残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか
更科功(著)
/NHK出版
作品情報
ヒトは心臓病・腰痛・難産になるように進化した!
複雑な道具を使いこなし、文明を築いて大繁栄した私たちヒトは、じつは「ありふれた」生物だった──。人体は「進化の失敗作」? ヒトも大腸菌も生きる目的は一緒? 私たちをいまも苦しめる、肥大化した脳がもたらした副作用とは? ベストセラー『絶滅の人類史』の著者が「人体」をテーマに、誤解されがちな進化論の本質を明快に描き出した、知的エンターテインメント!
序 章 なぜ私たちは生きているのか
第1部 ヒトは進化の頂点ではない
心臓病になるように進化した/鳥類や恐竜の肺にはかなわない/
腎臓・尿と「存在の偉大な連鎖」・・・・・・
第2部 人類はいかにヒトになったのか
腰痛は人類の宿命だけれど/人類が難産になった理由とは/
一夫一妻制は絶対ではない・・・・・・
終 章 なぜ私たちは死ぬのか
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この作品のレビュー
平均 4.2 (38件のレビュー)
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腰痛、難産などの不都合を抱える人体。だがそれは必要な進化だった。
そもそも生きる・死ぬとはなにか、進化はなんのためにあるのか…。
【生きているとはどういうことか】
ではまず「エネルギーを吸収してい…る間だけ一定の形をしていて(散逸構造)、ときどき同じものを複製する」とする。するとガスコンロや台風なども「生きている」と表現できることになる。
いわゆる生物は、細胞膜とか皮膚とか何らかの仕切りで外の世界と区切られている。
つまり何らかのかたちで膜に包まれた有機物ができて、ある程度長く存在して、複製する散逸構造を持ったものができた、これが生物。
すると、生きる構造になった結果、生物が生まれたのだから、生きる意味とかは「生きること」そのものになる。
…というように、哲学的な話になってきた。面白い。
【進化は一方向でも、ゆっくりでもない】
進化の速さはまちまちだ。何万年もかかる場合もあれば、数世代で遺伝子が広がることもある。
さらに進化は進むだけではなく、その時時の環境により戻ったり進化の方向が変わったりする。
自然淘汰が増やす形質は子供を多く残せるということ。そのため子供を残せない年齢になっても関係はない。進化と個体の利害関係は一致しない。それなら子供を残せない年齢になった個体が快適な老後を送る努力をするのは進化と戦うってこと。
【方向性選択と、安定化選択】
方向性選択:有利な突然変異が起きると、自然淘汰はその突然変異を増やすように作用する、すると生物の形式が一定方向へと変化する。進化のアクセル。
安定性選択:不利な突然変異が起きると、自然淘汰はその突然変異を省くように作用する。不利な形質は平均から外れたものが多いので、これを省いても集団としての形式は変化しない、むしろ変化させずに安定させるように作用するという、生物を進化させない力。進化のブレーキ。
【身体の進化】
❐腎臓
血液中の老廃物を尿として捨てる器官。
生物は、有機物を食べて文化敷いてエネルギーを得たり、体の材料にする。その有機物が寿命となったら体の外に捨てなければならない。分解されるときには窒素が生ずる。窒素化合物をなにかにして捨てるのに一番簡単なのはアンモニア。だが毒性があるので捨て方を考えなければいけない。アンモニアは水に弱いので魚は水を体内に取り入れてアンモニアを体内で溶かしてから鰓から排出すれば良い。
陸上生物の場合は、窒素をアンモニアを尿素に合成して捨てている(※オタマジャクシはアンモニアを排出、カエルになると尿素を排出になるんだそうだ、ふーん)。
ここで進化の矛盾が生じる。尿素はアンモニアより水に溶けにくいので、大量の水を体内にいれなければいけない。つまり、水中生物が陸上生物になり水がないから尿素排出するように進化したのに、そのために水を飲まなければいけないということになったんだ。まあしょうがない。
窒素をどのようにして排出するか、ということで、進化の道筋の系統に分類される。
❐消化管
生物は要するにボールの中に管が通っているようなもので、その管が消化管。消化管の内側は唇や肛門により体の外とつながっている。だから消化管は体の外だって言える。
さて、口から入った食べ物は消化管で消化・吸収し、残ったら便で出す。そして腸内には1000兆個もの腸内細菌が住んでいて、便の大部分は腸内細菌の死骸であったり消化管から剥がれた粘膜細胞(食べ物の残り滓は半分未満)。
腸内細菌と生物とは共存関係にある。生物は腸内細菌に住処と栄養を提供し、腸内細菌は生物の消化を助け細菌から守ってくれる。
しかし腸内細菌たちも栄養が必要だ。だから生物は食べた物を自分自身の栄養にはなるが、腸内細菌に横取りされないように分解しなければいけない。
❐脊椎
脊椎の役目は、中枢神経である脊椎を守ること、体を支えること。
生物が水中にいた頃は、重力が弱いので、骨は体を重力から支えるというよりはカルシウム貯蔵庫であったのかなという研究がある。そのカルシウム貯蔵の役目は脊椎になっていった。さらに運動により筋肉を動かし、水中生物を泳がせることもできる。
現在の人間は、陸上で、二足歩行しているので、重力から体を支えなければいけない。
こうして人間の現在の脊椎の姿になるまでには、形や役割を変えさせてきた。
現在人間が腰痛に苦しむのは(これを書いている今も私は腰が痛い)、脊椎を上下に立てて重力を支えさせているからだ。しかし脊椎だって、下のほうが大きいとか人間にあった形に徐々に進化しているんだ。
❐目
明暗がわかる眼:クラゲなど。光を感じる細胞がたくさん並んで膜になった網膜が身体の表面(人類の場合は眼球の内表面)にある。
方向がわかる眼:眼点の網膜の真ん中が凹んでカップのような形になっている。カップのどの部分にあたったか、で光が来る方向がわかる。
形がわかる眼:↑のカップの入り口をくびれて狭くすると、外から来た光が入口を通るときに一点に集まる。そして入り口を通過すると光線が再び広がり、網膜に上下左右反転した像が映る。
カメラ眼:↑さらに、光の量やピントを合わせるレンズを当てはめたものが人類の眼。
【体の作りのこと】
❐ミルク消化に関して
哺乳類の子供は母乳を飲むが、大人になるとミルクが消化できなくなり、飲めなくなる。
だが人間の大人はミルクが飲める人も多くいる。もともと何万年も前のホモサピエンスの大人はミルクを消化できなかった。しかしその後家畜の乳が手に入るようになり、人間の栄養として役に立つようになったこと(が原因かという研究)により、人間の大人もミルクを消化できるようになった。
牛乳は体に悪い、太る、牛の乳なんだから人間の消化に悪い、などという主張があるけれど、長い歴史でミルクを飲めが方が有利だとなり、自然淘汰と進化の結果ミルクが消化できるようになったのだということも忘れないでね。
❐進化による身体の不都合
二足歩行になったため、腰痛になったり、陣痛が苦しくなったりする。しかしそれらの苦しみよりも、「子供を残す」という意味においては二足歩行が重要だった。
❐走る
イギリスでは、ヒトとウマの35キロマラソンがあるんだそうだ!さすがイギリス!そして近年ヒトが勝つ事が起こるようになったんだって!ええーー(@@)
…というわけで、ヒトは体毛が少なく汗をかいて体温調節できるので、長距離に強い。ウマも体温調節のために汗を掻く。
他の多くの哺乳類、ウシやシカなどは汗での体温調節ができないので長時間走ることはできない。
ウシやシカは、捕食者に追いかけられたら瞬時のダッシュで逃げる。ヒトは逃げることより追いかけることを重要視してきた。つまりそのダッシュで逃げたシカをどこまでもどこまでも追いかけてゆけば、走れなくなったシカに追いつけるということ。
【進化の中間地点?】
動物の四本歩行から、人間の二足歩行になるには、中間の中腰の時期があったのだろうか??それってすごく不便で危険だよね?
…などという疑問から、「では、木の上で二足歩行になってから地上に降りたのでは」などという研究がある。ふーーん。
【夫婦のあり方】
一夫多妻/多夫多妻:
利点⇒多くの子孫を残せる。
欠点⇒メスを巡ってのオス同士の争いが多くなったり、どれが自分の子供なのかが分からない(別の本でも読みましたが、群れみんなで子育てとはいっても、やっぱり子供がピンチにあったときに確実に自分の子供だという確信があったほうがオスが助ける可能性が高いということです)。また、オスにとってはあっちこっちに子供がいるので、子育てはメスの仕事になる。
一夫一婦:
欠点⇒子供の数は減る。
利点⇒オスは確実に自分の子供とわかるので、子供を守ろうとする。メスと子供にとっても確実にオスに食料を運んでもらえる。
なお、ゴシップニュースで「妻が生んだ子供がDNA鑑定の結果夫の子供ではなかった〜」などというものがあるが、実際のところ妻が夫以外との子供を生む確率はせいぜい5%程度らしいですよ。
【では死ぬって何?】
死ぬの定義を「細胞の中で起きている化学反応などの活動が止まり、分解されて土屋空気に還る」とする。
細菌が分裂することは「死ぬ」とは言い難い。このばあい細菌は40億年程度生きていることになる!
…さて、ではなぜ寿命があるのか。この地球には住める個体の限りがあり、死なないと次に生まれるものがいる場所がない。
そして生息地の環境はその都度その都度変化している。すると、環境に合った進化を進めないと子孫が生き続けることができない。環境に合おうとするのは生存競争であり、それは自分の命を大事にすること。
環境に合わなかった個体は死ぬが、死ななければ自然淘汰が働かずに次の生命は生まれないんだよ。という基本に返ったところでこの本もおしまい。続きを読む投稿日:2020.11.06
様々な事例で進化について詳説。
各テーマの選択は統一感薄いが…
各テーマ(過去の間違った考え、一般に信じられている誤り)を正すような書き方だが、あくまで著者の仮説。そこだけは納得して読み進めたい。
…
しかし考え方が総じて興味深い。
読了180分続きを読む投稿日:2023.11.15
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