日本企業のポテンシャルを解き放つ――DX×3P経営
福原正大(著)
/英治出版
作品情報
なぜあの企業はDX推進に成功しているのか?
世界から押し寄せるデジタル勢の脅威に抗え――。
Googleよりも成長し、1500名のDX人材育成を目指すダイキン工業
全社で人材データの見える化と育成に取り組むライオンや日本郵便
HRテック起業家×ビジネススクール特任教授×政策アドバイザー
DX人材・組織づくりのフロントランナーが示す全社変革のロードマップ
【DXで事業戦略をたてる前に、考えるべきこととは?】
○DX(デジタル・トランスフォーメーション)の重要性は日々語られていますが、いま日本企業で課題となっているのが「DXに強い人と組織づくり」です。とくに伝統的な事業分野では、これまでの人材像・組織像とはまったく異なるあり方が必要にもかかわらず、十分な知見が蓄積されていません。
○著者は、日本・海外のビジネスパーソン60万人以上の人材データから見ても、日本の伝統企業に働く人材の潜在力は、国内外の人材評価データからも欧米トップ企業と比べても間違いなく大きいと主張します。この潜在力を活かせないのは、組織のヴィジョンと仕組み、人材育成の方向性、思考のバイアスの問題があるからなのです。
○これからはデータが前提となるソサエティ5.0に突入し、市場が大きく変わるため、「ソサエティ5.0時代に、自社がどんなヴィジョンと哲学のもとにイノベーションを起こすのか、どんなデータのプラットフォームになるのか」をアップデートし、それに則った人材・組織づくりが求められます。
○本書では、イノベーション企業に必要な要素として語られる3P(Philosophy・People・Process)のフレームワークにアップデートを加えながら、DX組織に向けたヴィジョンと哲学、人材戦略、プロセスという全社的な改革の道筋が描かれます。
世界から押し寄せるデジタル勢の脅威に抗え――。
Googleよりも成長し、1500名のDX人材育成を目指すダイキン工業
全社で人材データの見える化と育成に取り組むライオンや日本郵便
HRテック起業家×ビジネススクール特任教授×政策アドバイザー
DX人材・組織づくりのフロントランナーが示す全社変革のロードマップ
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この作品のレビュー
平均 4.0 (3件のレビュー)
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DXの本来のあり方と、その実践例を知ることができる本です。
重要性が認識されつつあるDXですが、まだ、何がDXなのか認識しきれていなかったり、実際にどうすればいいかわからないという方は多いと感じます。…
この本では、技術的な話より、そもそものDXの重要性と、それを実践した実際の事例が多く紹介されています。
DXに興味はあるが、何かとっつきにくいと感じているビジネスパーソン、特に経営者の方にとって、理解が進む1冊ではないでしょうか。
【特に覚えておきたいと感じた内容の覚え書き】
「問題解決も必要だが、『自社に何が足りないか』というマイナス思考だけでなく、『自社にどんなポテンシャルが隠れているか、それを解き放てばどんな未来が描けるか』というプラス思考で、ヴィジョン達成に向けて行動に移してみる。顧客も、社員も、社会の誰もがワクワクする未来を求めている。」
「日本企業の問題点は、①DXの本質について経営トップで議論されていない、②そもそものヴィジョンをアップデートしていない、③新しいヴィジョンとDXにふさわしい人と組織をつくろうとしていない、という3つに集約される。」
「本当に意味あるデータは、会社のヴィジョンや戦略のために存在している。その意味では、データは『つくりに行くもの』で、これがDXの基本的な発想。データは目的を実証するため、あるいは目的自体のために生成されるもの。」
→他にも、DXの本質とは何かということや、実際の事例なども紹介されていて、大事なことは多いと感じさせられた1冊でした。最も重要なのは、「DXができれば、もっといいことがある」という前向きな考え方だと思います。まずはできるところから。徐々に、できることを増やす。そのために、経営者が結果だけではなくプロセスを重視できる環境を作る。DXのために必要なデータは何で、足りなければ集める。これが私が見て最も大事だと思えた点です。
【もう少し詳しい内容の覚え書き】
・「テクノロジーを活用して、どのように戦略を立てて事業や業務をアップデートするか」というこれまでのDXを巡る議論自体は間違いではないが、「そもそも企業はどこへ向かい、どんなDXを実現したいか」「それを担うべき人材は」「DXへの抵抗感にどう対処すべきか」「組織はどう変わるべきか」という本質的な議論がないまま進んでいることが多い。そのため、「どこから手を付ければいいかわからない」「うまく進んでいない気がする」という悩みも多いのでは。
・全社でDXを進めている会社に共通するのが、どんな未来が来るのか、自社はどこに向かいたいのかという「ヴィジョンと哲学」に真剣に向き合っている。不確実性が高まる中、大きな変化を見つめ、自社のあり方を問い直すことの重要性は不変。そうした企業は、本気で人と組織の変革にも取り組む姿勢を見せている。
・テクノロジーやDXに否定的な考えや抵抗感である「DXバイアス」を持つ人も、その後のフォローアップによってバイアスはかなり改善される。「抵抗者」が、それで「DX推進者」になる事例も出てきている。
・リアルな「場」の持つ強みと、新たに生成されるデータをもとにデジタルが引き起こす大きなうねりが組み合わさった時にソサエティ5.0時代の大きなイノベーションが生まれていくはず。人と人が触れ合う場のみが持ちうる、お互いの理解を深め合い新しい人間関係を築く力は強いが、失われたものが完全に元通りになることはありえない。
・問題解決も必要だが、「自社に何が足りないか」というマイナス思考だけでなく、「自社にどんなポテンシャルが隠れているか、それを解き放てばどんな未来が描けるか」というプラス思考で、ヴィジョン達成に向けて行動に移してみる。顧客も、社員も、社会の誰もがワクワクする未来を求めている。
○DX時代に問われているもの
・組織全体のDXに取り組む。小さなネジ商社だったボサードは、供給者視点から顧客視点に切り替え、新たな「ヴィジョン」を見出し、エンジニアやデータサイエンティストの採用を推し進め、社内の人材を変えていき、部品とそれに関連するデータが集結するぽラットフォーマーへとビジネスモデルを変えた。10年後、20年後を考え、どの会社が伸びるかを考え、そのパートナーになることを考えた結果、テスラの目に留まり、部品の管理業務全般を請け負い、急激に成長した。
・DXに成功している伝統企業には、「デジタル改革をどう進めていくか」ではなく、「新しいヴィジョンに向かって、DXに強い人と組織をどうつくるか」を意識しているという共通点がある。
・日本企業の問題点は、①DXの本質について経営トップで議論されていない、②そもそものヴィジョンをアップデートしていない、③新しいヴィジョンとDXにふさわしい人と組織をつくろうとしていない、という3つに集約される。
○DXの本質と日本企業の課題
・あらゆるものがデータ化されるソサエティ5.0の時代が到来しようとしている。デジタル企業がリアル産業に入ってくるだけでなく、「リアルの前提がデジタル」になる。顧客に関するデジタルデータを持ち、デジタル空間で成長した企業が、製造業などのリアル企業を標的にし、飲み込む可能性がある。
・DXとは、データとデジタル技術を前提とした組織と事業によって、顧客価値を大きく向上させるイノベーション。DX=イノベーションという点が重要。今の業界秩序を変えるような破壊的な取組であるべき。新産業を創造することが、DXの本質。すべての企業ができるわけではない。ただ、今までのやり方だけでは長続きできない可能性は認識しておくべき。
・本当に意味あるデータは、会社のヴィジョンや戦略のために存在している。その意味では、データは「つくりに行くもの」で、これがDXの基本的な発想。データは目的を実証するため、あるいは目的自体のために生成されるもの。
・デジタル技術に対して、デジタル技術(AI)が答えを導き出してくれる、取り組むには技術的な専門知識を押さえておくべきという2つの誤解が多い。デジタル技術は「どのようなデータを生成すべきか」は導き出せないので、会社のヴィジョンや戦略に沿って設計されるべき。身につけるべきものは、技術の使い方を考える力。ビジネスにAIを活用する際に問われるのは、専門技術を知ることではなく、「データとAIのセット」を見つける能力。AIの活用は、実はそこまで難しくはない。自社の組織や人材がデジタル技術をどう使うか、という最初の設計ができるようになるための教育にお金をかけるべき。
・日本企業の課題は、リスクを積極的にとれる40歳前後の層に力を与えていないこと、意思決定者がデータを使おうとしないこと、科学的なデータに基づく人材配置を行っていないこと、リスクの高い提案をつぶす組織の論理が働くこと、などと思われる。
○ヴィジョンと哲学を問い直す
・ヴィジョンを問い直す際に、STEEPL(社会、技術、経済、環境、政策、法律)分析、ESG、ニューノーマル、SF小説づくり(具体的な未来をありありと描くための方法を学ぶ)、データドリブン(「どんなデータを取るべきか」を考える)、データの倫理性、プラットフォーム(構築の可能性)、といったツールや考え方が役立つ。
・日本企業が「攻めの経営」の重要性がわかっていてもできないのは、大きな変化を好まないから。両利きの経営を実現させるには、経営トップの頑張りはもちろん必要だが、それだけでは限界がある。カルチャーを変え、人と組織を変えなければならない。「深化」と「探索」の部門で同じKPIを使わない、カルチャーを区別する、ということに注意すべき。
・構築したヴィジョンと哲学に魂を入れるのは、トップの最優先の仕事。社員は、残念だが、それらを自分ごとと捉えていない。「トップがメッセージを十分に発信していない」のが理由として大きい。時代に合わず共感できないヴィジョンを伝えている可能性もあるので、その場合はつくり直す。
○人材戦略を問い直す
・ソサエティ5.0時代に、DXを進めていく上で求められる代表的なコンピテンシーとして、創造性、課題設定力、共感・傾聴力、個人的実行力、外向性、ヴィジョン、地球市民力、といったものが挙げられる。
・コンピテンシーの育成は、①現状のコンピテンシーを把握し、理想とのギャップを見出す(360度評価)、②上司や同僚と、現状の評価結果と伸ばしたいコンピテンシーを共有した上で、周囲の助けを借りながら開発目標をつくる、③サポート環境で小さい失敗・成功を繰り返す、④再度360度評価で可視化し、成長度合いを確かめつつ進めていく、というステップを踏むとよい。
・正面切って「DX」を否定する人はいないが、一人ひとりの心の中のイノベーションに対する「抵抗感」が、進めることを難しくする。データ活用姿勢、リスク選好、深化型/探索型、デジタルへの感情を「DXバイアス」として整理し、免疫マップで真の目標と強力な固定観念を整理すると、克服のヒントになる。
○プロセスを問い直す
・ヴィジョンからの仮設設定→データ取得・蓄積→顧客に関する新しい洞察の獲得→新たな価値の定義→価値の提供、という探索型創造プロセスをつくる。
・プロセスを回すためには、仕組みを整えるだけでなく、失敗への恐れを乗り越えるための取組も必要。「心理的安全性」が創造性を育む。隠れた「弱さ」を見せあえる組織は強い。人によっては、不十分なコンピテンシーを、リーダーとして部下に知られたくないと思うこともあるだろうが、それをしっかり伝えることで、「サポートして欲しい」というメッセージになる。続きを読む投稿日:2022.03.28
日本企業のポテンシャルを解き放つDX×3P経営。
形だけのDXではなくて、そもそも何故DXが必要なのか、そもそもから考えよう、という示唆に富んだ書籍。あいも変わらず素敵な本を世に送り出す英治出版さん、…大好きすぎる!
DXは、データやITの活用を前提としたもの、
そのためには、企業はまずそのためにすべきなのは、ヴィジョンと哲学(Philosophy)、人材戦略(People)、そして、それを実行するためのプロセス(Process)が必要。
組織の中には、二つのタイプの人材。
ひとつは、既存事業の深掘を行う深化型、新しい事業を行う探索型。両者は同じ組織には馴染まないが、同じ母体にはいるべき。なぜなら、相互に影響し合うから。一方で、深化型の組織評価で探索型の評価をすべきではない。企業には両利きの経営が求められる。
価値には、機能、感情、社会が求められる。
ビジネスモデルを考える際には、しっかりと検討、そして、プロトタイプは、必要最低限の機能を満たすMVP Minimum Viable Productで行い、ときには方向性を転換する必要がある。だが、軸を変えてはいけない。軸とはヴィジョン仮説。その結果、MAP Minimun Awesome Productが出来上がる。
探索型創造プロセス
ヴィジョン仮説→データ取得&蓄積→インサイト獲得→新たな価値の定義→新たな価値の提供
ブルーオーシャン戦略
新しい価値を創出するために、
減らす 業界標準と比べて思い切り減らすベき要素は何か
付け加える 業界でこれまで提供されてない、今後付け加えるべき要素は何か
取り除く 業界常識として製品やサービスに備わっている要素のうち、取り除くべき要素は、何か
増やす 業界標準と比べて大胆に増やすべき要素は何か
DXに必要なコンピテンシーとは、
課題設定力、創造性、個人的実行力、ヴィジョン、共感傾聴力、外交性、地球市民力。
免疫マップで成長を促す→改善目標、阻害行動、裏の目標、強力な固定観念
続きを読む投稿日:2022.02.22
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