【感想】いじめ社会の子どもたち

鎌田慧 / 講談社文庫
(4件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • 辻井貴子

    辻井貴子

    1997年5月に神戸で起きた少年殺人事件を緒に、マスコミの対応や学校の対応、いじめ問題から今後の教育へと論が進められていく。
    1998年10月発行で、冒頭の事件が起きた一年前後の期間に、著者が学校と教育について書いた文章を集めたもの、という体裁の文庫版。週刊誌に連載されていた記事もあり、当時の社会情勢を反映した、臨場感のある鎌田節が読める。

     学校や、ひいては会社など大人社会にも蔓延するいじめや過労、それらが引き起こす自殺についての例を挙げながら、著者は一貫して「弱いものが生き延びられないような社会で良いのか?」と問い続ける。

     信じがたいような少年犯罪や、死んでしまうことでしか自分の気持ちを訴えられないほどに追いつめられてしまう子供たちの存在は、こうした社会の中で居場所をなくした子供たちからの警鐘なのではないか?と。


     学校や教師の保身体質、被害者の遺族が孤立して情報開示さえ受けられずにいることが多い現実。さまざまな取材をし、遺族と会う機会も多かったであろう筆者が訴える事柄はどれも重い。
     
    「理想論だ」という批判はずいぶん多く受けてきたようだが、文部省の掲げるいびつで見当はずれな「理想」を、まずは批判すべきだ、という筆者の意見は一理ある。ヒステリックでステレオタイプな叫び声ばかりを上げるマスコミもまたしかり。もちろん、この著者の意見だけが全てだとは思わない。一人の人間が見ることができるのは、物事の一部の側面だけである。しかしこういう意見や糾弾にもきちんと耳を傾け、きちんと向き合おうとする誠意のようなものが、確かに、今の世の中には欠落しすぎているように思う。
     まさにそれこそが、子供の社会にも現れているのではないか、というのが、著者の一番、訴えたかったことなのではないかと感じた。
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    投稿日:2012.06.25

  • nakaizawa

    nakaizawa

    (1999.09.19読了)(1998.11.16購入)
    (「BOOK」データベースより)amazon
    なぜ、こうも子どもの悲惨な事件が続くのか。「神戸少年事件」、いじめ自殺、学校の荒廃―これらの背景には何があるのか。押しこめられた子どもたちの行動や悲痛な叫びをリアルにつかみ、日本型管理によるいじめ社会の歪んだ構造を告発する。現場を歩き、その重い意味を鋭く問う緊急ルポ。続きを読む

    投稿日:2012.01.15

  • May

    May

    世はまさに世紀末、というやつか。被害者と加害者の人権をめぐる議論はいまもかまびすしいが、その原型がこれ。後半に出てくる、理想論を拒む高校生の言葉には絶望感がこもっている。著者はそれを理解しきれていないのかもしれないと感じずにはいられない。戦中世代にはわからないのだろうか……。続きを読む

    投稿日:2010.09.23

  • むーむ

    むーむ

    p290
    もうひとつは、よく一般的にいわれる「みんなと仲良くしなさい」という考え方です。これはお母さん、お父さんがよくいったりしますが、これも間違っていると思うのです。みんなと仲良くなんて絶対に出来ません。大人だってけっしてみんなと仲良くしているわけじゃありません。

    こう言っちゃう著者に感銘を受けた。

    いじめとか、少年犯罪とか、
    本当に大人の汚い社会の犠牲はいつも子ども。
    大人がそのことにもっともっと意識を向けて、
    クリーンな社会にできないものかな。
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    投稿日:2010.08.21

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