飼い喰い 三匹の豚とわたし
内澤旬子(著者)
/角川文庫
作品情報
「記憶していた以上に凄い本だった。これは奇書中の奇書と言っていい」解説の高野秀行氏も驚嘆! 前人未踏の養豚体験ルポルタージュ。ロングセラーの名著『世界屠畜紀行』の著者による、もう一つの屠畜ルポの傑作。生きものが肉になるまで、その全過程!世界各地の屠畜現場を取材していく中で抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。養豚が盛んな千葉県旭市にひとりで家を借り、豚小屋を作り、品種の違う三匹の子豚を貰い名付け、約半年かけて育て上げ、屠畜し、食べる。「畜産の基本は、動物をかわいがって育て、殺して食べる。これに尽きる」。三匹との愛と葛藤と労働の日々に加え、現代の大規模畜産での豚の受精、出産から食卓にあがるまでの流れも併せて踏み込み、描いた前代未聞の養豚体験ルポルタージュ! ※本書は2012年に岩波書店から出た単行本を加筆修正し、文庫化したものです。【目次】はじめに なぜ私は自ら豚を飼い、屠畜し、食べるに至ったか見切り発車三種の豚システム化された交配・人工授精分娩の現場でいざ廃墟の住人に豚舎建設お迎え前夜そして豚がやって来た日々是養豚脱 走餌の話豚の呪い豚と疾病増量と逡巡とやっぱり、おまえを、喰べよう。屠畜場へ何もかもがバラバラに畜産は儲かるのか三頭の味震災があとがき文庫版あとがき解説 高野秀行
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商品情報
- シリーズ
- 飼い喰い 三匹の豚とわたし
- 著者
- 内澤旬子
- ジャンル
- 教養 - ノンフィクション・ドキュメンタリー
- 出版社
- KADOKAWA
- 掲載誌・レーベル
- 角川文庫
- 書籍発売日
- 2021.02.25
- Reader Store発売日
- 2021.02.25
- ファイルサイズ
- 9.4MB
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この作品のレビュー
平均 4.5 (9件のレビュー)
-
本書は動物愛護・保護的感情論から’肉を食うのを止めよ’とか、道徳的視点から’命の有り難みを噛み締めよ’等といった主張をするものとは全く一線を画する、私の内に強烈な印象を刻み込んだドキュメンタリー。
…自ら飼って育てた豚を捌いて食べるなんてかわいそう!信じられない!という気持ちを抱くのは何ら不思議ではないし、そもそも著者の内澤旬子先生だって悪鬼羅刹ではないので屠畜の日が近づくにつれての複雑な心情を明かしているし、当日も「辛かった」(p251)「せつなかった」(p257)という瞬間があった事を綴っている上に「豚がかわいくてしかたがなかった。」(p158)と振り返っている。
ここで大事な事は、そもそも内澤先生は三頭の豚をペットではなくて家畜として飼い始めた訳で、飼い出した理由は世界中の屠畜現場取材の過程に於いて屠畜場に送られてくる家畜達そのものの事についてを知りたいと思った、という学究的関心による。
かわいそう!信じられない!という反射的反応の根拠って相当曖昧で、「何がかわいそうで何がかわいそうでないか」(p155)とか「動物を食べるのがかわいそうで、植物を食べるのがかわいそうではないと断ずる理由はなにか。」(p336)とかって突き詰める程に、結局はそう考えるその人の「単なる習慣」(p158)に過ぎないエゴイスティックな押し付けなんだろうなと私自身の事も含め、改めて考えるきっかけになった。
…と書いていてふと思ったけど、ついさっき豚の生姜焼きを食べたんだよなあ。結局のところそんなもんよ。
ちなみに、三頭の豚が屠られる場面以上に衝撃的だったのは分娩立ち会いのシーン。豚舎に入って「まず目に入ったのは、下半身がちぎれてなくなって死んでいる赤ちゃん豚だった。」「猫が入ってきて食べちゃう(中略)それと初産の母豚は(中略)驚いて噛み殺したり、食べちゃう」(すべてp66)らしい。絶句。まあ猫問題はともかくとしてパンダだって育児放棄するっていうし、母に無償の愛を強要するのはそれこそエゴイスティックな無理強いというものでしょう。
他にも大規模養豚業が孕む問題点だとか持続可能な循環型農場の課題点だとか、様々な知見を得られた一冊でした。
よく学校での「いのちの授業」を巡って意見が割れたりもするけれど、勿論子供達に棍棒やナイフを持たせて手ずから解体にあたらせるのは慎重に為されるべきだが※注※、屠畜業についてをタブーとして隔離・隠蔽するというのは却っていのちや食べ物をぞんざいに見做している事になりはしないだろうか。
少なくとも、私は自分の子供たちには食卓にあがる
食べ物についてを(肉だけじゃなくて)きちんと説明出来るようにありたいと月並みながら思いました。
(訂正・追記)※注※について、屠畜場法第十三条に「何人も、と畜場以外の場所において、食用に供する目的で獣畜をとさつしてはならない。」と定められておりました。けどこれ、教育目的であればOKなのだろうか?
1刷
2022.11.20 訂正・追記
続きを読む投稿日:2022.11.20
よく子どもに生き物の大切さを教えるのが難しいとか言ってたりするわけだけど、いやそりゃ難しいわ。というか何も分かってねーな、ってことが分かった。無知の知ってやつか。
というわけで、まずやってみようという…著者のバイタリティには恐れ入る。色々と大変だーとか言いながらも他の人に助けてもらったり、でも結局は自分でも苦労をするというこの姿勢は見習いたい。
そして名前もつけて可愛がったブタを殺して食う。イルカがかわいそうだと言って押しかけて嫌がらせをするだけの緑豆あたりに比べてもしっくり来ることこの上なし。
って別に政治臭があるわけでもなく、説教臭くもなく、ただやってみた。ノンフィクションってこういうことか。続きを読む投稿日:2023.09.20
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