ウクライナにいたら戦争が始まった
松岡圭祐(著者)
/角川書店単行本
作品情報
単身赴任中の父と3か月を過ごすため、高校生の瀬里琉唯(るい)は母・妹とともにウクライナに来た。初日の夜から両親は口論を始め、琉唯は見知らぬ国で不安を抱えていた。キエフ郊外の町にある外国人学校にも慣れてきたころロシアによる侵攻が近いとのニュースが流れ、一家は慌ただしく帰国の準備を始める。しかし新型コロナウイルスの影響で一家は自宅から出ることができない。帰国の方法を探るものの情報が足りず、遠くから響く爆撃の音に不安と緊張が高まる。一瞬にして戦場と化したブチャの町で、琉唯は戦争の実態を目の当たりにする。
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商品情報
- シリーズ
- ウクライナにいたら戦争が始まった
- 著者
- 松岡圭祐
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川書店単行本
- 書籍発売日
- 2022.08.03
- Reader Store発売日
- 2022.08.03
- ファイルサイズ
- 3.3MB
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この作品のレビュー
平均 3.9 (34件のレビュー)
-
またさっきの叩くような騒音が鳴り響いた。男性のフードをかぶった頭部が、いきなり破裂した。文字どおり弾け飛んだ。フードが変形して潰れ、褐色に濁った液体がぶちまけられた。男性の身体は進行方向につんのめった…。頭部があったあたりから、斜めに噴出する液体は、鮮血だとわかった。わたしは自分の悲鳴を耳にした。(135p)
2022年1月、 17歳の瀬里琉唯は、高2の3学期を丸々ウクライナに短期留学することになった。妹と母親と共に、父親の住むキーウ郊外のブチャという町に住み始める。父親は戦争の危険性は楽観視していた。
‥‥ブチャという町の名前を知った時に、何か引っかかったのだけど、そのまま読み進めていった。
最初のページに、「状況と日時、各事態の発生場所に関し、現在までの情報を可能な限り網羅し、また帰国者の証言などを併せ、できるだけ正確を期した」とあり、日本人ウクライナ人併せて17人の名前が記されている。そういう意味では疑似ノンフィクションではある。
とは言っても、本書の半分以上は、瀬里家族の初めてのウクライナ訪問、離婚危機にある家族の状況、避難勧告が出て空港に向かうも妹にコロナ陽性が出てブチャに舞い戻り、という比較的小説的かつ「取材した事実は全て描写に活かしました」という文章が続いて少し退屈していた。
〈冒頭の書写し〉135pで、4人家族のウクライナ「体験」は、突然転調する。
ーーそうか、このように戦争は突然のように始まるのか。よりによって瀬里の父親は、「田舎町で平和なところだ」と思って住んでいたけど、1番最悪なところに居を構えていたわけだ。現在(いま)では「ブチャの虐殺」と呼ばれている、戦争開始期の何百人かの民間人が無差別に殺された悲劇の場所だった。
私は8月に、高見順「敗戦日記」を読みながら「みんなこれを読んだらウクライナのことを想起するだろう」と書いた。訂正しなければならない。やはり現代の戦争は、特に大陸の戦争は、その技術、規模、スピード、共に全然違う。戦中日記を梃子にして想像してはいけない。瀬里家族のように、開戦後数日、テレビニュース遮断、インターネット遮断の中で家に閉じこもっていたら、町が完全にロシア軍に包囲されていても、全く気がつかない。「なんとか、遠くの戦争をやり過ごせば、あとは我々は外国人だから脱出できるだろう」と楽観的に思っていたとしても、まぁおかしくはない。
瀬里琉偉の「地獄めぐり」は、ひとりの少女が体験するにしては、あまりにも悲惨でかつスピーディーに場面転換して、ちょっと詰め込み過ぎとは思った。ひとりの体験にせずに数人の体験にさせれはよかったのに、とは思ったが、小説の構成上仕方なかったのかもしれない。
今年2月に起きたことを、8月に刊行した著者の努力には敬意を表したい。もちろん、完全に事実ではない。また、実際にウクライナに行ってもないのに、見てきたように書くことの「限界」もあるのに違いない。
それでも、我々はテレビニュースでは伝わらない、「今ここにある戦争」を想像する梃子を、本書を読んで身につけると思う。繰り返すが、現実はかなりな悲劇だったようだ。(この時の)ロシア兵はやる時には殺る。子どもであろうと容赦なく殺すし、ミサイルを飛ばしてくるし、中には公然とレイプもする。
まことさんのレビューで本書を紐解くことを決めた。ありがとうございました。続きを読む投稿日:2022.09.18
このレビューはネタバレを含みます
フィクションと書かれていたが、実際に起こったことに基づいているので、リアリティがあり読む手を止めることができなくて一気に読んだ。高校生、琉唯は南相馬出身で東日本大震災を子供の時に経験し、現在コロナ禍で…マスク、手洗いうがいなど、感染症対策をしている生活であったところ、チェルノブイリ博物館に関わる父親の仕事場のウクライナに行った。キーウで民間人の虐殺があったことはニュースで知っていただけで、ブチャという地方の名前も知らなかった。松岡さんがこの時期この本を出したことは平和ボケした日本人にとって意味があることだ。続きを読む
レビューの続きを読む投稿日:2023.06.21
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