「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史
辻田真佐憲(著)
/講談社現代新書
作品情報
神武天皇、教育勅語、万世一系、八紘一宇……。
右派も左派も誤解している「戦前日本」の本当の姿とは?
神話に支えられた「大日本帝国」の真実。
「国威発揚」の物語を検証するーー!
「筆者はここで、同じく昨年、凶弾に斃れた安倍元首相が唱えた「日本を取り戻す」「美しい国」というスローガンを思い出さずにはおれない。それはときに戦前回帰的だといわれた。
だが、本当にそうだっただろうか。靖国神社に参拝しながら、東京五輪、大阪万博を招聘し、「三丁目の夕日」を理想として語るーー。そこで取り戻すべきだとされた「美しい国」とは、戦前そのものではなく、都合のよさそうな部分を適当に寄せ集めた、戦前・戦 後の奇妙なキメラではなかったか。
今日よく言われる戦前もこれとよく似ている。その実態は、しばしば左派が政権を批判 するために日本の暗黒部分をことさらにかき集めて煮詰めたものだった。
つまり「美しい国」と「戦前」は、ともに実際の戦前とはかけ離れた虚像であり、現在の右派・左派にとって使い勝手のいい願望の産物だったのである。(中略)
このような状態を脱するためには、だれかれ問わず、戦前をまずしっかり知らなければならない。」 (「はじめに」より)
【本書の構成】
第1章 古代日本を取り戻す 明治維新と神武天皇リバイバル
第2章 特別な国であるべし 憲法と道徳は天照大神より
第3章 三韓征伐を再現せよ 神裔たちの日清・日露戦争
第4章 天皇は万国の大君である 天地開闢から世界征服へ
第5章 米英を撃ちてし止まむ 八紘一宇と大東亜戦争
第6章 教養としての戦前 新しい国民的物語のために
【本書の主な内容】
・「新しい戦前」と「美しい国」の共通点
・「神武創業」に新政府がこだわった意図
・「建国記念の日」が生まれた背景
・君が代はなぜ普及したのか?
・明治維新は「中世キャンセル史観」
・神武天皇に似ている「あの人物」
・フェティシズムとしての教育勅語
・女子天皇・女系天皇を排した井上毅
・忘れられる神功皇后と理想の女性像
・神社参拝は軍国主義的なのか?
・「東京」の名付け親・佐藤信淵
・天地開闢とイザナミ・イザナギ神話
・「弱小国家コンプレックス」が生んだ妄想
・戦意高揚に貢献した北原白秋と山田耕筰
・実証なき物語は妄想、物語なき実証は空虚 ……ほか
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商品情報
- シリーズ
- 「戦前」の正体 愛国と神話の日本近現代史
- 著者
- 辻田真佐憲
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2023.05.18
- Reader Store発売日
- 2023.05.17
- ファイルサイズ
- 19.2MB
- ページ数
- 304ページ
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この作品のレビュー
平均 4.2 (14件のレビュー)
-
明治維新から太平洋戦争敗戦まで77年。戦後から2022年まで77年。戦前と戦後が並び、現代史が近代史を凌駕しようとしている、われわれはいま新しい時代のとば口に立っているのだ、と始まる。ああ、そうなのか…。なにかというと、「戦前は・・」という言葉が躍り、よかった、悪かった、人それぞれの思い込みで「戦前」を語っている。そこで、一体「戦前」とはどういう実態だったのか、それを説く。
明治新政府は自身を正当化し西洋近代社会に追いつくため、それ以前の中世から近世武家社会を否定するところから始まった。それには天皇を押しいだき、「日本神話」から連なる、という、天皇の系譜を利用したという。
しかし政府だけが神話をもとに旗振りをしたわけではなく、それに乗り儲けようとするジャーナリズムや民衆の力もあったのだ、とする。たとえば、軍歌などは、「プロパガンダをしたい」当局と、「時局で儲けたい」企業と、「戦争の熱狂を楽しみたい」消費者、三者が絡み合ったという。
やがて国体論というネタがベタになり、政府をも拘束するようになった、この「神話国家の興亡」こそ、戦前の正体だった、というのが氏の見立てである。その構成要素の教育勅語や軍事儀礼をバラバラにみて、「日本スゴイ」、「戦前回帰だ」というのは生産的な議論ではない。
戦前の物語にあえて点数をつければ65点だという。100かゼロの視点では、マイナス要素が出ると瓦解する。
日本神話を「日本書紀」「古事記」からわかりやすく説明してくれたのもよかった。ほとんど分かっていなかったのがわかった。
メモ
宗教の否定は醜悪な疑似宗教を生み出す(フランス革命における最高存在の祭典や、ソ連におけるレーニンの遺体保存やスターリンの個人崇拝)ように、物語の否定は戦前的な物語の劣化コピーを生成する。物語は排除ではなく、上書きされるべき。
また教育勅語は「忠孝の四角形」が根底にあり、それを踏まえるべきという。歴代の臣民(国民)は、歴代の天皇に忠を尽くしてきた、当代の臣民も当代の天皇に忠を尽くしている。またこれまでの臣民は自らの祖先に孝を尽くしている。また当代の天皇も過去の天皇に孝を尽くしている。
この忠孝の四角形は日本にしか永続しておらず、他の国は君主が倒され臣民が新しい君主になっていて、忠が崩壊している。日本は忠孝が保たれているので、万世一系が保たれている、という世界観を教育勅語は「国体の精華」と呼んでいる。
2023.5.20第1刷 図書館続きを読む投稿日:2023.08.02
日本書紀や古事記に出てくる日本神話が、戦前の拡大路線、対外戦争の中でいかにプロパガンダとして利用されてきたかを分かりやすく辿る一冊。神武天皇の八紘一宇に始まり、イザナギやアマテラスの時代まで遡り、神話…の発祥地としての宮崎県と鹿児島県の争いや、軍人に人気を持った竹内巨麿の「竹内文献」など、知らなかった日本の歴史と神話の関係性を網羅できる。特に、神武景気や岩戸景気、いざなぎ景気といった言葉に表れるように、戦後の日本でも神話の教養が人口に膾炙していたことが印象的である。それが、日本という国が世界に晒された時の弱小コンプレックスなのか、日本という国の雰囲気をよく表していることなのか、考えてみたい。続きを読む
投稿日:2023.10.27
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