ウクライナ「情報」戦争 ロシア発のシグナルはなぜ見落とされるのか
佐藤優(著)
/徳間書店
作品情報
ロシアの懐に最も食い込み、日露関係を最も近接させた最強外交官、日本で最もロシアのロジックに通じた佐藤優氏が斬る、ウクライナ戦争のインテリジェンス。2022年2月24日のロシアによるウクライナ侵攻から、実態をつぶさにウォッチしてきた佐藤氏。双方が自国有利とする情報戦争を展開する中、日本に流れる報道には一定のバイアスがかかってしまっている。情報分析のプロはそれらの報道を自身の独自情報から緻密に読み解き、実態把握を試みた。プーチン大統領にもかつて直接会い、ロシアの政治中枢クレムリンの高官らとも太いパイプを持つ唯一無二のロシア通、全国民が待望した最新刊!
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この作品のレビュー
平均 5.0 (2件のレビュー)
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強い興味を覚えて入手し、素早く読了に至った一冊だ。出逢って善かったと思う一冊となった。
ロシア側で「特定軍事行動」というような呼び方をしているウクライナへの“侵攻”が惹起して以来、著者は色々と情報収集…、研究を続けていて、随時色々な原稿を発表しているという。本書はそれらを集めて、推敲して加筆修正もしながら纏めた一冊であるという。
或る程度の「長期化」が免れ悪いと見受けられる“侵攻”関連の情勢であるが、惹起して以来、既に半年を経た。他方、この事態は8年も前の状況を引き摺ってもいる。またこの半年の間に様々なことが方々で論じられている訳だが、日本国内では必ずしも取り上げられていないと見受けられる事柄も多い。そして世界の様々な国々が「外交」ということで、或いは事態に巻き込まれていて、日本も例に漏れない。故に考えるべきことが色々と在る筈だ。
そういうような問題意識、加えて「ロシアと名が付けば何でもダメ」というような、些か「危険?」という空気感も在るかもしれないような中、「一区切りの纏め」を世に問いたいということが著者の思いであるようだ。本書を通読して、問題意識等に共感も覚えた。
また、軍事紛争という状況下では「相手陣営がこんなに酷いことを!!」という「宣伝合戦」のようなことは間違いなく起こる。「本当は如何だったか?」というようなことは、後から調査して検証するのでもなければ判り悪い。それを踏まえて、本書ではその種の“虐殺”というような事案には敢えて踏み込んでいない。
本書では、ロシアのテレビ放送に見受けられる「識者の対論」というような内容の中で見受けられた、「特定軍事行動」というような呼び方をしている事態を巡る論が多く紹介されている。何れも、変な「煽り」というような内容では断じて無い。米国等も関わっている中での、事態の「落としどころ」の展望や、「近年の米国?」というような観方、ロシアの主張の内容を補うような話題という中身であると思う。
こうした内容の後、2月から8月までの半年に関して、月毎に主な出来事を挙げ、その中から幾つかを論じる章が在る。更に次章では2014年のクリミアの事態を振り返る内容が入る。最終章は日ロ外交を論じている。
何らかの行動や声明やその他が在って、それを受け止めるということが在り、受け止めた上での何らかの行動や声明やその他が生じる。軍事行動のようなモノが在ろうと無かろうと、国と国との関係にはそういう要素が在る。著者はそういうのを「シグナル」と称している。
ロシアは日本に対して「非友好国」と称し、殊更に強く当たっているようにも見受けられる。これに関しては、“制裁”の中で「大統領を含めた要人の個人資産凍結」と言い出したことに起因するのではないかという話題が本書に在る。「実質的影響が然程無い」ということを挙げたのかもしれないが、「日本国内等に在りもしない個人資産を云々するのは言いがかりも甚だしい」と激怒して嫌悪感を露にし始めたと見受けられるのだという。
“虐殺”と宣伝されるような忌むべき事態が起こっている軍事紛争である。一日も早く落ち着いて欲しい。徒に損なわれて構わない生命は無い筈だ。遠い国に在って、事態を冷静に見詰め続けなければなるまい。長期化するに連れて事態の「落としどころ」の展望は開け悪いようになっているかもしれない。だからこそ、広く様々な情報に触れて考えることを続けなければならない訳だ。
本書は間違いなく参考になると思った。御薦めしたい。続きを読む投稿日:2022.10.11
スゴイ本だ。佐藤氏の分析はいつもながら勉強になるが、同時進行のウクライナ戦争を確りと理解できる本。テレビや新聞や中途半端な情報番組でウクライナ戦争を理解しているつもりでロシアを一方的に非難する方々に是…非読んでもらいたい。特に3章のクリミア併合は大変勉強になった。これを読めばロシアが言ってることが噓八百ばかりとは思わなくなるし、ウクライナ:善、ロシア:悪なんていう一方的な近視眼に陥ることもなくなる。続きを読む
投稿日:2022.10.26
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