ブルシット・ジョブの謎 クソどうでもいい仕事はなぜ増えるか
酒井隆史(著)
/講談社現代新書
作品情報
誰も見ない書類をひたすら作成するだけの仕事、無意味な仕事を増やすだけの上司、偉い人の虚栄心を満たすためだけの秘書、嘘を嘘で塗り固めた広告、価値がないとわかっている商品を広める広報……私たちはなぜ「クソどうでもいい仕事(ブルシット・ジョブ)」に苦しみ続けるのか? なぜブルシット・ジョブは増え続けるのか? なぜブルシット・ジョブは高給で、社会的価値の高い仕事ほど報酬が低いのか? 世界的ベストセラー、デヴィッド・グレーバー『ブルシット・ジョブ クソどうでもいい仕事の理論』の訳者による本格講義!
【目次】
第0講 「クソどうでもいい仕事」の発見
第1講 ブルシット・ジョブの宇宙
第2講 ブルシット・ジョブってなんだろう?
第3講 ブルシット・ジョブはなぜ苦しいのか?
第4講 資本主義と「仕事のための仕事」
第5講 ネオリベラリズムと官僚制
第6講 ブルシット・ジョブが増殖する構造
第7講 「エッセンシャル・ワークの逆説」について
第8講 ブルシット・ジョブとベーシックインカム
おわりに わたしたちには「想像力」がある
もっとみる
商品情報
- 著者
- 酒井隆史
- 出版社
- 講談社
- 掲載誌・レーベル
- 講談社現代新書
- 書籍発売日
- 2021.12.15
- Reader Store発売日
- 2021.12.15
- ファイルサイズ
- 3.6MB
- ページ数
- 256ページ
以下の製品には非対応です
この作品のレビュー
平均 3.6 (48件のレビュー)
-
【感想】
本家『ブルシット・ジョブ』は面白くていい本だったが、非常に分厚く、内容が複雑で、かつ高い。身近な要素(ブルシット・ジョブの類型など)は楽しく感じられるのだが、書の後半(ネオリベラリズムや封建…制など)に進むにつれ、難しくなって止めてしまった、という人もいるだろう。
本書は、訳者の酒井氏によって書かれたブルシット・ジョブ解説本である。酒井氏自身、「本家は議論があっちこっちに戻り複雑である」のように述べており、やはり訳者としても「よりシンプルにまとめられたら」という思いがあったのかもしれない。重要項目の概要を作りつつ、要所要所でポイントを抑えながらわかりやすく解説している。
しかし、本書でもまだ難しい部分がある。そこで、「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載された、訳者の酒井氏とほぼ日の田中氏との対談、『ブルシット・ジョブについて学ぼう』を読んでみるのがいいと思う。というよりも、このコラムがあまりにもよく出来すぎており、未読者にはもうこちらでいいんじゃないかと思えてしまう。この記事を読んでブルシット・ジョブの概要を把握し、深く知りたくなったら本書かブルシット・ジョブ本家、という使い方がベターじゃないだろうか。
●ほぼ日刊イトイ新聞
https://www.1101.com/n/s/bullshit_job
●本家 ブルシット・ジョブのレビュー
https://booklog.jp/users/suibyoalche/archives/1/4000614134
―――――――――――――――――――――――――
【まとめ】
1 ブルシット・ジョブ(BSJ)とはなにか
BSJとは、被雇用者本人でさえ、その存在を正当化しがたいほど、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえある有償の雇用の形態である。とはいえ、その雇用条件の一環として、被雇用者は、ブルシットではないと取り繕ろわなければならない(自分の仕事を重要そうに、忙しそうに見せなければならない)と感じている仕事である。
ブルシットとウソは違う。ウソをつく人は、じぶんが真実や事実をごまかしているということがわかってやっている。ところが、ブルシットする人は、そもそも真実や事実なんてどうでもよく、その場をうまく丸め込む、「論破」したとみせかける、じぶんをなんとなくエラくみせる、知的にみせる、そういうことのほうが大切な人である。
・BSJの種類
①取り巻き(フランキー)
誰かを偉そうに見せたり偉そうな気分を味合わせるだけの仕事。ドアマン、不必要な場所の受付嬢など。
②脅し屋(ヴーン)
その仕事が脅迫的な要素をもっている人間たち、だが決定的であるのは、その存在を他者の雇用に全面的に依存している人間たち。要するに、人をなにか脅し立てるような要素をもった雇われ人。軍隊(全ての国が他国を脅しているせいで、自国も脅し要員を雇わなければならないため)、企業弁護士、商品の効能を誇張して消費者に「必要だ」と錯覚させる広告会社。
③尻ぬぐい(ダクト・テーパー)
組織の中に欠陥が存在しているためにその仕事が存在しているにすぎない被雇用者。「自動化されていない」「不適任者が組織をかき乱す」といった「根本から是正すればよい問題」を解決するのではなく、損害に対応するためだけに従業員を雇うような仕事。
④書類穴埋め人(ボックス・ティッカー)
ある組織が実際にはやっていないことをやっていると主張できるようにすることが、主要ないし唯一の存在理由であるような被雇用者。やっているふりのペーパーワーク、意味のないデータ収集業務、見てくれだけいい感じのパワポ作成業務。
⑤タスクマスター
他者のなすべき仕事をでっち上げてむりやり作り出すこと。あらゆる過程に管理チェックの契機を導入していく経営管理主義イデオロギー、お飾り部署や架空のポスト。
2 BSJはなぜ苦しいのか
BSJは、何もしなくてもお金がもらえる美味しい仕事だ。しかし、BSJに実際に就く人たちは苦しんでいる。
それは、BSJが「たんに無目的であるだけではなくまた虚偽」だからである。そして、無目的であることがはっきりと明示されておらず、「あいまいな指示のもと忙しく見せなければならない」「どういうふうに仕事(のふり)をすべきかを、それとなく読み取らなければならない」という空気に絶えず晒されているため、それが人の精神を疲弊させ、摩耗させ、ときに病に追いやっている。人間は、自らが無価値という事実に耐えることができない。世界に影響を与えることができないことは、自己の危機、自己の存立の危機なのだ。
――ただ働くことだけのために働くふりを強いられるのは屈辱である。なぜなら、その要求は、自己目的化した純粋な権力行使であると感じられるからである。かりに、演技の遊びが人間の自由のもっとも純粋な表現だとすれば、他者から課された演技的仕事は、自由の欠如のもっとも純粋な表現である。
3 なぜやらなくてもいい仕事をでっちあげるのか
どうして人は、実質的にやることがないのに、仕事をでっち上げてでもさせようとするのか。何もやることがないなら休めばいいのではないか。
しかし、われわれの社会は、必要なときにガーッとやってそうじゃないときにはゆるくしているといった労働形態を許さない。現代社会には、仕事の性格はおかまいなしに、時間で抽象的に区切る「時間指向」の強制がはたらいている。時間とその間の労働力は雇用者によって「買われたもの」であり、勤務中は好き勝手に使うことはできない。
4 エッセンシャル・ワークの逆説
BSJとは真逆の、社会に寄与する度合いの高いエッセンシャル・ワーカーたちの労働環境は劣悪であり、賃金も低い。他者ないし社会への貢献度が高ければ高いほど報酬が低く、貢献度が低ければ低いほど報酬が高くなる傾向にある。
かたや、社会に寄与などなにもしていないけども高給取りである人たちがいる。そして、それを自嘲気味にみずから了解している。かたや、他者に寄与しているけれども労働条件が劣悪であり、それに憤っている人たちがいる。
グレーバーはエッセンシャル・ワークに代表される「シット・ジョブ(単にクソな仕事)」とブルシット・ジョブの関係を、以下のように定式化している。「その労働が他者の助けとなり、他者に便益を提供するものであればあるほど、そしてつくりだされる社会的価値が高ければ高いほど、おそらくそれに与えられる報酬はより少なくなる」
ではどうして、そのような傾向が現れ、かつわたしたちはそれを問題とあまり思わないのか?
それは、次のような価値意識があるからだ。
(1)労働はそれ自体がモラル上の価値であるという感性がある
(2)それが有用な労働をしている人間への反感の下地となっている
(3)ここから、他者に寄与する仕事であればあるほど、対価はより少なくなるという原則が強化される
(4)さらに、それこそがあるべき姿であるという倒錯した意識がある
要は、世界に価値を与える仕事は崇高でやりがいがあるため、「そんな仕事をしているのに、物質的な厚遇を求めようなんておこがましい」という発想に至っているわけだ。
また、「なんらかの無からの創造にかかわるものこそが労働であり、ケアにかかわる仕事は本来、それ自体が報いであり(やりがいという報いがえられる)、それを支えるものであって本来無償のものである」という認識も、エッセンシャル・ワークの逆転現象を生み出す要因となっている。続きを読む投稿日:2023.03.29
ブルシット・ジョブそのものを読んでないのだが(価格で二の足を踏んでいた)、その概要がとてもわかり易く説明されていた。
全く関係ないのだが、この概念の理解と共感にとても役に立った概念が『科学的に存在しう…るクリーチャー娘の観察日記』の「人間病」と称された概念で、なんというか、学びというのはリレーショナルなんだなと改めて思った。
過剰な自律であり、分不相応な自己抑制であり、良く在ろうとするご気分と、良く在るべきだという社会的な同調圧が、ブルシット・ジョブを生んでいる。
そこで語られる「良さ」が本当に「良さ」なのか、誰も議論されず、誰からも疑われぬままに。
続きを読む投稿日:2024.04.13
新刊自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
※新刊自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新号を含め、既刊の号は含まれません。ご契約はページ右の「新刊自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される「増刊号」「特別号」等も、自動購入の対象に含まれますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると新刊自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約・新刊自動購入設定」より、随時解約可能です続巻自動購入は、今後配信となるシリーズの最新刊を毎号自動的にお届けするサービスです。
- ・発売と同時にすぐにお手元のデバイスに追加!
- ・買い逃すことがありません!
- ・いつでも解約ができるから安心!
- ・優待ポイントが2倍になるおトクなキャンペーン実施中!
※続巻自動購入の対象となるコンテンツは、次回配信分からとなります。現在発売中の最新巻を含め、既刊の巻は含まれません。ご契約はページ右の「続巻自動購入を始める」からお手続きください。
※ご契約をいただくと、このシリーズのコンテンツを配信する都度、毎回決済となります。配信されるコンテンツによって発売日・金額が異なる場合があります。ご契約中は自動的に販売を継続します。
不定期に刊行される特別号等も自動購入の対象に含まれる場合がありますのでご了承ください。(シリーズ名が異なるものは対象となりません)
※再開の見込みの立たない休刊、廃刊、出版社やReader Store側の事由で契約を終了させていただくことがあります。
※My Sony IDを削除すると続巻自動購入は解約となります。
お支払方法:クレジットカードのみ
解約方法:マイページの「予約自動購入設定」より、随時解約可能ですReader Store BOOK GIFT とは
ご家族、ご友人などに電子書籍をギフトとしてプレゼントすることができる機能です。
贈りたい本を「プレゼントする」のボタンからご購入頂き、お受け取り用のリンクをメールなどでお知らせするだけでOK!
ぜひお誕生日のお祝いや、おすすめしたい本をプレゼントしてみてください。※ギフトのお受け取り期限はご購入後6ヶ月となります。お受け取りされないまま期限を過ぎた場合、お受け取りや払い戻しはできませんのでご注意ください。
※お受け取りになる方がすでに同じ本をお持ちの場合でも払い戻しはできません。
※ギフトのお受け取りにはサインアップ(無料)が必要です。
※ご自身の本棚の本を贈ることはできません。
※ポイント、クーポンの利用はできません。クーポンコード登録
Reader Storeをご利用のお客様へ
ご利用ありがとうございます!
エラー(エラーコード: )
ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。