときの感覚はすごかったらしい。しかし、これもストリーミングの普及とともに動画は無料で見る文化が定着し、衰退していく。

    ゲーセン経営へ

    やっと、2006年に念願だったゲーセンを歌舞伎町にオープンした。元々のゲームセンターの居抜きだった。しかし、2001年に歌舞伎町でおきたビル火災をきっかけに、所有者がはっきりしないビルのチェックが厳しくなり、その影響で2年で立ち退きを求められた。移転したのは高田馬場だった。この業界のやり方を使ってのオープン。2009年だった。それは、家賃は無料でゲーセンを経営し、インカム(機械に入ったコイン)は家主と折半というやり方だった。月売上げ1000万円目標で、最低保証で350万円を約束してやらせてもらった。無茶な計画だったが、イベントを開催するなど工夫でしのいでいく。ところが、東日本大震災。ゲームどころではないという風潮に。

    この後も、いろんな危機を乗り越えながら、なんとかやっている。逆に、店舗も3店に増え、フランチャイズも。

    ゲーセンをするポイントの一つに、店員があるらしい。ロケーション(店舗)とコンテンツがそろえば、次は人。最も大切なのが店員。個性的なゲームセンター店員は自分たちのお客を持っている。1980年代から事情は変わっていない。カリスマ性のある店員がカリスマプレイヤーを集めて。自らの店のスコアを上げ、全国ランキングで名前を売る、というのが1980年代のスコア文化を支えていた。1990年代に対戦格闘ゲームブームが来ても、店員とプレイヤーのつながりは本質的に変わらなかった。

    今、ゲーセンは配信も収入の柱になっている。ゲーセンでの対戦の中継。それを見て来てくれるし、有料配信もしている。グッズを売ることにも繋がっている。今、YouTubeチャンネル登録者数は約10万人らしい。

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    投稿日:2023.08.15

  • t_mozza

    t_mozza

    ゲーセン業界と店舗経営のドキュメンタリー。本書を読んだ理由は、私もアーケードゲームのプレイヤーの一人として業界の動きを追いたかったから(業界の新刊を読まないと追いていかれる)。
    個人的な好みとしては、ミカドを経営するまでの話は昔すぎるせいか説明的に見えてしまって少し退屈だったけど、ミカドを始めてからの章は経営上の苦労が語られていて興味深かった。特に大規模震災や感染症の流行などの災害による社会環境の変化や、逆境の中で生き残るための企画、イベントビルオーナーとのやりとりなどは、業界が違っていても仕事をする上で参考にしたいくらいに見応えがあって良かった。
    昨今のゲーセン業界の縮退は消費税増税の影響も大きいだろうと考えていたが、本書では特に扱われていなかったように思う(私が見落としてなければ)。特に2014年4月1日の5%→8%の増税は私も現役で見ており、この直前の2月〜3月、そしてこの年の6月や9月にゲーセンの閉店が多かったように記憶している。本書では何かの事情で言及を避けたか、実は影響が小さかったかのいずれかかと思ったが、終盤に新型コロナの影響が非常に大きかった話が書かれていたため、相対的な影響の大きさで取捨選択されたということかもしれない。

    136ページ
    僕の実況は完全なアドリブではなく、ある程度は準備している。お客さんに「へえ、知らなかった」「そうなんだ!」と思ってもらえるよう、事前にできるだけ調査をしなければ配信のクオリティは上がらない。
    →参考になる。ファシリテーションなどする際の姿勢や、個人的な動画配信・トーク配信などに応用できそう。やはりデキる人は見えないところで努力をしているんだ。

    202ページ
    振り返ってみると、1980年以降のゲームセンターの歴史のなかで、コロナ禍に翻弄されたこの2年間ほど過酷な年はなかっただろう。おそらく歴史を振り返るとき、ここを転換期とみなすことになるのはまちがいない。
    →前述の新型コロナの影響が大きかった話はこれ。
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    投稿日:2023.07.15

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