言葉と歩く日記
多和田葉子(著)
/岩波新書
この作品のレビュー
平均 4.4 (36件のレビュー)
-
このレビューはネタバレを含みます
ベルリン在住で、日本語とドイツ語のニヶ国語の小説を発表している多和田さんの、"言葉"に関する日記形式のエッセイ。
レビューの続きを読む
小説の中で多和田さんはよく言葉遊びを取り入れておられる。生まれてからずっと日本在住で日本語しか話さ(せ?)ない私にとって、それは新鮮で斬新で、いつもクスッと笑ってしまう。
ドイツから見た日本、ドイツ語と比較した日本語、というように俯瞰して日本並びに日本語を観察しておられるからできる技なのだろう。特に印象深かったことをピックアップ。
●時代と共に日本人が遣う日本語も変化し、遣われなくなり消えていく日本語も少なからずある。実際遣っている我々は、そんなものかと時代に流されている感があるけれど、多和田さんはそのことを大変危惧されていた。
●日本語の発音の響きと字の形。日本人にとっての当たり前を掘り出して注目し、時に心配もする多和田さんの日本愛はかなりなもの。日本在住の日本人以上の愛情を感じた。
●文章が縦書きなのは日本だけとは驚いた。韓国はともかく中国も横書きとは。日本は東アジアの中でも特に古いものを残す国、と世界の中で言われていることにも驚いた。やはり島国だからかな?
●日本の敬語について。敬語を遣った質問の場合、単刀直入に訊くのでなく間接的な言葉を遣うことが多い。例えば「砂糖をお使いになりますか?」という表現。砂糖は道具でも召使いでもないのに何故"使う"なのか?一方ドイツでは「砂糖が欲しいですか?」と単刀直入に訊くそうだ。何故日本人はわざわざ回りくどい言い方をするのだろうか。つくづく不思議である。敬語の言い回しは日本人にとっても難しい問題。
●日本語や英語等の言語に主語はいらない説には感心した。確かに話し言葉にわざわざ主語なんて付けない。付けるのは教科書くらいかな。あと、詩は助詞を抜かした方が勢いも出てきて好き。好みの問題かもしれないけれど。
●多和田さんの場合ニヶ国語だけでなく、そのニヶ国から張り巡らされている別の無数の言語との関係性を見ておられる点が面白い。
●花から花へ飛び移るミツバチのように、様々な国の言語や文化を吸収し、また別の国へと運び、多和田さんなりに混ぜ込み、多和田文学が創られるのだろう。今年はコロナの影響で飛び回れず、ウズウズしておられるかな。
多和田さんの頭の中で、ニヶ国の言語が其々の主張をして対話を重ねることにより生まれた"言葉"は、我々日本人を刺激する。
多和田さんが日頃感じる、異国の中の日本語に対する疑問や解釈の発想がとても面白かった。
時折内容の高度な箇所もあったけれど、大学時代の教授の講義を聴いているみたいに思えて、とても懐かしくもあった。
また続編が出ないかな。
次回があれば、出来の悪い教え子なりに多和田教授の講義に付いて行きたい。投稿日:2020.09.27
多和田さんが好きなのは、独特の感性と鋭い批評眼があって、なおかつ明るさがあるから。小説でもエッセイでも。
この本は書店で平積みになってて、新しい本かと思って買ったら10年前の再版だった。けど読んでなか…ったのでノープロブレム。
2013年1月から4月15日までの日記で、1日分は短いので隙間時間にちょっとずつ読もうと思ったのに、面白くて一気に読んでしまった。
こむらがえりを起こすとドイツ人に言ったら、皆口々にそれはマグネシウムが足りないせいだと答えた、という話のあとに、
「「こむらがえり」はとても古い単語なので「マグネシウム」という単語と出逢って、かなり驚いたみたいだった。」(P69)
(「こむら」はふくらはぎの古語。)
トルコ語と日本語は同じウラル・アルタイ語族だと言われていた時期があった。しかしそれはインド・ヨーロッパ語族を中心とした見方である、といった内容のあとに、
「これは、鍋が自分中心に世界を見て、「ミシンとコウモリ傘は似ている」と主張するようなものではないか。鍋から見れば、ミシンとコウモリ傘にはいろいろ共通点がある。まず蓋がないこと、そして仕事中熱くならないこと、更には調理の役に立たないこと」(P159)
(「ミシンとコウモリ傘」のワードの選択もいい。)
「リアリティ」「クリエイティヴ」といった言葉について、伊藤比呂美の詩について、ワーグナーの文体についてなど面白いだけでなく刺激的で、読んでいる間、本当に幸せな時間を過ごすことができた。
立て続けに二回読んだ。続きを読む投稿日:2024.02.04
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。