【感想】「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史

辻田真佐憲 / 講談社現代新書
(14件のレビュー)

総合評価:

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  • いちばやし

    いちばやし

    日本書紀や古事記に出てくる日本神話が、戦前の拡大路線、対外戦争の中でいかにプロパガンダとして利用されてきたかを分かりやすく辿る一冊。神武天皇の八紘一宇に始まり、イザナギやアマテラスの時代まで遡り、神話の発祥地としての宮崎県と鹿児島県の争いや、軍人に人気を持った竹内巨麿の「竹内文献」など、知らなかった日本の歴史と神話の関係性を網羅できる。特に、神武景気や岩戸景気、いざなぎ景気といった言葉に表れるように、戦後の日本でも神話の教養が人口に膾炙していたことが印象的である。それが、日本という国が世界に晒された時の弱小コンプレックスなのか、日本という国の雰囲気をよく表していることなのか、考えてみたい。続きを読む

    投稿日:2023.10.27

  • mamo

    mamo

    「戦前」を日本神話との関係で読み解く本。

    なるほどのところが多かった。

    もちろん、戦後の日本が、天皇を政治的に利用したとか、その際に日本神話を活用したというのを批判することは簡単ではないにしろ、可能である。

    が、著者は、そうした後付けの批判だけでなく、物語の重要性を認識した上で、それとどう使い合うか、より良い方向にどう使っていくかという観点があることに共感した。
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    投稿日:2023.09.23

  • NATAS

    NATAS

    なんとなく知っていた内容ではあったが、それぞれの思想の成立過程など“戦前”が構築され現在に繋がる様子を知るには良書。

    投稿日:2023.09.01

  • mayuharu21

    mayuharu21

    明治維新から77年で敗戦。敗戦から77年が昨年2022年。我々はいまだ明治政府に縛られている。いやそれどころか、亡霊のようにつきまとい、肥大化してさえいる。
    欧米列強と闘うためには西洋化が必須。
    江戸幕府にとってかわった薩長明治政府は天皇を担ぐ。
    しかし天皇は和服、では西洋化のシンボルにならない。
    古事記日本書紀に遡れば神武天皇は闘う天皇。
    神武天皇以来万世一系の天皇こそ闘う天皇。
    天皇陛下の下で富国強兵だ!

    みたいな絵を書いて、そのために、それまでは存在を忘れられていた神武天皇を担ぎ出し、
    その肖像画は明治天皇に似せて作り、、
    その明治天皇の肖像も元は東洋顔だったのが、それでは弱いと西洋風の顔にしたもの。
    何から何まで虚構。
    神武天皇のエピソードを膨らませる中で「八紘一宇」も生まれる。
    天皇は平和裏に世界をひとつにしようとしていた、と。

    今の政治で自由民主党に在籍する議員の多くは、
    この明治政府が作った虚構をまるまる信じているのだろうか。
    それともわかっていて、あえてそういう発言をして、
    国民を扇動しようとしているのだろうか。
    「八紘一宇」質問の三原じゅん子議員などは心から信じているように映るが。
    もはや天皇を担ぐのでなく、アメリカを仰いでいるはずなのだが、、、

    天皇家は男系で2600年続いている、なんてことを信じて、
    男子が残っている旧宮家を復活させ天皇におむかえしろ、
    なんて言っている青山繁晴議員は、学識ある方と思うんだけどなー。
    私は今の天皇家の祖先は26代継体天皇と理解している。
    15代応神天皇の五世の孫。
    でもそれじゃぶちこわしだから、青山先生などは一切そういうことは言わない。
    だいたい、楠木正成を忠義の武士というが、彼は南朝後醍醐天皇に仕えた。
    今の天皇は北朝。そこからして変。
    そういうことに全部目をつぶって、物語を作って、国民を動かそうとしている。
    そして当初は物語とわかっていたものが、皆ホントの話と思い込む。
    危ない。

    だいたい誰が国を動かすのだろう。
    明治政府では薩長、いまは官僚と自民公明となるのか?
    なんだかなー。

    戦前、近現代史を見つめ直したこの新書。名著だ。
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    投稿日:2023.08.31

  • Masahiro Sera

    Masahiro Sera

    本書では明治維新から大東亜戦争まで、日本の神話がどのように利用されてきたかが解説され、それに関連するエピソードも紹介されている。そうすることで日本神話の入門書となり、また近現代史書にもなっている。さらに昨今の神話プームではびこる神武天皇実在論に対しても誤った考えであることを示唆する。

    国体の精華と教育勅語
    日本では、天照大神が「天壌無窮の神勅」および「宝鏡奉斎の神勅」により、忠孝の道を打ち立てた。歴代の天皇および臣民は、この忠孝の道徳をしっかり守り、忠孝の四角形は一度たりとも崩れなかった。そのため、易姓革命は起こらず、天皇家は万世一系を保っている。
    教育勅語の背景にはこのような国体思想がある。

    以前自民党右派の政治家が、教育勅語を肯定する発言をしたが、ただ前述の一部分を切り出してきて、「親孝行の部分は現代にも通じる」などと論じても意味がない。

    敗戦受け入れを決めるかどうかにあたり、当時の昭和天皇が国民の命のことより、三種の神器の無事を優先させて決断しようとしていたのは意外だった。
    またその三種の神器は、古事記、日本書紀には皇位の象徴とは書かれておらず、その言葉の初出も壇之浦の戦いで安徳天皇が入水したことを伝える「平家物語」であることも。

    明治維新に、それまでの江戸時代の政治体制の在り方を、完全に否定して、早く人臣を統制させるために神話を取り込み、いわばマインドコントロールしてきたか、そしていつの間にか、コントロールしていた方が、目に見えないものにコントロールされるに至ったか と言う風に思えた。

    未だに復古主義的な政治家やジャーナリストがいることには注意も必要かな。

    続きを読む

    投稿日:2023.08.16

  • rururu

    rururu

    明治〜昭和初期にかけての、日本書紀や古事記を元にした引用が、読み辛いなと流していた。
    戦前〜戦中にかけて、分かりやすく勇ましく、読みやすくなって怖くなった。
    良い本だった。

    投稿日:2023.08.12

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