- 最新巻
死神さん 嫌われる刑事
大倉崇裕(著)
/幻冬舎文庫
作品情報
看護師が筋弛緩剤を患者に投与した。強盗犯が家主を殴打した。二人組が金欲しさにスーパーの店員を刺した。男が逆恨みから一家三人を襲った――そう警察が結論付けた殺人事件がすべて無罪に。警視庁の儀藤は再捜査で真相を突きとめることができるのか。死神と疎まれる一匹狼が証拠を一から洗い直す執念と比類なき推理力で躍動する傑作推理小説。
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商品情報
- シリーズ
- 死神さん
- 著者
- 大倉崇裕
- ジャンル
- 小説 - ミステリー・サスペンス・ハードボイルド
- 出版社
- 幻冬舎
- 掲載誌・レーベル
- 幻冬舎文庫
- 書籍発売日
- 2022.07.07
- Reader Store発売日
- 2022.07.07
- ファイルサイズ
- 0.7MB
- シリーズ情報
- 既刊2巻
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この作品のレビュー
平均 4.0 (14件のレビュー)
-
無罪判決が出た事件を再捜査して真相を突き止める儀藤堅忍警部補の活躍を描く連作短編ミステリー。
シリーズ2作目も、各話ごとに儀藤の相棒となる刑事の視点で描かれていく。
◇
警視…庁鑑識課の川代翔子警部は今日も若手鑑識課員をきつく叱り飛ばしていた。
翔子の怒りは凄まじく、20分を経過しても叱責は止む気配もない。悪いのは軽率な行動で検視前の現場を荒らしてしまった課員の方だ。そう思ってさらに糾弾しようとしたとき、内線電話が鳴った。鑑識課長からの呼び出しだった。
出向いた翔子を待っていたのは思いもよらぬ異動の内示で、異動先は大学の法医学研究室、ポストは講師であるという。つまりは警察機構から逐われることを意味している。
理由は行き過ぎたパワハラで、多くの部下から苦情の申し立てがあったとのことだった。
突然の左遷宣告に、ショックのあまり女子トイレで涙ぐむ翔子。と、真っ白なハンカチが目の前に差し出された。隣を見やれば知らぬ間に中年の小男が立っている。
驚く翔子を宥めるように男が恭しく差し出した名刺には「警部補 儀藤堅忍」とだけ書かれていた。
( 第1話「死神 対 天使」) 全4話。
* * * * *
2作目もおもしろかった。
刑事コロンボばりのトボけた言動と抜群の頭脳のキレで、無罪が確定した殺人事件の再捜査を進める儀藤の頼もしさ。
真相を突き止めたあと、相棒に心尽くしの贈り物をして去っていく儀藤の背中に漂う哀愁も相変わらず。このお決まりのパターンには心が和むばかりでした。
各話について少し紹介しておくと……。
第1話「死神 対 天使」
緩和ケア病棟に入院していた資産家の男性が急死した。筋弛緩剤を投与されてのもので、殺人事件として捜査が始まった。
やがて目撃情報から被害者の死の直前に病室に入った看護師が逮捕・起訴された。
だが裁判の結果、証拠不十分で無罪が確定。安楽死殺人事件は振り出しに戻った。
儀藤は事件当時の鑑識課員だった川代翔子を相棒に指名して再捜査に乗り出した。
儀藤たちの聞き込みで浮かび上がってきたのは、「死の天使」の存在だった。
重篤で助かる見込みのない患者を安楽死させる「死の天使」。その正体はいったい誰なのか。
☆終盤に二転三転する見事な展開でした。準レギュラーの福光弁護士がいい味出してますし、今回はキーパーソンでもありました。幕開けを飾るに相応しい物語です。
第2話「死神 対 亡霊」
相棒は、赤坂西署の宇佐見一成巡査部長です。
宇佐見が関わったのは安達という資産家が殺された3年前の事件。ただし安達邸は厳重な警備システムが導入されており、いかにプロの泥棒であろうと侵入は難しい。
しかし捜査本部は付近の住宅を荒らし回っていた座間伸介を逮捕・起訴。取り調べでは犯行を認めた座間だが、裁判では一変して容疑を否認。
検察は立証できず無罪が確定した。
逮捕当初から座間犯人説に懐疑的であった宇佐見は署内で反感を買い、現在の孤立に繋がっている。もともと勘と経験を重視する宇佐見の捜査が捜査三課の推し進める効率重視の科学捜査と相容れなかったという土壌もあってのことだが、儀藤はそんな昔気質の宇佐見に注目したのだった。
亡霊でもない限り、安達邸への侵入は不可能。儀藤と宇佐見は地道な聞き込み捜査を開始する。2人が突き止めた「亡霊」の正体とは!?
☆見せ場は外国人強盗団逮捕のシーン。宇佐見の勘と経験が脚光を浴びる出来事であり、格闘シーンでは ( 詳しい描写はないものの ) 図体のデカい犯人を瞬殺したらしい儀藤の凄みを垣間見ることができます。
第3話「死神 対 英雄」
相棒は退職警官の冨藤歩。根っからそそっかしく失敗続きの歩は採用後数年で自主退職したのだが、巡査として最後に関わったのが、スーパーマーケットチェーンの店長が2人組の覆面をした強盗に刺殺されたという3年前の事件である。
被害者の田坂店長は、強盗に刃物を向けられたレジの女性を庇おうとして犯人と揉み合いになり、刺殺されたということだった。
ほどなく逮捕・起訴された2人組が裁判でも犯行を認めたため罪が確定した。
だが店長殺害の時間に、2人組は別の場所で残忍な暴行殺人事件を起こしていたことが判明。店長刺殺事件は振り出しに戻った。
従業員を守ろうとして命を落とした田坂店長は、店舗の売上成績でもチェーン店中トップを3年連続で取り続けた人物でもあり、今や「英雄」として讃えられている。
現在はそのスーパーの従業員で、伝説の英雄を讃える1人でもある冨藤歩を相棒に選び、殺害事件の真相を探るため儀藤は意外なところから捜査を開始する。
☆真相に迫るために必要なことは何か。印象や先入観に囚われることの危険性を改めて認識できる展開です。
第4話「死神 対 死神」
相棒は警視庁副総監亀島秀康警視監。
キャリアとして順調に出世の階段を駆け上がり、次期警視総監と目されている人物だ。
亀島が関わったのは15年前に死刑判決が出た事件。二子玉川署管内の一戸建て住宅で起きた家族3人が惨殺された事件だ。
偶然パトロール中に通りかかった警官が事件現場から血まみれで飛び出してきた若い男を追跡して取り押さえたうえ逮捕に至った。
逮捕された大殿浩介は一貫して容疑を否認したが、状況証拠から大殿犯行は間違いないとして二子玉川署は検察に送り、裁判でも有罪が確定。判決は死刑だった。
ところが裁判で首席判事を務めた磯谷は物証も自白もないまま下した死刑判決を後悔しており、死病に取り憑かれ余命幾ばくもない現在、儀藤に再捜査を依頼したのである。
無罪判決が出ていない事件だが、大殿の死刑執行は明日に迫っているため儀藤は依頼を了承し、事件当時の所轄署署長だった亀島を相棒に指名した。
大殿に対し大鎌を振り下ろすべく迫りくる「死神」。阻止しようと真相究明に奔走する死神・儀藤。死刑執行は刻々と近づいている。
☆のんびりした口調で捜査を進める儀藤が挑むタイムリミット・サスペンス。この設定がおもしろい。また、携帯の着信音が謎解きの突破口になるなど、締めに相応しいよくできたミステリーです。
2作目も短編とは思えない読み応えのある連作でした。流れとしては1作目と同じなのですが、異なる点が2つあります。
1つめは最終話にあった「無罪判決」が出ていないのに儀藤が再捜査に着手する点です。元最高裁判事の依頼というところもなかなか興味深い。依頼のルートが気になりますね。
2つめは、儀藤よりも高い階級の警察官が相棒に指名される場合があるという点。( 第1話では警部、最終話では警視監。)
特に最終話では、儀藤は亀島警視監に対し副総監の職を解き自分の下に入るよう命じています。亀島は警視総監に電話して助けを求めようとしますが取り合ってもらえず、副総監付きの秘書官からも冷たく突き放されてしまいます。
短時間でこれだけの人事処遇を警視庁内に徹底させる儀藤とは、いったい何者なのか。
これらから推測すると、儀藤の所属は警察庁か法務省あたりではないかと思われます。
彼は名刺を差し出しながら、「警視庁の方から来ました」と挨拶します。「警視庁から」とは言わない理由は、そこにあるのではないでしょうか。
警視庁の上級省庁なら、かなりの権限を儀藤が委嘱されているのも頷けますし、元最高裁判事の訴えを取り上げて儀藤を警視庁に送り込むことも可能だと思います。
さらには公安を動かすことも可能であるため、警視庁上層部や所轄署幹部の秘密まで調査可能なのもわかります。
軽いタッチの作品ながら、いろいろと想像を膨らませることができる、本当におもしろい、優れたミステリーでした。続きを読む投稿日:2023.11.04
このレビューはネタバレを含みます
【収録作品】死神対天使/死神対亡霊/死神対英雄/死神対死神
レビューの続きを読む
「死神対天使」看護師が筋弛緩剤を患者に投与した事件。相棒は鑑識課の川代翔子警部。
「死神対亡霊」強盗犯が家主を殺害したとされる事件。相棒は…三課の刑事・宇佐見一成。
「死神対英雄」強盗がスーパーの店長を刺し殺した事件。相棒は元警察官の冨藤歩。
「死神対死神」一家三人が殺害された事件。いつもと異なり無罪判決は出ていないが、犯人とされた被告の死刑執行日の前日に依頼を受けた儀藤が動く。
「十角館の殺人」見たさにHuluに入るという、誰かさんの思うつぼにまんまと嵌まったついでに、見られるドラマを見ておこうと「死神さん」を見た。前作の「死神刑事」は既読なのだが、続編が出ていることを知って読む。
儀藤のキャラがすっかり田中圭で脳内再生。
原作だとそこまでくどくないのに、ドラマになるとクセが強い。「逃げ得は許さない」の先は一通りではないようだ。続きを読む投稿日:2024.04.10
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