残月記

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  ABAKAHEMP

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  確かにそれまでとは違った月と感じられるが...

  まず良かったなと思う点から。
  冬芽が「月昴」という感染症を発症する様の描写が素晴らしい。
  インフルエンザに似た熱っぽさを感じ早めに仕事を切り上げ、下宿先ですぐ横になったはいいが、夜が深まるにつれて…ますます熱が上がって、朦朧としてくる。
  "このまま死ぬんじゃないか" - 最悪を予感しつつ、深夜びくりと目を覚ます。
  "妙に明るいな..."
  
  「カーテン越しの月光しか明かりがないというのに、薄気味悪いぐらいにくっきりと見えていた。9年間も寝起きしてきた部屋が、新たな夜の顔を見せ、約束された災いの名を無言で指し示していた」
  
  「月昂だ!　やっぱりこれは月昂だ!　俺は月昂者となったのだ!　世界が静まりかえり、夜の彼方にまで血の気が引いてゆくようだった。しばしのあいだ、心が宙に放り出され、もがくよすがもなく、森の奥の縊死体のように虚ろに揺れていた」
  
  この時に冬芽の脳裏にリフレインのように蘇る菅井元香の詩の一節がまたふるっている。
  
  「われらの月は生きている息づいている脈動している　/　われらの血はたぎりたつ匂いたつ　/　目を光らせながら歯をなめながら燃えながら　/　まぶしい夜の町まちを躍りさまよう」
  
  菅井元香が息づいていると謳った月昂者にとっての満月は、常人のそれとは違う。
  小さくてよそよそしく、遠くに見える冷えきった死んだ月ではなく、ぎらぎらと濡れ騒ぐ、明るく大きな生きた月。
  この辺りの、読者それぞれに、馴染みの対象に対する異なった相貌を想像させる書きぶりは本当に凄いと思う。
  これまでとは違った心持ちで月を見上げてしまうというか、怪しい感情に囚われ、見てはいけないものを見てしまったというような禁忌の感情も。
  
  「太陽はみなの頭上に分け隔てなく昇ってくるが、月はそれぞれの人間の心の闇に昇ってくるのかもしれない」
  
  こんなに素晴らしいんだけど小説の出来映えはどうなんだろう。
  発症者同士や、周りの一般人との交流をたんたんと綴った方が良かったような気が...。
  別に、グラディエーダーだ、独裁者だ、政権転覆工作だと余計なエピソードを盛り込まなくても...。
  だいたい後世の人間(第三者)の視点から宇野冬芽という月昴者の一代記を綴るという体裁になっているのに、最後が冬芽の夢というか空想といった内面で終わっているのがよくわからない。
  下條暗殺の顛末や政変時の日村の暗躍ぶりを描きたかったため仕方ないのだろうが、「いるかな、コレ」って思ってしまった。
  
  「そして月がふりかえる」もよくわからない。
  満月の夜、月がくるりと回転して、地球に決して見せたことがないはずの裏側を目撃してしまったがために、それまでの人間関係まで反転してしまう男の話なのだが、てっきりそれまで疎遠で険悪だった女と内縁関係になって、気づかなかった一面に触れ、新たな関係を築いていくという話に展開していくんだろうと思ったら、前の家族に執着して、家の鍵を持っているのに天井裏に潜んで一夜を明かし、頃合いを見計らって出てきて、手に傷があるはずだ見せろという、まったく意味不明な行為に及んでいる。続きを読む

  投稿日：2022.08.21

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  ssft290

  月を題材にしたダークファンタジー。
  映像を意識して書かれた印象。
  子供の頃に書いた物語を大人になって書き直した感じ？
  どんな発想でこんなストーリーが浮かぶのか、作者の頭の中を覗いてみたい。

  投稿日：2023.11.18

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